プロローグ3
長らくお待たせしました
因みに七歳になるまでの一年間、父さんの言いつけを破り柵の外に出て、獣…いや、魔獣と呼ばれるものに襲われてもう柵の外には出ないようにしようと思い、今日も今日とて妹の声援を受けて柵の中で鍛錬に励んでいる。
そんな俺にもようやく外に出る機会が巡ってきたのである!
そう!俺は明日から妹のアリシアと一緒に一ヶ月ほど村に行くことになったのだ!
俺は、今朝その話を両親に聞いてからワクワクが止まらなくて今日はいつも以上に鍛錬に励んだ。
鍛錬の方だが一年前に魔獣に襲われてから加えたものがある。
筋トレと走り込みに加えて、父さんの部屋にあった武術の本を読んで、体捌きや身体の軸を鍛えている。
最初は上手く身体が動かずに地面に頭から突っ込むように派手に転んだりしたけど二回目以降は、あまりにもスムーズに身体が動いて俺はもちろん隣で一緒に鍛錬していた妹も驚いていた。
妹が手放しで賞賛している隣で俺は、これもエルドシアさんからもらったチートの一つなのかなんだろうな、全くチート様々だな、とチートをくれた人にではなく、チートに感謝するとゆう畑違いな事を考えていた。
因みに妹だが、最近一緒に鍛錬をしている。
どうも俺が魔獣に襲われたとき自分はオロオロしているだけで何も出来なかったのが心残りらしい。
別にそんなことは気にしなくていいと言ったら
『お兄様は気にしなくても私が気にするんです!』って怒られた。
でもそんなことを言ってくれる妹が居てくれるなんてて、お兄ちゃんは幸せものです。
その後、妹の鍛錬が終わるまで待って、家の中に入りシャワーを浴びて、明日に備えてこれ以上の鍛錬はしないようにと、妹と自分にも言い聞かせて自室に戻りダラダラしてる時にふと思った。
この家便利すぎじゃね?
こんないかにも中世以前の建物で、しかも自分たちの家の周りには森しかないのだから普通は井戸とか川から水を汲んできたり、その汲んできた水をお湯に変えたりするのにも一苦労するのが普通なんじゃないのか?
因みに家の庭に井戸はあるのだが全く使っていない。
しっかしこの家ときたら蛇口をひねれば冷たい水も出て、温かいお湯も出て、終いにはシャワーにお風呂まであったりする。
これならクーラーとかの家電製品があるんじゃないかと思ったけど無いらしい。
こんなにも中世っぽい時代に見合わない道具類があるのは、どうやら『魔導具』を造ることに長けた国があるらしい。
このことはなんで上下水道も完備されてないのに蛇口をひねったら水が出るのか不思議でずっと首をかしげていた時に母さんに教えて貰った。
そもそも魔導具とはどういったものかというと、前世の世界ではガスや電気などを用いて使用していた機器を、それらの代わりに自分の身に宿る“魔力”を用いて使用する導具のようだ。
この魔導具が開発されたおかげで、ここ数年でこの大陸の文化水準は向上し今のような少し楽な暮らしが大抵の家庭でできるようになったらしい。
てゆうか、いい加減この大陸の歴史とかについて勉強しなくちゃな。
エルドシアさんに、ざっくりとだが大陸について教えてもらったけど、そろそろ七年も経つんだし忘れかけてる。
いや、でもこんなちっこいガキが大陸について知りたいって言ったら逆に怪しまれないか?
そんな事を悶々と考えていたのかもう日は暮れていて、母さんが夕食の時間だと呼んでいる。
まあ、怪しまれてもこんな辺境の地に住んでるんだから特に影響はしないだろ、今度行商人のおっちゃんが来たら聞いてみよ。
そう思いながら家族のみんながいる場所へと向かった。
次の日の朝、いつもならもう少し後の日にくる行商人のおじさんが来ていた。
どうやらこの人が村まで送ってくれるそうだ。
何でおじさんがって思ったけど、おじさん曰く、昔父さんと母さんに返しきれないぐらいの恩があるらしく、俺たちが村にいる間の滞在する場所まで確保していてあるらしい。
ホント父さん達は昔一体何をしたんだよ……
そういえば、村にいる間はヒュルスタという名は名乗らないようにしろって注意されたけど何でだろう?
