零 ~死んだ体と死んだ体の表示~
人が死んでいる。
いや、死んでいるかはわからないが。
こんなところで、雨の中。うつ伏せになって倒れるなんて、浮浪者でもしない。
否、死んでいるのだ。
普通、死んだ人を見たらどうすればいい?
叫ぶ?
誰かが気付くかもしれない。
こんな、雨の中でも。大きい声出せば。
路地裏でも大丈夫だろう。
大きい声出して。
助けを求める?
待て待て。自分が殺したって思われる可能性もある。
警察にたくさんの問答を受ける。
そんな、めんどうなこと。嫌だ。それ以前に、疑われる。
逃げる?
それが最善策かもしれない。
自分は全く関係がないのだ。全く。
全く・・・。
・・・あれ?
どうしてだろう。悲観と同時に、歓喜がこみ上げているような気がする。
この人を知っている?
なんだか頭が痛くなってきたな。
少し、笑えて来たよ。
「なーにしてるんだろ」
私が彼女を撃ったんじゃないか。
何、脳内で現実逃避しちゃってんのさ。
こうやって、偽善者気取りするのも面白いもんだね。
ほんと。笑えちゃう。
「ははっ・・はははは・・!」
全ては仕組まれていたんだよ。
彼は、私を撃つように仕向けて。
彼女は、彼を撃つように仕向けて。
私は、彼女を撃てばいいだけ。
この時をどれだけ待ち望んだか。
「普通の人間に戻ることなんて、出来るわけないじゃん。てか、できたとしても無理無理。」
あんたの唯一の友達だなんて。怖い怖い。
「あんたが、私の親友を殺したんだ。」
彼女は自殺したけど。あんなの、あんたが悪いんだ。あんたが、彼女に・・!
あんなこと言ったから悪いんだ。
だから、彼女は自殺したんだ。
憎い。ずっと、憎んでた。全く反省の色も見せないで。
私とは、離れないよとか言って。
「あんたが、私の親友を殺したんだ!!!」
死んだ体に吐き捨てる。もう死んでいるんだ、これで少しは反省したかな。
あ、死んだら反省できないか。
薄ら笑みを浮かべながら、死んだ体を飛び越える。
「・・・君にはお世話になったね。」
優秀に働いてくれたよ。
でも、君は優しいね。やっぱり。人を殺すことなんてできない人だよ。
殺し屋をやってるっていっても。君が殺したのはひとりもいないもんね。
だって、全部。脅しただけで、事故で終わってる。
運がいいのか、悪いのか。
引き金が引けないのは、毎度のことだったよね。
「まぁ、引けないと思ったけど、今回は特別だったからね。もしものことがあるかもしれないでしょ?」
だから、メールに書かせてもらったよ。
“彼女のすべて”をね。
信じたのか、信じなかったのか。信じられなかったのか。私にはわからないけど。
でも最後はきっと、私たちの偽物の友情を信じて、撃たなかったんだろうね。
優しいよ、君は。君も、偽物の友情を彼女と過ごし、偽物の愛を育んでたんだから。
残酷だね。最悪の生涯だったろうね。
でもちゃんと私には、聞こえてたよ。あ、いや。口元を見てだけど。
なんで・・でも、そっか。ってね。
信じきれてなかったけど、最後は信じたんだね。彼女を。
私はその場を後にする。
死体に背を向けて、歩き出す。
あぁ、冷たいな。雨が。
少し寒くなってきた。
肩が震える。
でも・・なんだろこれ。
それは寒さによって、震えているのか。
それは笑いによって、震えているのか。
自分でもよくわからなかった。
本当によくわからなかった。
自分に苛立った。
泣いているような気もするから。
「な、な、なんでだろうね・・悲しい・・気も・・なんて。」
挙動不審キャラも疲れたわ。
涙さえも、雨と一緒に消えて行った。
「冷たい雨に撃たれた弾丸」は自分の書く「小説短編集UF:Project」のひとつです。
((Unseasonable Flower Project =季節はずれの花))
このエピローグは、この短編集のどこかにつながります。
「冷たい雨に撃たれた弾丸」は零で完結です。ありがとうございました。




