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解決

ベイロンの瞳が揺れていた。

レイが今言っている‘間違ったこと’が何を意味するのが知っているからだった。

誰も彼にそのような話をしてくれなかった。

世の中はいつも彼に叱責と呪いだけを浴びせた。


この学院に来てからもそれは同じだった。

彼の成績が高くなればなるほど、彼を憎悪する人たちが増えてくる。

さらに先生らさえも彼の優れ才能を怪物でも見るような目で見つめた。

あたかも存在自体が間違いのように。


揺れるベイロンの姿を見ながらレイは自分の計画が成功的だと感じ、

一回深呼吸をしてははっきりとした声で話を続けた。


「それは事故だった。君のせいではない」


レイはベイロンに向かってゆっくりと近付いた。

ベイロンはそんなレイを子供の時のような表情で見つめていた。

二つの目に涙が潤んだベイロンのその姿を見たレイもまた、

胸がじんと熱くなった。


ベイロンが必要なこととは別にレイはベイロンを同情していた。

それに彼に魅力を感じていた一人でもある。


「ベイロン、君は善良で優しい人だよ。

誰にも君を悪魔だと非難する資格はない」


レイはベイロンを抱きしめながら話した。

その感情に嘘偽りはない。

ベイロンはそれを知っている。

レイは本当に自分のことをよく知っている人で、

それなのに自分を非難しない人だった。


レイから離れようとしていたベイロンは、結局レイの胸に顔を埋めた。

そして声を出して泣き始めた。


「僕は…」


レイは彼が何の話をしようとするのかは分からなかった。

だが、その言葉が何でも関係ないと思った。

計画は成功した。

そして、傷ついた少年を救えたことが、その充足感がレイをうれしくさせた。


***


レイはベイロンを連れて学院の中にある公園へ行った。

そこは外部の人にも公開されているところだった。

近くの売店で飲み物を二つ買い、ベンチに座っていたベイロンに渡した。


「気分はどう?」

「あ、ありがとうございます。

もう大丈夫です。」


泣いて両目が泣きはらしたベイロンは、

顔を恥ずかしげに赤らめながらレイが渡したアルミ缶を受け取った。

レイはその姿にびくっとした。


男の子にも係らず‘妖艶(ようえん)’という言葉が似合うためだ。

本来すごい美少年で評判だったキャラではあるが…

本当に女の子ではないのが惜しいほどであった。


レイは彼のそばに座り、何の話もしないまま飲み物を飲んだ。

アルミ缶が空になった頃、

やっと頭の中が整理できたのかベイロンが話を切り出した。


「ところで、本当に誰ですか?」

「そうだな。何といえばいいかな。」


レイはちょっと悩んだ。

自分が元々この世界の人ではないこと、

この世界の未来を知っていること、

そして、レイノスの死によって世界の行く末が変わってしまい、

それを防ぐために君を訪ねてきたということ。


そういうのを説明しても信じるだろうか?

いくらここがファンタジーの世界というけど、それなりの合理性があることだ。

その上、このような情報は

もうちょっと信頼できる仲になってから話す出すほうが良さそうだった。


「危険になった世界を救うために

ものすごく優秀だと言われる君の力が必要でここへ来たんだ。

どう?信じられる?」


結局、目的だけ明かした。

これだけ言いながらもレイは非常に恥ずかしい気持ちになった。


‘世界を救うって!’


