天才 ベイロン
さっき抜いた剣を装備したレイは、
息切れしながら絶壁を乗って再び降りて行った。
これで自分が強くなるための最も重要な準備は終わったわけだ。
次に彼の向かう先はここから遠くないキャピタルの都市アレンだ。
そこに迎え入れるべきのNPCがいる。
いくら未来を知っているとしても一人では世界を救えない。
自分のパーティーを作ってこそ今後の様々なクエストを乗り越えるからだ。
そのパーティー員として一番重要だろうと思う人がそこにいる。
***
アレンにはアカデミーが一つある。
フェザーアカデミーというところだ。
キャピタルで成功した富裕層が子供たちを入れるところであり、
平民といっても入れないことはない。
ただ、毎月500ゴールドに達する圧倒的な学費が必要なので、
平民がこの学院へ入ることははかなり難しいことだった。
結局、ほとんどは奨学試験を通過し、奨学金を貰うが、
通過のためには少なくとも知能数値が17以上ではなければならない。
年齢の制限を考えると天才だけ入れることと同じだ。
成人の知能が30ならはっきりといって天才で、
40なら歴史に名を残す不世出の天才とほぼ同じぐらいだから。
しかし、そんなに難易度が高いだけ、ここで奨学金を貰いながら通う子供たちは、
誰でも自分たちの能力にプライドを持っている。
そのアカデミーの廊下の壁に前回の試験の結果が貼られていた。
「今回もまたベイロンか」
「あの野郎」
「水商売の家で生まれたくせに」
「あれはただ勉強だけできる機械だな」
廊下で身だしなみがいい子供たちがざわめいた。
その子供たちの間で端整な顔だちの美少年が成績を見ている。
彼がまさに話題の中心にあるペイロンだった。
前回の試験の学年1位。
そして入学以来、一度も一等を逃したことがない天才。
嫉妬にいっぱいな声を無視しながらベイロンは向きを変えて歩き去った。
他の学生たちは大地が裂けるように彼に道を開いた。
それは畏敬というより嫌悪の結果であった。
しかし、その道を歩きながら、
ベイロンは全く萎縮することなく冷たい表情だった。
もう馴染んだ嫉妬。
もう馴染んだ悪口。
もう馴染んだ憎しみ。
そして、
もう馴染んだ退屈さ。
ベイロンは廊下を歩いてがらんとしている自身の寮部屋へ向かいながら考えた。
世の中はあまりにもつまらないと。いっそ滅亡してしまったらいいと。
そしてできるなら自分がそれをやる主体になりたいと。
彼は愛されたことがなかったので、世の中を愛する方法を分からなかった。
結局人というのは受けたことだけ戻せる存在だ。
***
レイはアレンの市場のある鍛冶屋にいた。
彼の前でずっと作業に熱中していたかじ屋は、
額の汗を拭いながらレイに剣を渡した。
「強化は成功した」
「ありがとうございます」
レイはうれしく剣を受け取った。
汚れきった剣は今、研ぎ澄すまされていた。
彼はこの鍛冶屋に強化のために立ち寄っていた。
低い段階の強化はこのような鍛冶屋でも可能だった。
魔法的な付加効果を得ることや防御的な効果を得るのは
特殊な方法や材料が必要だが、
このような攻撃力10の弱い武器は簡単に強化できる。
問題は強化するより新品のほうがもっと強い剣を安く手に入れるほうだ。
しかし、レイの無名剣の前でそのような原則は通じない。
かじ屋はレイの剣をもう一度見ながら話をした。
「とても不思議な剣だな。壊れない」
「ハハ、そうなんですか」
「うむ。俺はこの仕事を長く続けていたが、こんなに丈夫な剣は初めてだ。
そういってもありふれたロンソードに過ぎないが…」
「まあ、丈夫だから使っているんですね」
レイは席から立ち上がった。
ひとまず余裕分の金を注ぎ込だので、もうここにいる必要はない。
強化のおかげで今の無名剣の攻撃力は13だ。
4回強化して、3回成功した。
かじ屋は興味深いようで、レイに聞いた。
「どうだ。作業に使った費用まで合わせて1500ゴールド出すから
俺に売らないか?」
「いいえ、お断りします。自分に必要な武器なので」
「そうか。それは残念だな」
かじ屋は残念な表情になった。
それもそのはず。
無名剣の刃のような物性を持つ金属は武器を作る人なら誰でも夢見るものだ。
しかし、実際の価値は一億ゴールドでも買えるものではない。
現実でも一千万円とか出しても鼻であしらうぐらいだ。
「では」
レイは軽く挨拶をした後、店から出て、道を歩いた。
「ここだったな」
都市の代表的な施設であるだけに簡単に見つけた。
あちこちに案内のための標識があり、
その施設の周りの商店たちも繁盛していたからだ。
レイは標識について行き、
アカデミーの窓口でベイロンとの面談を申し込んだ。
窓口の案内員はレイにベイロンとの関係を尋ねた。
故郷の友人だと答えるとそれ以上聞かないで通過された。
‘やはり嫌われているな’
待機室へ向かいながらレイは安心して首を縦に振った。
フェザーアカデミーは寮のシステムである。
社会の指導者を育てるためには厳格さが必要だという理由で
あたかも軍隊のように子供たちを指導していた。