家から村までは約四時間程度で到着するらしいのでその間この大陸について聞く事にした。
この大陸の名前はエルドシアといい、神の一柱であるエルドシア様が創り上げたとされているらしい。
……てゆうかあの人本当に神様だったのか、この話聞くまでただのコスプレが好きなおば……もといお姉さんにしか見えなかったぞ。
まあ、あの人が神様かどうかはおいといて……なんか遠くの方から『私は神様です〜〜!』とかいう声が聞こえたが気にしない。
さて気を改めて、このエルドシア大陸には五つの国がありそのうちの四つは、武術、商業、魔法、魔導、どれか一つの分野に秀でていて、それぞれが異なる文化をその国々で築いているらしい。
まず一つ目は、武術国家マルティリス、武術国家と言われている通り何よりも武を重んじ、体術を始めとした様々な武術に精通しており、その道を極めた人は、たった一人で一軍に匹敵するんじゃないかと噂されているぐらいに強い人がいるらしい。
二つ目は商業国家メルカード、この国は、『メルカードに行けば欲しいものが必ず見つかる』と、言われるぐらいに商業が盛んで、この大陸はもちろん、海の向こう側の大陸はたまた山の向こうの大陸の一般的な食料や特産品に加え、宝石類に珍味、そして武具防具までもが揃えてあり、どんな人でも死ぬ前に一度でもいいから行きたい国と言われるぐらいに凄い国だそうだ。
因みにおじさんはこの国の説明の時だけ異常に興奮した様子で説明してて妹が怖かったのか涙目で俺の腕にくっついてきたのは可愛かったけど、俺の可愛い妹を怖がらせたのは許せん、そう思ったがあの時のおじさんの雰囲気が異常じゃなかったから何も言えなかった。
てゆうか俺も少しビビった。
では、気を取り直して三つ目の魔法国家ソルシエ、この国も魔法国家と言われるとおり、他の四つの国のどこよりも魔法に精通しており、その全てを憶えるためには何百年も必要になるくらいの知識量があるらしい。
しかしその知識の殆どを国の上層部が握っていておりソルシエ国内にも出回らないくらいに秘匿されているものもある。
噂ではその中の魔法の内のいくつかは、発動しただけで、小国の一つぐらいは軽く消し飛ばせる威力があるらしいが、その魔法がたとえ存在したとしても消費する魔力が高すぎて魔術師が束になっても発動することは出来ないとされているらしい。
余談だがこの国は八年程前までどこの国とも交易をしようとせず、殆ど鎖国状態だったらしいが勇者と呼ばれる存在が現れて四つの国を一つにまとめたらしい。
けど、勇者と聞くと前世のオタク心と、今の子供心に火がついてもっと聞きたいと質問しまくったが、おじさんもそこまで知らないらしい。
少し残念だがもしかしたら村に勇者について知っている人がいるかもしれない、そういった希望を持つとこの旅路も楽しくなるものだ。
話を戻そう、四つ目の国は魔道国家マキドナ。
魔法国家ソルシエと間違えそうになるがその本質は全く違い魔導具と呼ばれる魔力を流すことで様々な効果を出す魔導具を造ることに長けていて、一般家庭に便利なものから軍隊の一つや二つを軽く消し飛ばせる威力を持った特殊な兵器まで幅広く造っているらしい。
因みにこの国と魔法国家はすこぶる仲が悪い、なんとも魔法主義のソルシエと、魔導具主義のマキドナとでは、根本的にそりが合わないらしい。
しかし何人かの人たちは何度か両国と友好関係を結ぼうとしたらしいが上層部の人たちに握りつぶされて知ったらしい。
……いや、仲良くしたい人たちもいるんだから仲良くさせてやれよ両国とも。
そして五つ目の国が他の四つの国をまとめ有事の際にはこの全てを統一するためにエルドシア大陸のほぼ中央に建国された総合国家アルティマーレ。
この国は四つ国を東西南北四つの区間に分けて時に喧嘩したり時に助け合ったりしている。
そして国の中心地には王城はもちろん、商業国に次ぐ大きさのマーケット、一年に一度商業国を除く三つの国で競い合う前世でいうオリンピックのようなものがあるらしいが、プロの人たちが出場したら面白みに欠けるとのことで、アルティマーレ国内にある学院の生徒達が出場するらしい。
因みに学院には15歳から入学できるそうで、殆どの生徒が貴族達で、平民の人たちは学費が高く、いかに優秀でも入学させることが難しいらしい。
学院には魔法科、魔導科、武術科、商業科、総合科があるらしいが詳しい事は入学してみれば分かるとのこと。
おじさんはその学院の商業科を卒業したらしく、一応すごい人だというのがわかる。
あと、この学院になら勇者について何かしらの文献はあるだろうとのこと。
これは俄然学院に入学してみたくなったな、けど……学費が高いらしいんだよな。
なんとか学費をあまり払わなくてもいい方法は無いの?って聞いたら、それがあるらしい。
特待生制度と言って、ある一定の優秀な成績を試験時に出せば学費をほぼ国が負担してくれるらしい。
そんなおじさんの話を途中休憩を挟みながら聞いていたらかなりの時間が経っていたらしく御者のおっさんがそろそろ村につくという声が聞こえた。
さてどん感じの村なのか楽しみだ。
一緒に書いてる友人から勇者のくだりの件を少し詳しく書いた方がいいと言われましたが、そこに関してはおいおい書いていくつもりです。
感想、ご指摘など普通にお待ちしてます。