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Gate to another world  作者: 西木 和慶(※元・桜坂 だんご
異世界での日々~another days~
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第三章:異世界・ワグナルフ

第三章:異世界・ワグナルフ


「ごちそうさまでした!」

満面の笑顔でメイドに食器を手渡す。

「はい。お粗末様です。では、クローゼットに着替えを用意していますので、着替

えてください。手伝いが必要なら、あと数名、メイドを呼んで来ますよ?」

笑顔でなんて言うことを言ってるんだ……。

苦笑いしながら断る。

「あっ、いえ。大丈夫です。それより、色々聞きたい事があるんですけど」

ずっと言おうとしていた事を言う。

食事の間も食べるのに夢中で忘れてたけど、やっぱ聞いといた方がいいよね。

「申し訳ありませんが、そういうのは、これから姫様に聞いてください。その方が

たぶん色々な事がわかると思います」

空が目に見えて落ち込んだのを見て、慌てて謝る。

「ほ、本当に申し訳ありません!ですが、もう少しで時間なので、着替えてもらえ

ますか?」

メイドが本当に申し訳なさそうなのを見て、空は笑って「はい。今着替えます」

と言って、メイドが部屋を出たのを確認した後、うながされた通りに服を着替える。

なんか、普通にくつろいじゃってるけど、いいのかな。

用意されていた新品の靴に履き替えながら思う。

ここがどこかもわかってないし、あの日の事も色々聞きたいし。あ、それに、ご飯

や、この服とかのお礼も言わなきゃな。

「よろしいですか?では、参りましょう」

率先してスタスタ歩いていくメイドを追いかけていく。

長い廊下をしばらく歩いたところでメイドが足を止める。

その場でメイドが空に念を押す。

「くれぐれも姫様に失礼の無いようにしてくださいね」

緊張した顔で答える。

「あっ、はい。わかった」

空の顔を見て、メイドがクスッと笑う。

「姫様!失礼します。騎士様を連れて参りました」

メイドがドアを開く。

広い書斎らしき部屋には、ピンク色の髪をした女の子が椅子に腰をかけていた。


「朝からお呼び出しなんて、失礼かと思ったのですけれど、色々お話したいことも

ありますし、騎士様も色々聞きたいことがあると思いまして」

姫が少し頭を下げて話しかけてくる。「あ、どうぞ。そこの椅子にでもかけてくだ

さい」などと、平然と話す女の子を見て思う。

な、なんでこんなキンチョーするんだろ。

カクカクとした動きで指示された椅子に座る。

空が椅子に座ったのを確認して、メイドにりんとした声で指示を出す。

「シエル。紅茶を用意してもらえますか。その後は下がってもらって構いません。

後でお願いがあるので、その時にまたお呼びします」

メイド、シエルもちゃんとした表情で返事をして、お茶を取りに向かう。

「いい天気ですね」などの簡単な挨拶に、空が適当に返事をする内に、シエルが

ノックをして入ってきて、お茶の準備をして、すぐに部屋から出て行こうとする。

さっきまでとは全然違うや。すごいな。

仕事の速さに、のんびり感心している空にシエルが微笑む。

ドアが閉まった途端に、姫がタメ息をつく。

「あ、すいません。気が抜けちゃいました」

疲れた表情だったが、それでも空に笑顔を向ける。

ここはどこなんですか?

空が口を開こうとしたのを手で制して、姫が自ら説明を始める。

「あ、まず色々説明しないとですね。とりあえず、自己紹介をさせてください。

私の名前は、‘ローザ・ロリンズ・ユグナルド’と申します。

一応このユグナルド王国の王になります。つい半年程前に前王の父が亡くなりまし

て、一人娘の私があとを継ぐことに……って、こんな話どうでもいいですね」

空が、驚きの表情から苦笑いに変わった事に気がついたのか、話を途中で止める。

「いや、その。できればまた今度聞かせてください」

さすがに失礼だと思った空が言い訳を考え、口にする。

「わかりました。では、今、貴方あなたがどのような状況に置かれているかですね。今、

貴方がいるこの場所は、騎士様から見たら、“異世界”といった場所です」

そこで、もちろん声に出さずにはいれず、「えぇ~~!?」と大声を出す。

空の絶叫をさらりと避けて続ける。

「はい。気持ちはわかります。そちらの世界では、“門”について知る者は、ほと

んどいないと聞いていますから。え~と、続けますよ?大丈夫ですか?

