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別れ

ジャイアンツウルフが死んだのを確認したシェールは剣を回収しながら叫んだ。


「みんな、ご苦労だった」

「団長もお疲れさまでした」


団員も歓声を上げながら団長とともにキャンプへ戻った。

キャンプ地は森で遠くない草地にあった。

そこでレイは食事をした後、近くの岩に座って休憩を取った。


「ふあ…」


自ずとため息が出てきた。思ったより難しい戦闘だった。

危ないというよりは、神経を削る戦いだった。

ゲームでやる戦いと違い、

本当に身を動かして敵を打たなければならなくて、敵の攻撃を受けるから。


「よし、ちょっと見てみよう」


レイはステータス窓を浮かばせた。


名前 ツルギ レイ

レベル 11 (限界50)

知能 11

体力 10

力 9

敏捷性 10

カリスマ 10


ステータス窓にはそのような情報が書かれていた。

レイはそれを見て苦笑いをした。


「何といえばいいだろう…」


今、自分があるところがゲームの中ということを受け入れたが、

それでもこの状態窓を見てレベルが上がったという事実を確認するたび、

奇妙な気分になるのは仕方ないことだった。


「とにかくもう11になったな」


レベルが上がったのを確認したレイはその場から立った。

本来、傭兵団の加入は最下級クエストに属することで

多くのユーザーはクエストをクリアした後はしない。

かかる時間に比べて補償が少ないのが理由であった。


しかし、レイは自分がゲームの中に入ってしまったという事実を知った時、

当惑感の中で最初に浮び上がったのがまさに傭兵団だった。

レイもこのクエストが役に立たないという話を聞いてないわけではないが、

どうしようもない事だった。


戦闘に慣れるべきと思うからだ。

そうでなければこの世界で生きていくことは難しい。

現実でもレイはただの学生であるだけ、

特別な技術や知識のようなものはなかった。

あるとしてもここは現実ではない。


そんなことがどれくらい通用されるかは分からないことだった。

傭兵団加入はこの点でとても良かった。

何より安全にレベルを上げることができた。


仲間があるという点もそうであり、

戦闘に勝利したら経験分を若干ではあるが配分されることができるためだ。

おかげで下級要員として始めたレイは、着実に戦闘の経験を積んで、

今、こうして傭兵団の中間幹部まで成長することができた。


その上、戦闘をすることになれば給料も受けることができて、

この世界に対する情報も少なからず習得することができた。

これは多いに役に立った。


「別れる時が来たな」


しかし、それももう終える時間だ。

初めから心の中でレベル11になる時までここへいることに決めていたし、

実際の戦闘にももう十分馴染むようになったかと思ったためだ。

この奇妙な世界で本当に自らの冒険を始めなければならない時になった。


レイが団長のテントの中へ入って、

傭兵団を去るという意思を明らかにすると

団長のシェールは寂しい表情で反問した。


「ここを去ると?」

「はい。今までありがとうございました」

「うむ、君ならいつか私の後任を任せられると思ったが…」

「高く評価してくださったことは感謝いたしますが、

 すべき事がありますので」


レイも惜しく笑って彼の話を受けた。

実はレイは傭兵団へ入ってシェールをNPCとして見下していた。

しかし、交流が続きながら彼がたとえNPCだとしても

自分と同じ人として接するしかないと感じた。

彼の感情表現と知識はそれだけ豊富で人と違うところがなかった。


実はシェールだけではなかった。

傭兵団でレイがその間、会って交流した多くのNPCたちはみんな同じだった。

人と人ではないのを分ける基準は極めて哲学的で難しい問題だが、

少なくともレイは自分が接しながら人だと感じてしまった彼らに対して、

人ではないと思って接することは出来なかった。


シェールはレイを見て惜しいようにため息をしては、

すでに準備されていた小さい財布一つを取り出して、彼に差し出した。


「なら仕方あるまい。これは今まで分さ」

「ありがとうございます」


レイが受けた物を中に入れた。財布は直ちに消えた。

インベントリへ吸収されたのだ。

保管できる物にいくつかの制約があって、物の重さ自体は消えないけど、

体積を軽減するということだけでも途方もない特権だ。

ところがシェールがレイをより少し驚いた表情で見て聞いた。


「ところで君、またレベルが上がったか?」

「あ、どういうわけかそうなりましたね」


恥ずかしげに笑いながらレイはその言葉に肯定した。

シェールは傭兵団の団長として‘看破’という特技を有していて、

この能力を持った人は相手の能力を大体調べることができる。

レイももちろん今後の成長方式によって学べるスキルで、

その他に特別なイベントなどでも得られるスキルだ。


しかし、レイが知っているかぎり人気がないスキルだった。

このゲームに対する攻略情報は広く共有されたためだ。


「すごいな。君のように速いスピードでレベルが上がる人を見たことがない」

「いや。団長より弱いですよ」


レイが知っているには団長のレベルは20だ。

人として20レベルならすごい戦士だ。

普通の人は5レベルを超えにくく、

10レベルになると精鋭兵と呼ばれるにふさわしい水準だ。

そんな精鋭兵十人ぐらい集まってこそ、20レベルの戦士が一人出るかどうか。

シェールはぷっと笑った。


「私はこれで十年やってきたからさ。

 けど、君は1レベルでわが傭兵団で仕事を始めたのではないか」

「そうだったんですね」

「普通の人々は自分のレベル限界を知らずに死ぬが、

 君ならばいくらなのか分かるようになるかも知れないな」

「ならいいですがね」


シェールが頭をいやいや振ってする言葉にレイは上の空で答えた。

実はレイは自分のレベル限界が50というものを知っている。

コンテンツの過度な消耗を防ぐために強すぎるようになるのを

防いでおいたためだ。

それは失敗したが!


ところがゲームの中の人々は自分のレベルは知っているが、

レベル限界は知らないようだった。

それはその限界に到達したり魔法的な手段で調べるしかないという。

言ってみれば一種の才能だ。

それで自分の限界レベルに到達できないまま、

限界レベルを知っているのは非常に特殊なことだった。

それで一応レイもそれに合わせて答えていた。


「じゃ、元気でな」

「団長もお元気で」


レイはその言葉を交わしながら握手した後、

荷物をまとめて傭兵団キャンプを去った。

近くの都心に入り込む町角で風を浴びながらレイはつぶやいた。


「これからどうしよう…」


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