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壱 ~死んだ体と生きた体の裏表~
人が死んでいる。
いや、死んでいるかはわからないが。
こんなところで、雨の中。うつ伏せになって倒れるなんて、浮浪者でもしない。
否、死んでいるのだ。
普通、死んだ人を見たらどうすればいい?
叫ぶ?
誰かが気付くかもしれない。
こんな、雨の中でも。大きい声出せば。
路地裏でも大丈夫だろう。
大きい声出して。
助けを求める?
待て待て。自分が殺したって思われる可能性もある。
警察にたくさんの問答を受ける。
そんな、めんどうなこと。嫌だ。それ以前に、疑われる。
逃げる?
それが最善策かもしれない。
自分は全く関係がないのだ。全く。
全く・・・。
・・・あれ?
どうしてだろう。悲観と同時に、歓喜がこみ上げているような気がする。
この人を知っている?
なんだか頭が痛くなってきたな。
少し、笑えて来たよ。
「なーにしてるんだろ」
自分はその場を後にする。
死体に背を向けて、歩き出す。
あぁ、冷たいな。雨が。
少し寒くなってきた。
肩が震える。
それは寒さによって、震えているのか。
それは笑いによって、震えているのか。
自分でもよくわからなかった。
本当によくわからなかった。
泣いているような気もする。
涙さえも、雨と一緒に消えて行った。