彼は羞恥心を押さえ込むために弁解でもするように

ベイロンへ訴えるように話した。


「いや、荒唐無稽な話に聞こえるかもしれないな。

だが、これは本当さ。この場ですぐ説明ですることはできないが…」

「いいえ。信じますよ」


ところが戻ってきた返事は意外な言葉だった。

驚いてレイがベイロンを見つめると

彼は子鹿のように優しい目でレイを見つめていた。

その眼差しには信頼がいっぱい含んでいた。

かえってレイが呆れるほどだった。


「簡単に信じるな?」

「僕は人が嘘を付くのかどうか簡単に分かりますよ」


ふふっと笑いながらベイロンが話した。

レイは‘あ、そうだったな’と納得した。


ベイロンの特技の中の一つはシャーロック・ホームズのように

人の行動で出身や心理を読み取ることだった。

しかしそれなら逆に、今後ベイロンの信頼を得るためには、

できるだけ隠さずに話すべきだった。

嘘をつこうとしてもそれは通じない。

そういえばレイの看破スキルが完全に無効になるほどだから。


「おお。それなら手伝ってくれる?」

「本当に僕みたいのができるでしょうか?」


ベイロンは遠慮がちに反問した。

呆気に取られてレイは叫んだ。


「君ができないといったい誰ができるんだ!」

「しかし僕は…」

「君は天才だよ!何でもできる!」


レイは自信なさそうなベイロンの両肩に手を置きながらはっきりといった。

ベイロン。

その悪魔的な才能と力で世界を一時滅亡の直前まで追い詰めた者。

そのような人に不可能なことがあるならばいったい誰が可能だろうか?

レイノスだとしても多分できないだろう。


「は、恥ずかしいですね」

「君は卓然たる資質を持っているよ。」


ベイルンはその言葉にへへと子供のように笑った。

率直に喜ぶその姿は、天才とか彼が体験した過去の闇に似合わなく、

レイは本当に済まないと思っていた。


どれだけ愛されること、認められることを経験できなく、

この程度の話にこのように嬉しがっているのか。

レイは引き続きベイロンに説明した。


「もちろん今すぐ手伝ってほしいではない。

君もまだ学び足りないはずだし、

もうちょっと時間が必要だよな。

ここを卒業したら手伝ってくれる?」

「いいえ、待つ必要はありません!

今すぐ休学します!」


すくっと立ち上がりながらベイロンはふんと鼻息を吐き出した。

妙に可愛い姿だと思いながらレイは急いで彼を止めた。


「え?そこまでしなくてもいいよ」

「いいえ。どうせここで別に習うべきことはなかったのです」


ベイロンはレイを見つめながらそう断言した。


‘これだから天才は’


レイは言葉が喉まで込み上がろうとするのを歯を喰いしばって

堪えながらベイロンを止めた。


「いや、君の才能を信じてないわけではない。

ただ魔術師としての君の能力を期待しているからだよ。

だから勉強を疎かにすると…」

「大丈夫です。だってずっと独学してきましたよ。

今、学園にいるのは今後社会に出る時、

独立するとこのような過程を踏んでおくことが

色々役に立ちそうでいるだけです。

人というのは元々有名や名誉なものに容易く惑わされるでしょうね?

