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イースターエッグ(隠しアイテム)

エルナ-クの世界観設定によると

魔界の悪魔たちはこの世界を虎視耽々と狙っている。

彼らは人とは比べられないほど強力な力を持つ存在だが、

いつも野望の達成には失敗してきた。


覇王アルセンや新皇メデルリウスの犠牲のおかげ、

悪魔たちの内輪のもめことなど場合によって違う。

今、この世界に悪魔たちが大きく干渉しないでいる理由も、

彼らの間の勢力争いが終らないせいだった。


それが終った後はレイノスによる世界連合が

その英雄的業績を達成することになる予定だった。

ところがそのレイノスが死んだ。

彼が粉砕した悪魔の数多くの陰謀は、花を咲かせることになるだろう。

いや、それだけではない。

国家間の反目は一層激しくなり、

各国が大きな戦争を繰り広げることになるかも知れない。

そうなると力を合わせて魔族たちと戦うどころか、

一気に殲滅もしくは各個撃破されるのが落ちである。


「くそ!」


レイは歯を喰いしばった。

比較的に祝福された立場にいると思ったのに全くそうではなかった。

このままだと数年後には大きな事件に巻きこまれて魔界と戦うことになるはずで、

その過程で生き残る可能性は薄い。

死ぬと現実世界へ戻るかも知れないのに、

そのような‘もしかしたら’という可能性に命をかけることはできない。


「どうしよう…」


彼は焦りの気持ちに襲われた。

そして、ため息をしながらカフェの天井を眺めた。

頭の中で色んな考えが浮び上がる。


‘逃げる?だが、どこへ?

じゃ、戦いに備えて訓練する?’


どうせ色んな方法でレベル制限を解いて強くなっても100レベルぐらいが限界だ。

しかし魔界にはそれ以上のレベルの強大な悪魔がいくらでもいる。


「……」


これといった方法がない。

レイは自分についてもう考えてみた。

1300ゴールド、プレイヤーという特殊な位置、そしてこの世界に対する知識。

彼はゲームのシステムについてはほとんど知らないが、

エルナ-クの世界観とシナリオに精通している。

それは言い替えるとエルナ-クの‘未来’を知っているということだ。


今、彼がこのように焦っていることも

まさにその未来を知っているためではないか。

その時だった。

突然途方もない考えが脳裏をかすめた。


自分の考えに驚いた彼は、思わずむくっと立ち上がって、

テーブルを両手で打ち下ろした。

カフェの従業員とほかのお客さんたちが驚いて彼を見つめた。

レイは人たちの視線に慌てた表情で頭を下げ謝った後、席に座った。


驚愕がすでに彼の全身を攫い、かすかに震えていた。

彼は震える手でさっき読んでいた週刊誌を再び握りながら呟いた。


「おれはこの世界を救える!」


***


「ふう!」


傾斜の絶壁の岩壁を踏んでレイが顔を表わした。

疲れた顔でうめき声を出しては絶壁の上まで上った彼は、

体を巻いているロープを解いては自分が上がってきた絶壁を見下ろした。


50mぐらいの高さの絶壁だった。

ここまで釘を打ちながら上がってきた自分が立派だと思えるほどであった。

もちろん現実でならできないことだ。

ゲームの中で力と体力が13にもなったから可能なことだった。


「やはり戦士の力と体力が13なのはちょっと…」


レイは物足りなさを感じながら後頭部を掻いた。

武器を扱う職業は力と体力がとても重要だ。

しかし、レベルがすでに11になったのに、

基礎能力値が10強というのはちょっと残念なほうだった。


多分、今後レベルアップしで得られるボーナス ポイントみたいなのがあるか、

能力値を引き上げるイベントのようなのがあるだろうと思うしかなかった。

詳しくは分からないが有名プレイヤーの中には

60レベルに基礎能力値の総合が200を超える場合もあった。

設定上のNPCを見てもレイノスの場合、レベル90の時、力は90を越えた。


主人公の補正もあるだろうが、それでも凄まじい数値だ。

オーガの力が20ぐらいで、ドラゴンだとしても70-80ぐらいだから。

エルナ-クの一般人の体力はほとんど100未満なので、大体一発で死ぬだろう。

力が90なら命中した時、基本攻撃力だけ見ても80だ。

そこに武器の攻撃力に熟練度をかけたダメージが入ると…


「うん?」


彼は何か逃したのがあるような気がした。

育成理論や攻略を読んでおけばよかったという

後悔をすることになったが時すでに遅し。

本来彼はゲームをしながら効率的な育成方法を参照しようとした。


ゲームが発売されて結構時間が経ったので、

最適な育成方法のようなものもたくさん存在しているから、

この育成方法自体が一種のネタバレのようになった。

それで読んでないのにこれが足を引っ張ることになるとは。


「まあ、別にいい!」


気分を変えてレイは叫んだ。

どうせ成長という面ではプレイヤーである彼が、

そのようなNPCに比べて足りないところはなかった。

製作スタッフは重要NPCを特に強く作っているが、

同レベルならプレイヤーも育成によっていくらでも

彼らより強くすることができる。


彼が知っている限り、実際そんなプレイヤーが何人もいた。

設定はともかくプレイヤーの成就感を邪魔しないための措置だった。

それでプレイヤーの中にはレイノスを主人公というより

ライバルの位置にいるキャラだと思う人も少なからずいた。


「強くなる方法は能力値だけではないからな」


レイは引き続き叫んだ。

まさにその強くなるという目的を達成するために彼はここまで来た。

ここはキャピタルの国境線から遠くない山で特に名前はないところだった。


強力なモンスターがあることでもなく、

人々の往来が多いこともなく、何か特別な伝説やダンジョンもない。

ただの山であるだけだった、誰も関心を持たない。

彼は山の上を歩いた。


‘ここにはとんでもないアイテムがあると言われている。’


