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第9話 俺、媚びを売る


 アレから俺はジイサンが宣言した通りマルと同じ馬房で寝起きすることになった、その馬房は元々マルとその母馬が使っていたとマルに聞いたわけだがなぜ俺と母ちゃんの方じゃなかったのか、こんなプリティーベイビーが母恋しさに鳴いたら胸が痛くなるだろ?クソマイペース野郎より繊細そうだろ?誠に遺憾である。

 唐突な別れに言いたいことはたくさんあったし実際ジイサンには言ったが今や親友といっても過言ではないマルと一緒なので寂しさはそれほど感じなかった、離乳した仔馬の母を求める夜鳴きもしてないしな!もっとも俺の記憶にある限りなので無意識にしていた場合はわからない。


 俺とマルが離乳してすぐ俺たちの放牧地に見知らぬ牝馬が混ざった、穏やかでおひさまみたいな馬だなーとか思っていたら皆に馴染んでそう経たず今度はモモとシロの母馬が仔馬を置いて連れて行かれた、モモとシロは俺とマルのように一緒に寝るということもあまりなく起きている時に引き離されたので両方とも悲痛な感じだったな姉ちゃんの気持ちがちょびっとわかった俺である。

 母馬たちがいなくなっても新しく混ざった牝馬がいなくなることはなくアレコレと俺たちを気にかけてくれるのできっと保母さん的な役割をしてる馬なのだろう、離乳はしかたないことであるし人間たちとしてもなるべく俺たちにストレスをかけないように考えて行っているのだとわかる、まあ寝起きビックリはアレで最後にしてほしいけどな!


 そんなわけで今日も俺はモモとシロとパッパカ駆けまわってるしマルはグースカ寝ている。


 「ハナー、こっちこーい」


 『なんだよジイサンついにプリティーベイビーな俺果物デビューか?』


 ジイサンの声ってなぜか聞こえやすいんだよな思わず耳がぴくついちゃうぜ、お呼びとあればササッと参上する俺焦らしたりはしないなぜならなにかいいものがあるかもしれないから。

 今日に限ってはいいものではなくなんかジイサンの隣に小奇麗なオッチャンがいるが。


 『見慣れないオッチャンじゃん、誰だよジイサン』


 「この子がパトラの……?」


 「ええ、胎の中の子を覗いたら末っ子で自分らはハナって呼んでます」


 「ハナ」


 「ほら、額の星が花びらみたいでしょう」


 「これは……確かに、そうかお前ハナって言うのか」


 呼んだにもかかわらず珍しくこっちに構うことなくオッチャンと話すジイサンに不満を訴えるために頭を柵越しに向けると宥めるように鼻面から唇をむにむにされる、片手間で俺に構うなんてジイサンの癖に生意気な!でも喜んじゃう!

 しっかし本当なんなんだこのオッチャン……待てよ、牧場に小奇麗な格好で来るジイサンとそれなりに親し気な人物、もしかして馬主もしくはその関係者では!?


 『なあなあジイサンこのオッチャン馬主?馬主?』


 「血統と動きは事前に渡してる資料通りで、普段と言えばハナはなつこくて、さっきみたいに呼んだらすぐ来ますしこうしてスキンシップもねだってくるんですよ」


 「それ田中さんだからじゃないの?」


 『そのアピール馬主か!馬主だな!どーもー、ハナですう、ほらかわいくない?触っていいよ?』


 ジイサンの魅惑の手から離れて顔をオッチャンの方へ、ついでに耳も向けてぴるぴる、プリティーベイビーな俺思わず撫でたくなっちゃうだろ?


 「ほら今度はそっちにおねだりだ」


 「本当になつっこいなあ」


 オッチャンが手を伸ばして鼻に近付けられると思わずブフブフ嗅いじゃう、なんなら自分から唇ではむはむだってしちゃう、ジイサンが薦めてる相手ならきっとこのオッチャンは馬主として優良なんだと思う、だから俺は全力で媚を売るぜ!


 『はむ、ほれほれ、はむ、手離せなくなっちゃうでしょ』


 「いやー、これは愛らしい」

 

 「ハッハッハ気に入られましたねえ」


 だろ?俺って稀に見るプリティーベイビーだからさ、その上きっと、いや絶対走るからな!お買い得だと思うぜ?値段知らんけど、セールの配信は見たことあるけどこういう直接やり取りする庭先取引ってどんなものなんだろうな、人間だったころは別世界過ぎて想像もできないぜ。

 ただ話を持って行っている以上十分な資金力はあるだろうオッチャンに撫でられながら耳を横へ倒すきもちいいアピールにも余念がない俺、いや実際なかなか、ジイサンは手練れだがオッチャンもなかなかのテクニシャンだな。


 「おやそっちの子は」


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