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職業、スキル

レイは一番近い繁華街のあるカフェへ入った。

食事や今後すべき事について考えるためだった。


そこで彼が注文したのはコーヒーとサンドイッチ。

価格は合わせて2ゴールド。

レイはインベントリからお金を取り出し、払った。

インベントリに入れる物は相変わらず重さがあるが、

お金だけはいくら持っていても重くない。


レイはコーヒーとサンドイッチを持ち、席に座った。

彼はまずコーヒーを飲んだ。

ちょっと苦い感じの香りが口の中に広がる。

ゲームの中だが、ここで食べて飲むものは現実とはほぼ変わらなかった。

単に異国的で、ちょっと特殊な塩の味がする。

食べなければお腹が空くことは現実と同じだったため、

彼は口をこまめに動かせながらコーヒーとサンドイッチを全部食べた。


「ちょっと見てみよう」


食事を終えたレイはまずインベントリ窓を開いた。

そこには色んな持ち物と所持金が表示されていた。

今の所持金は1320ゴールド。

傭兵団で働いてから一ヶ月で稼いだ金額だ。


エルナ-クは仮想の世界だが、

ゲームであるだけに世界観の内部には色んな設定がある。

その中の一つが貨幣単位である。

メーカはゲーム内貨幣を1ゴールド=100円だと説明している。

エルナ-クが実存すると為替レート問題で色な問題が起きるはずだが、

そんな詳細な設定に関心を持つのは設定オタクだけである。


メーカはエルナークにあるすべての地で同じ貨幣を使い、

1ゴールドは100円の価値があると説明している。

プレーヤーの立場でもそのほうが気楽なだけに歓迎されたが、

一部の商業や金融を楽しみにしていた人たちは、

為替投機ができないことを批判することもあった。


「結構稼いだな」


とにかく1300ゴールドを越える金額を一ヶ月で稼いだので、

レイとしてはそこそこアルバイトをしたのと同じだった。

多くのゲームでそうであるように、

強くなるための装備を用意するのに莫大なお金が必要だ。

しかし保身を中心として生きていくことを選択すると

大金は必要ない。


「まあ、現実に帰る方法を探さなければならないが、

その過程が危険だと…あえて無理する必要はないな」


内心レイは今後のことで最も重要なことを安全に決めていた。

実はわけも分からないままこんなところへ入ってしまったので、

死ぬとどうなるのか分からない。

本当に死んでしまうかも知れないし、現実へ戻るかも知れない。

だが、命がかかっていることだ。簡単に試すわけにはいかない。


このような場合は安全を選んで行動するのが最善だと

レイは判断していた。

彼が戦闘に慣れるべきだと考えたのも

あくまで安全が最優先目標だったためだ。

戦闘を売りにするゲームの世界である以上、

安全なところだけ歩き回るとしても

戦闘を避け続けることはできないだろう。


「さてと、スキル整理をしよう」


レイは画面を変えて自分のステータス窓を開いた。

そこには職業欄が輝いていた。

レベルが10になってからずっとそうだった。

彼はそれをクリックした。

するとメッセージ窓が浮び上がった。


「おめでとうございます!

レベルが10を越えた方は職業を選ぶことができます。

今後の成長を決める重要な岐路であるため慎重に選んでください。

各能力値の成長と習得可能なスキルがこれにより決められます」


それが終って現れた職業はファイター、ウィザード、ヒーラーだった。

三つともRPGならどのゲームにもあるもので、

その説明もありふれたものだった。

エルナ-クはこの三つの職業をベースとして、

レベルが上がると転職が可能なシステムだ。


傭兵団で戦闘を経験しながらレイは将来、

自分がどの職業を選択するかも一緒に考えた。


「どれにしようか」



レイはエルナークの世界観と話に惹かれてゲームを始めたので、

設定関連以外のことについてはほとんどしらないほうだった。 

いや、過去に彼は意識的にそういう情報を避けてきた。

ゲームを楽しめるには先に知りすぎるのはよくないと思ったからだ。


もちろんこのようにゲームの中へ入られてしまうのを事前にわかっていれば、

もっと多様な情報を呼んでいたはずだが。


「やはり戦士がいいよな。ネットでの評判もよかったし、

何といってもプレイしやすいようだしさ」


エルナークは絶妙なバランスと優れたシナリオで賞賛されるゲームであったため、

どのクラスも活躍できると言われるが、

それでも好みはあって、プレイしやすいという面では戦士が一番だった。

短所ならレイの場合、自ら身を動いて戦わなければならないだけに

精神的な負担が大きいということだ。


しかしこれも彼が傭兵団の生活の中で多くの戦闘を経験して慣れてきた。

その上、ゲームの中だからか自分が戦っても

モンスターの命を奪い取るという感じがしなかった。

彼らの体を切ったり刺しても、泥を相手にしたように血も出なく、

内臓が見られることもない。


「それにあまり痛くないしな」


このことが最も重要だった。

彼が如何に保身第一主義で行くとしても、

戦闘をするのでまったくダメージを受けないことはできない。

そしてダメージを受けるとき、現実のように痛いと

如何に戦士がよくても選択するはずがない。

できる限り痛い目を見ず戦える職業にしたほうがいい。


幸いにこのゲームでは相当強く殴られても大して痛くなかった。

ダメージが大きい攻撃であればあるほど衝撃が大きくなるが、

それでも友達同士の軽いいざこざぐらいだった。

それで彼は戦士を選んだ。


‘本当に戦士になりますか?’という文面が浮び上がった。


彼ははいを選んだ。

すると


‘おめでとうございます!戦士になりました。

 色んな基礎能力分のボーナスを受けられました。

 そして、戦士のスキルを習得できるようになりました。’