イースターエッグ(隠しアイテム)というものがある。

製作スタッフがゲームの中にいたずらで何かを入れておくことをいう。

大体はただのおもしろい要素ぐらいで終わるが、

進行に大変強力な助けになるアイテムの場合もある。

オンラインゲームはバランスと収益のために前者は入れても

後者を入れることはほぼない。

しかし、エルナ-クは一回だけ、

後者であるイースターエッグをゲームの中に入れたことがある。


「どれどれ」


レイがずっと歩くとそこには草木が生い茂っていた。

特別に変わったことはなかった。

彼は草をかき分けてみた。すると石が一つ見えた。


「おお。ネットの情報とおりだ!」


石を見るとすぐに心臓がどきどきした。

この石の下にまさにその探し物がある。

ゲームの中の世界とは言っても製作スタッフのいたずらまで再現されているか

多少心配していた。


だから探して損することはない。

本当にあるなら大当たりと言ってもいい。

現実の世界では一戸建ての価格で取り引きされるぐらいだから。

彼はそわつきながら石を持ち上げた。


「よいしょっと!」


すると彼の表情がぱっと明るくなった。


「本当にあるんだ!」


自然に口からそんな声が飛び出した。

そこには古いロンソードが一個が埋まっていた。


「これがゲームにたった一つの伝説のソードか!」


レイは素早くそれを持ち上げた。

土が落ちる音がしながら剣が抜かれた。

彼はそれを手に持って眺めるとアイテム窓が浮び上がった。


古いロンソード

攻撃力10、耐久度 無限

詳しいことは分からない古い剣。誰かが使ったものだと思われる。

非常に長い間、放置されたように見えるにもかかわらず全く傷がない。


「そりゃ、そうだな…」


剣についての説明を見て、レイは苦笑いをした。

初めにこの剣が見つかった時、

発見したプレイヤーはこの剣にまったく興味を持てなかった。

丈夫なのを除くとありふれたロンソードに過ぎなかったから。

しかし、いくつかのクエストを経て、秘密が明らかになった後、

条件が取りそろえると真の正体を表した。


これはエルナ-クにたった一つだけ存在する剣で、

皆が夢見るアイテムといってもいいほどだ。

彼はこれを得ただけでもう目標達成のための半歩の半歩ぐらいは

できたのではないかと思うほどであった。


「まあ、丈夫なところはいいよな」


現在は丈夫なだけだが、これはとてもいいことだ。

エルナ-クの武器システムには耐久度というのがある。

しかし、この剣は修理する必要がない。


それだけではない。エルナ-クには強化度がある。

これはほかのゲームのように賭博の要素が強い。

強化度によっては失敗すると武器が壊れて使えなくなることもある。


ところが、この古い剣は耐久度が無限だ。

即ち、壊れない、強化に失敗しても!

だから剣の強化である成長可能という面でこの剣の可能性は無尽蔵だ。

強化すればするほどお金はかかるが。


「ふふふ」


エルナ-クの製作スタッフは後日インタビューで

この剣の存在を神の一手というべきか失敗というべきか分からないと話した。

初期のいたずらな心で置いたことなのに、その価値が明らかになり、

全世界を合わせて最も高い取り引きアイテムに浮上してしまった。


これによってエルナ-クは大きな宣伝効果を得て、

より一層大きな成功を収めることになるが、

同時に一般なプレイヤーだけではなく、

RMTリアルマネートレーディングを狙うプレイヤーも

多くゲームをプレイする結果になった。

しかし、数百万を超える人たちがやるゲームなのにこの剣はたった一つ。


それに強化すればするほど多くの金がかかるので、

ゲーム内のバランスを多く崩すほどではなかった。

レイの立場ではこういうのをその場に置いてくれた製作スタッフに感謝の気持ちでいっぱいだった。


「俺の長剣の熟練度はまだ110だけど、

 長期的に見ると特に問題ではないよな!」


レイは大いに喜んだ。

防御のことを除き、攻撃力を見ると

今、彼が敵を殴るとそのダメージが14前後である。

武器攻撃力に武器熟練度のパーセントをかけるとそれが基本攻撃力になり、

そこに力ボーナスを加えるのがトータルダメージだ。


しかし、力が50になって、武器熟練度が300ぐらいなると

一発で150以上のダメージを与えることも夢ではない。

その上に強力な攻撃スキルを使うと。


「うわ!」


想像だけでも胸がじいんとして、彼は戦慄に体を震えた。

そのぐらいになると高位の魔族とも十分戦える。

高位の魔族の武器免疫能力でもあの攻撃力では貫くことができるからだ。

そしてエルナ-クで体力が10000以上の敵は多くない。


もちろん専門化された武器だとしても熟練度を300まで上げるのは

ものすごい偉業だ。

エルナ-クのNPCの中には英雄、いわゆる有名なキャラがそこそこあるが、

彼らぐらいにならないと300を期待することはできない。


「それじゃ…おれのパーティーを作りに行くか」

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