だから訪問者が会うのも厳格な手続きが必要で、
外泊は遠くから両親が訪ねてこない限り期待するのが難しいことだった。
ところがこのように簡単に許諾されて、
相手の身元についての調査も緩いということは、
特恵ではなく、ベイロンに対するアカデミーの評価が非常に悪いという意味だ。
私たちは彼について関与したくない、彼を管理したくないということだから。
‘まあ、そっちのほうが俺としてはいいがな’
ベイロンを仲間に迎えて、
彼の助けを得るためには彼が今の環境に不満を抱いているほうがいい。
それに、万一彼が今ここでいい暮らしをしているなら、
レイが知っているエルナ-クについての知識のほとんどが変わったことになる。
もしそうだとレイにとって大変なことだ。
初期の状況が同じことを確認したのでもう安心できる。
‘うむ’
レイは腕を組みながら、
ベイロンについて自分が知っている知識をもう一度思い出した。
ベイロン。圧倒的な天才。それも凄まじい悪の天才で、
彼の行動で世の中は滅亡に導くところだった。
絶好調になった時、彼の知能は60を超えた。
世界最高の魔術師というアークメージでダルリンさえも50ぐらいであり、
魔族まで合わせても60ぐらいではないことを思うと、
ベイロンの知能は超越的な数値だ。
彼は卑賤の出で、水商売をしていた女性の子供だ。
しかし、彼の母は美しいことで有名な絶世の美女であった。
そのおかげでベイロンはとても美しい容貌の少年で、
幼い時から少なからず名前が知らされていたほどであった。
問題は彼女がコブ付きになってから以前のような人気ではなくなった。
子供を産んで体型が変わったからだ。
そうでなくても歳を取って客が減った時期だっただけに、
ベイロンを産んだことは彼女に致命打として作用した。
会話が上手とか接待が上手いわけでもなく、
ただ美しさだけで人気を得ていた女性だったのでより一層そうだった。
水商売の女として彼女は没落して、その恨みは自然にベイロンへ向かった。
それで彼の幼い頃は絶え間ない虐待と殴打で占めていた。
多くの人々が天使のようだと賛嘆する美しい容貌もまた、
虐待などによって台無しになる日が多くなり、
美少年と呼ばれたことも戯言だったように消えてしまうぐらいだった。
泣く、謝る、服従する。それがベイロンの幼い時期だった。
しかし、彼は一生をそのように暮らす存在ではなかった。
圧倒的であるほどの天才だったためだ。
どの子供よりも早く、話せるようになった。
残念なことにベイロンは自分が話をした時、
あたかも怪物を見るようにベイロンを見る母を見た以来、口を閉じた。
そして他の子供たちがようやく話せるようになってからまた口を開いて話した。
彼は沈黙してる間、教養のある客を迎えるために
家へ飾っておいた本を見ながら文を習い、勉強をした。
多くの本はそのような子供がとうてい読めるものではなかった。
そして、教養あるように見えそうな本をばらばらに買っておいたので、
体系的でもなかった。
しかし、ベイロンはあたかもつまらない雑誌を読み続けるように
そのような本を読んで知識を積んだ。
その知識を晒すことは決してしなかった。
自分を怪物を見るような母の目つきを一度も忘れたことがないからだ。
その恐ろしい母の虐待はベイロンの写真のように明確な記憶の歴史の中で
ほぼ一日も無かった日がないからだ。
それで誰も彼の天才的な才能をわからなく、
彼もまたそれを外に表わしてなかった。
そしてベイロンが十二歳になったある日。
その日は眼鏡をかけたある老紳士がベイロンの母を訪ねてきた。
彼の母はちょっと出かけていたところだった。
老紳士は母の常連の一人である彼は、残念と思いながら出ようとした。
するとベイロンは母を助けようと、
老紳士と会話をして母が帰ってくるまで引き延ばそうとした。
「おじさん、母が帰ってくるまで時まで私と話をしませんか?」
ベイロンは丁寧に尋ねて、老紳士は笑いながら興味を見せた。
ちょうどその時はベイロンが母に殴られなくて顔がきれいで、
おかげで世の中に珍しい美少年の容貌を見せていたことが役に立っただろう。
「何のことについて話そうか?」
「私がおじさんの職業を当てるのはどうですか?」
「それはおもしろそうだな。どんな仕事をしてるように見える?」
「教授ですよね?」
「おお! これはすごいな。どうやってわかった?」
「手と目を見るとわかりますよ!目をそんなに多く使って、
手にそんなにタコがある仕事をする人は多くありません」
「それは植字工や筆写家も同じじゃないかな?」
「植字工や筆写家のおじさんよりもっとタコが多いですよ。
そして質が低いインクをたくさん使うところにいて、
その臭いが体に染み込んでいるでしょ?
おじさんの体から出るのはインクより古くなった本の臭いがもっとします。
それにさっき、話すときも口荒いではなかったですしね。
また、修道士ならこういうところに
そのようなお姿で来ることはないでしょうね!」
「おお。そうか!ほかにも何かあるか?」