エピローグ
「ねえ! この子たち、鷹司さんに会えたのがよっぽど嬉しかったのね! 」
はしゃぐ由利香の声が玄関の外から聞こえる。
そう、あのディナーからほんの数日後。
レディヴィアンは、みごとに花を咲かせたのだ。それらは朝露をうけて、深紅がきらめくようなみずみずしさを放っていた。
ランチの用意を始める前のひととき。
冬里は、由利香が会社へ行ったあと、ようやく? 静かになった庭へと降りて行った。
同じように後からやって来たシュウに、何気なく声をかける。
「これが、レディヴィアン? 」
「ああ」
「ふふ、ぴったりだね」
「…そうだね」
珍しく素直に認める冬里に、少し目を見張りながらも微笑みを返すシュウ。
2人は、遠い遠い昔に思いをはせながら、風に揺らめくその薔薇の花を、飽きずに眺めるのだった。
了
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
6月の薔薇たちのお話しなので、6月中に終わりたかったのですが、惜しくも間に合わず。
ですが、なんとか日本でヴィアンを咲かせてあげることが出来ました。
ここに登場するヴィアンは、『はるぶすと』シリーズの、「夏と冬」の冬里のお話に出てくるお嬢様です。興味がある方はご覧下さいね。
色んなお客様がやって来る『はるぶすと』。
由利香と椿の恋の行方も気にしつつ、今後もゆったりと営業を続けて参りますので、またどうぞ遊びにいらして下さい。