僕はこの学園のタイトルがほしくて通っただけで、

特に学習自体を望んだわけではありません。

魔法なら基礎的な面はこの学院の教授より僕が優秀ですしね」

「まあ、そうかもしれないが」


レイは否定することができなかった。

公式設定上でベイロンは彼自身より優れた能力を持つ師匠に会ったことがない。

幼い頃から勉強して、魔法という面での戦闘機術の理論は

今の年頃には全部マスターしていた。


実際にそれを使うのはレベルやマナや知能、

いや知能はもう最高クラスの魔法の使用条件に足りていると思うから

それは除いて、とにかく様々な面でまだ無理だとしてもだ。


「むしろ強くなるということ自体だけでみると

学園に残っていればいるほど損でしょうね。

それだけ実戦経験が減ることを意味するので」

「ああ。それはそうだが」


レイも頷けざるをえなかった同意するほかはなかった。

実戦経験はとても重要だ。

特に魔術師の場合、魔法をいつどんなふうに使うべきかを

モンスターの種類と置かれた状況によって

早く判断しなきゃいけないので、経験の差が強さの差を作り出す。

レイはこの勇ましい態勢の転換に当惑しながらベイロンに聞いた。


「しかしさっきの自信がなさそうな姿とは打って変わったな?」

「それは兄さんが話したことに僕が役に立つかと思ったことで、

客観的にみると僕はかなり優秀だと思います。

フェザーアカデミーのテストで20回連続一位は伊達じゃありませんよ」

「伊達じゃないというか…」


もう一度‘これだから天才は’という鬱憤が胸の中で出そうだった。

フェザーアカデミーならその地位が国家にある最高の大学校に値する。


「まあ本当に役に立たないなら兄さんがいったとおり、

学園へ戻って勉強を終えた後、手伝えばいいではないでしょうか?」

「うむ。それはそうだな」


結局レイはベイロンの言葉が正しいと思い納得するほかなかった。

もっともベイロンを口達者で、会話で勝てると思うのは愚かなことだった。

頭がいいのが必ず口上手なわけではないが、

頭が悪い人より上手である可能性は充分ある。


「じゃ、今すぐ休学を申し込んできますね」

「わかった」


ベイロンはへへと笑いながら学園の建物のほうへ走っていった。

彼が遠ざかる姿をベンチに座って見ながらレイもふっと笑った。

仲間集めの第一歩は思ったより順調だった。

そして、自分が生き残るために始めたことではあるが、

他人にも役に立つとそれは非常に気持ちいいことにもう一度気づいた。


***


休学手続きはすぐ終わった。

こういうのを見るとアカデミー側ではベイロンを止めなかったようだった。

もっとも彼を敬して遠ざけるの頷ける。

彼がいくら能力ある人材だとしても、

莫大な後援金を毎年送ってくれる名門一族の子供たちに常に恥を与え、

アカデミーとしても困っていると思うからだ。


制服を着てアカデミーの外に出てきた彼は、

光るように明るい顔で周りをきょろきょろ見回した。

あたかも初めてこの村へ来た人のように。


「ふふ、風景が前とは違うように見えますね」

「そんなにいい?」

「あの中にあるのはみんな食うか食われるかで

ああだこうだする餓鬼のような奴らです。

頭が悪いのが家柄だけででしゃばるというか。

そんな奴らと一緒にいて楽しいわけがないですね」

「み、皆すごい秀才だと聞いたが」


レイの話にベイロンは肩をすくめては鼻でせせら笑った。


「秀才?いいえ、馬鹿ですよ。

群れをなさなければ安心して自らの能力を証明できないのは

弱い獣の特徴でしょう。

派閥を作ってあれやこれやするのを見ていると

情けないことこの上ありませんね」

「そ、そうなんだ」


フェザーアカデミーの派閥の力が強いということはレイも知っていたが、

それを弱者呼ばわりしてするとは。

あんな派閥は普通インナーサークルとして

社会のエリートが自分たちだけの城を築くのに使うことだ。


強者は強者同士で協力してより一層強くなり、

弱者が見くびることができない権力を構築するというか。

それを弱者の群れ作りというとは。

そういえばベイロンが後ほど犯すことを考えると弱者ではなく、

蟻と言っても話す言葉はないが。


ベイロンは目を光らせながら話した。


「まあ、それでもあいつらが劣等感に苦しめながら

猜疑と嫉妬の視線を送るのを楽しむのは悪くなかったです。

あんなばかな奴らも生きていくのに

僕も生きていかなきゃと思うようになるからよかったというでしょうか。

僕が兄さんに会う前はちょっと暗い性格だったので」

「そ、そう」


ベイロンが今このように優しいように見えても

悪党の気質を依然として持っていることをレイは感じた。


「その派閥を操りながら弄ぶのも面白そうです。

そいつらの行動原理というのはたかがしれているのでね。

憎しみの視線を送った対象に服従しなければならない心情は

どんなことか想像してみるとおもしろくないですか?」

‘そんな人をソシオパスというんじゃなかったけ’


フフフと陰鬱に笑うベイロンを見て、

レイはそのように考えたが、あえて口に出さなかった。

ソシオパスの面は少しあるようだが、

根は優しい子というのを確認した今はそれで充分だった。


‘そう。間違いない。安心してもいい’


レイは不安がゆらゆらと立ち上る自身の心を静かに落ち着かせた。


「そうなら前にこのように兄さんと会って、

あのくだらないところから抜け出したんですがね!」

「は、はは。それはよかったな」

「ところでこれからどこへ行くんですか?」


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