矛盾の始まり
この作品は《ifルートシリーズ》の一つですが独立した物語なので他の作品を読んでなくても全然気にしなくて大丈夫です。
でもこの作品を読んで他の作品が気になる人はちょっと覗いてみてください。
轟々と燃え盛る業火、根元からへし折れた信号、倒壊したビル、吹き荒れる砂埃、痛々しくひび割れた道路。
今私がいる場所は本当に私がいた場所なのだろうか?
だってさっきまで友人の恵美と一緒に服を選んだり妙に甘いクレープ食べたり、いつものように遊んでたじゃないか。
こんな全てが壊れた町なんて、私は知らない。知りたくない。
「……いや、いやだ」
ここから逃げたかったが足が瓦礫に挟まって動かない。瓦礫をのける力も残ってない。こんなフィクションみたいな展開本当にあるんだ。
きっとここで私は死ぬんだ。惨めに這いつくばって死ぬ運命なんだ。
あの《巨大な猫の化け物》に殺されるんだ。
自分の最期を理解するともう全てがどうでもよくなってくる。いや、きっと全てがどうでもいいものなんだ。どうせ先なんて無いんだから。
ズシン、ズシン
辺りに重い足音が響く。私の全てを壊した《巨大な猫の化け物》の足音だ。
この時、不思議と恐怖はなかった。こうなる運命だったとか仕方がなかったとか、諦めるための理由が脳内から溢れ出てくる。そのうち諦めの理由も枯渇し、思考が白くなってきた。考えるのもしんどい。
「うっ……」
だれかの。こえ。どこから。でも。いまさら。どうしようも。ない。
わたしには。なにも。できない───。
「あか……ね……ん」
──あかね。紅音。私の、名前。呼んでいるのは、誰?
「助け……て、あ……かね……ちゃん」
弱々しい、声。どこかで聞いたことがある。
私は地面に接していた顔をゆっくりと持ち上げた。そして朦朧とする意識の中で声の出どころを見る。
「……!?」
そこには手を伸ばし助けを求める恵美の姿があった。何かを頭にぶつけたのか血を流し、下半身は瓦礫に埋れている。
「め……ぐ、まってて今助けに……!!」
恵美を助けようと体を前へ動かす。しかし私の足も瓦礫に挟まって動けない。なんとかしないと、そう思った矢先にさらなる絶望が私たちを襲った。
「なんで……このタイミングでここに来るのよ……」
猫。そいつは二つに分かれた尻尾を不気味に揺らし、剣のように尖った爪で大地に傷を刻み、冷酷な狩人のような目で恵美を睨んでいた。巨大な猫に睨まれた恵美は恐怖に押しつぶされ意識を失ってしまった。
化け猫は恵美を一飲み出来そうなほど大きな口を開けた。そのまま飲み込むのかと思ったが不意に猫の動きが止まった。
『助かった?』
私が安堵しそうになったその瞬間、猫の口に小さな光が灯った。その小さな光は一瞬にして大きな球状の業火と変化し辺りを赤熱地獄へと変えた。
「やめて……」
自分の声が震えているのが分かる。猫の口から出ている業火からパチパチと激しい火花が散る。
そこで私の思考に異変が起きた。頭の中の繋がってはいけない何かが繋がった感覚。
繋がってしまった回路は頭の中で火花を散らし私を暴走させていく。
「い……や、いや、いや、いや! いやだ!!!」
繋がった回路から流れてくる力は私の中の拒絶のイメージを具現化させていく。
確信はない。だけど、なんとなく分かる。きっとこの力は《現実を歪める力》。
《世界》の理と矛盾した力だ。
「……いや、いやあぁあぁあアアアァア!!」
目の前に作り出されたのは薄い青色をした半透明の《六角形の盾》。
私の、拒絶の象徴。
「アアァアアァァァァ─────!!」
ここから私の全ては矛盾していく。