という文が浮び上がった。

レイが画面を見ると力と体力、敏捷性が3ずつ上がって、

それぞれ13になっていた。


「うわ、HPがすげー上がったな」


ステータス窓には本来110だったHPヒット ポイントが、

今は143になっていた。

体力が増えたおかげでHPが増えたためだ。

エルナ-クのHPは体力にレベルをかけた数値だ。

体力はその他にも毒に対する抵抗力、持久力をはじめとする

様々な現象に影響を及ぼす能力値である。


もちろん体力以外の能力値もいろんなことに影響をもたらす。

それで特定のスキルを習う時や装備を着るために

一定以上の数値を要求することもある。

彼は体が軽くなったのを感じていた。力と体力が上がったおかげだった。


「あまり増えないのは残念だがな…」


レイは舌なめずりをした。

基礎能力値はキャラクターの強さを決める大事な要素の中の一つだが、

そのためか初期設定値とほとんど変化がなかった。

彼のレベルが10になる時まで全く成長しないままで、

戦士になる時もちょっと増えたのがすべてだった。

それでレベルが上がっても強くなったことを実感できなかった。


ただHPとMPマジック ポイントが増えて、

命中、防御力が上がったぐらいだった。

もちろんそれだけでも前よりは強くなったが、

思ったよりはるかに厳しいゲームと感じられた。

彼は絶妙なバランスだと聞いたが、

難易度がとても高いという話は聞いたことがなかった。


「レベル上がってもあまり能力値は変わらないし、何か見逃したのがあるのかな」


ゲームの中のイベントで成長するシステムなのかなと期待するしかなかった。


「よし。次はスキルだ」


物足りなさを後にして彼は次の作業へ移った。

戦士になってスキルを一つ選択することができるようになった。

大きく分けてアクティブとパッシブの二つの種類があるが、それぞれ一つずつだ。

アクティブは必要な瞬間に自ら選択して使う、必殺技みたいなスキルで、

パッシブは常に適用される一種の特技に近いスキルだった。


戦士は今の段階ではアクティブで二段攻撃、硬直、

パッシブで看破、体力鍛練、慎重さの中の一つを選ぶことができる。

二段攻撃は言葉どおり一定スキル SPポイントを消耗して

二回敵を攻撃することで、

硬直は攻撃時の敵の動きを一時的に止らせることだった。


「やっぱ、アクティブは硬直がいいよな。

対応時間が上がると色んな敵を相手することができるから。パッシブは…」


レイはしばらく考えた。

看破は敵やNPCに対する簡略な情報を得ることができるスキルで、

シェールも持っていた。

このスキルのレベルが上がると敵のポケットの中までわかるようになるという。

しかし、攻略本やサイトのせいか実際には人気がない。


それに比べて体力鍛練は言葉どおり力と体力に

ボーナス ポイントを付与するスキルで、

基礎能力値を上げにくいことを考慮するとかなりいいスキルだ。

最後に慎重さは命中と回避はもちろん様々な行動判定に

ボーナスを付与するスキルだ。

三つともほしいが、残念ながらプレイヤーは一つだけ選べる。

眉間にしわを寄せていた彼は、ついに決心して首を縦に振った。


「看破にしよう」


敵とNPCに対する情報を簡単に得ることができる現実では、

看破はもちろん多いに役に立たない能力だ。

しかし、ここではそのような情報を得る方法がないので、

情報を簡単に得るためにはやはり看破が重要だった。


レイが看破を選ぶとすぐにパッシブ スキル窓に看破が浮かび上がって、

スキル選択窓が閉じられた。

アクティブもパッシブも一度に活性化できるのは数が決めているので、

成長と一緒にこのスキル窓を増やせるのは

ユーザーが強くなるために大変重要な要素だと

彼は以前、攻略サイトで見たことがある。


「課金した人も多いよな」


スキル窓を増やす方法は色々あるが、その中で一番簡単なのは課金をして、

スキル窓増加アイテムを購入することだ。

かなり高いが、レベル制限を解くアイテムと共に非常に人気がある。


「お金はちょっとあるが、今すぐ使うのは…」


レイはそうつぶやいた。

ここで彼がいうお金とは、エルナークの貨幣を意味するのではない。

現実のお金を意味する。


一分オーバー。しくしく。

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