この世界、“ワグナルフ”は、おそらく、そちらの世界とは色々と異なる事がある

でしょう。なにせ異世界ですし」

空は、姫、ローザが言っている事に絶句する。

異世界?ワグ、ナルフ?なんだそれ・・・。

「何故、騎士様をこちらにお呼びしたか、という事は、少し長くなります。

私が治めているこの国では、最近、隣国のスウォードとの争いが絶えず、度々たびたび両国りょうこくの間で戦争が行われています。ですが、両国の力量はほぼ互角。

その為、物品、食料の不足などが心配されています。この状況をどうにか良い方向

に向ける為には、わが国の勝利という方法しかありません。

ですから、わが国に古くから伝わる“キシヲショウカンスル法”を使い、騎士様、

貴方を、私の・・・じゃなくて、この国の騎士として、お呼びしました!

どうか、わが国に力を貸してもらえませんか!」

古い本を見せながら長々と説明するローザだが、空はいまいち理解できない。

頭の中で、言われたこと事を数回繰り返して考える。


騎士、異世界、門、国のピンチ、姫様。冷静に考えれば、どう考えても夢なんだけ

ど。この女の子が嘘を言ってるようにも見えないし。良くしてもらってるし。


自分の考えを完成させる為に、ローザに空がいくつか尋ねる。

「あの、戦争って、剣や銃で人を殺していくようなもの、ですよね?」

空の質問を聞いて驚いたように姫が声を上げる。

「とんでもありません!ここで行われる戦争では、人は傷ついたりしません。ちゃ

んとした仕組みがあるんです」

人が死なない?それが本当なら。ううん。本当なはずだ。ここまでありえないよう

なことがあるんだから。それに、嘘だったなら断ればいい。

そうとう矛盾した考えだが、どんどん答えを肉付けしていく。

「あの、でも僕は普通の中学生なんだけど、何かできる事が?」

とっさに自分の身分を思い出す。

「そんな、ご謙遜けんそんなど。騎士様が剣の使い手で、お強いのは知っていますよ!」

だんだんいい返事を期待できることを察したのか、興奮した様子で言う。

知っている?まあいいや。信用できそうだし。

ローザの目を真っ直ぐに見て、「そういうことなら!」と前置きをする。

「ローザ姫様!こんな僕で良ければ、手を貸させてください!」

空が言ったことを聞いて途端に、ローザが空の手を取って、急に身を寄せてくる。

眼がキラキラ輝いていた。

「本当ですか!ありがとうございます!貴方なら、騎士様なら、きっとそう言って

くれると思っていました!!」

ローザが手元に置いてあった鈴を思い切り鳴らす。

そうしてからほんの数秒後にシエルがノックをして部屋に入ってくる。

「どうしましたか。姫様!」

鈴の鳴らし方で、何か大事が起こったと思ったのだろう。息が少し上がっていた。

待ちきれないと言わんばかりに、ローザがシエルに抱きつく。

「シエル、やりました!騎士様が前向きに考えてくれるそうです!今すぐ、ファイ

ンとイニ、ルージュを呼んできてください!」

ローザのあまりの喜び様に、驚きを隠せないまま、「は、はい!早急に」と言っ

て部屋を駆け出して行ってしまう。

姫様が真っ赤な顔をして空に満面の笑顔を見せる。

その笑顔に、空も笑顔を返す。


い、異世界!?僕は気がついたらそんな事に巻き込まれてたの~!??

でも、思ったより良い所みたいだな。よしっ!


次話 第四章:よろしくお願いします!



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