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Kokoro  作者: Senon
5/5

暗黒童話書 (5)

「えっ?」シオンが驚いた瞬間、室内でドスン!と床に何かが叩きつけられる音! 心配のあまりドアを勢いよく押し開け、「お父様、大丈──」


「…夫」という言葉が喉で潰れた。眼前の光景に声帯が凍りつく!


 ベッドには父が横たわり、消えていたガノンが今同じ布団に潜んでいた!


 ガノンの上半身は裸で、白磁のような肩を父の手に鷲づかみにされている。物音に二人が振り返り、シオンを射すくめる──


 な…何これ?ガノンと父が…?

 頭がぐらりと揺れ、思考が空白に。シオンは無言でくるりと背を向け、よろめきながら寝室へ逃げ戻るとドアに鍵をかけた。


 えっっっ…?これは…一体…


 シオンは急いでベッドに飛び乗り、布団をギュッと頭までかぶった。これも夢? きっと悪夢の続き…


 っとそう思った瞬間、何かが布団の裾を引っ張る! 布団がずり落ち、顔が露出しそうになる!


「ガノン? 違う…鍵をかけたはず! 鍵は部屋の中、使用人を解雇してから予備鍵を持つ者などいない! 窓? 窓も閉まっている! じゃあ…これは…何?」


 恐怖が沸騰するシオンは、布団をぎゅっと掴み、引っ張る“何か”との抵抗を開始する。


 絶対に布団から頭を出すな!相手が人間か何かさえ分からないが、顔を合わせるのが死ぬほど怖かった!


 そして、その引っ張る力がなんかどんどん弱まり、“あれ”は動きを止めた。シオンは素早く丸くなり、布団を体に密着させた。


 寝ればいい…明け方になれば全て解決する


 そう願いながら目を閉じた刹那――


 足先から這い上がる氷のような感触を感知した!


 そして足首へ、膝へ、太ももへ…


 まるで冷たい手が肌を撫でるように。だが…この凍えるような触感は、生者のものとは思えぬ!


 シオンの目から涙が溢れたが、声も出せず、目を開ける勇気もない。ただ狂ったように両足を蹴り続け、布団の中の冷たい手を腿から追い払おうとする。30秒ほど蹴り続けたか、ついに感触が消えた!


 シオンは再び脚を折り曲げ、強く目を閉じた。


 夢なら早く覚めて。現実なら早く眠りに落ちて!


 心の中で祈るように念じる。


 その瞬間──


 耳元で、あまりに近い耳元で、懐かしい女の声が響いた。


「お母さんだ」


「あっ…!」シオンは布団の中で目を見開いて、目前に、異様に近い距離にのはガノンの顔!


 どうやって部屋に...布団の中まで?


 その顔から視線を下へ滑らせると——


 首から下が消えた!切断面からどす黒い血がシーツに滲み出ている!!


「ぎゃああああ!!!」


 シオンは恐怖の叫びをあげると、布団を蹴り飛ばした――窓の外にはまぶしい朝の光が!シオンは慌ててベッドからごろりと転がり落ち、カーテンをばっ!と引き開けた!


 ベッドには誰もおらず、血痕もない。布団をめくっても、裏返しても、何も。シオンは跪いて、震える手でベッドの下を探るが、そこにも何もない。


 まさか…あれも…全て夢だったのか…


 そうだ!ガノンは?


 外套を掴むと、寝室を飛び出した。


 一階の広間で、長いソファーに少年がくっきりと丸まっている。シオンはほっと胸を撫で下ろし、階段を降りる。ガノンはぐっすり眠り込んでいた。


 あれ? 普段は早起きなのに…明るいリビングでこの時間まで?昨夜、何かあったに違いない——だとしたら、父の部屋であの姿を見たのは…現実だったの?


 シオンは現実と悪夢の区別がつかなくなり、父親には聞けないが、彼を問い詰める勇気はあった。勢いよく彼の頭の下のクッションをひったくる。


 少年は突然の物音で飛び起き、目をこすりながら、ぼんやりとした曇った表情でシオンを見上げた。


「昨夜、どこに行ってたの?」


「私…昨夜?」ガノンは眉をひそめ、シオンの険しい表情を一瞥すると恐る恐る答えた。


「午前3時24分、廊下の物音で目が覚めたんだ。君がいないからトイレに行ったかと思って…真っ暗な中で怖がってるか、躓かないか心配で、廊下に出た」


「すると君がお父様の寝室の前で立って、こっちを見ていた。迎えに行こうとしたら、君が歩いてきて…何かぶつぶつ呟きながら」


「すぐ目の前まで来た途端、君は崩れ落ちたから、ベッドまでお支えしました。そのままトイレに行き、戻ったら…なんかドアに鍵が」


「そっとノックしたけど返事がなく、仕方なくソファーで朝を待ったんだ」


「つまり…私?夜中に起きて父の寝室のドアの前まで歩いて行って?じゃあ…じゃあ私はドアを開けたの?」


「いええ、見かけた時は、君はただじっとドアの前で立ち尽くして床を見つめていたんだ。それからふと僕に気づいて、こっちを振り向いたよ」


「さっき私が君の方へ歩いて行って、何かぶつぶつ言ってたって言ったよね? 私は君に何て言ったんだ?」


「どうやら……」ガノンは言いにくそうに俯くように視線を外し、声がかすかに震えた。「『母様』って……」


 ドキンッ! その言葉を聞いた瞬間、詩音の鼓動が一瞬止まった! まさか…だって、あれは自分の見た悪夢のはずなのに…まさかあれも現実だったの? 本当に寝室を出て、そして見えたのはガノンじゃなく…母様だった…!?


(つづく)

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