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第67話 俺、許せない


 「えー……いやいやいや、ティトゥスお前何やっちゃってんの、これ引退レースよ?えー……これ俺ぇ?」


 同じタイミングでゴールへと到着した俺とティトゥスはそのまま併走しながら減速して行く。

 その最中ティトゥスの背に乗る騎手がいかにも脱力したといった声でティトゥスに語り掛ける、その気持ち痛いほどわかるぜ……。


 「竹川さんなにも悪くない、オーナーもきっとわかってくれるです」


 同じ気持ちなのかロメロが俺の体を操りティトゥスとの距離を詰めてそう鞍上に声を掛ける。


 そうか、これはティトゥスの引退レース、馬主としては何としても勝って欲しいところだったろうしいくらこのアホがバカしたと言っても鞍上へ責任の追及が向かっても可笑しくない。

 ロメロが言う通り竹川さんとやらは悪くないし馬主はなんとか納得して欲しいものだ、全てはクソマイペース野郎3号が悪いんだからな。


 ところで俺、今、とても、怒ってます。


 『オイ』


 ブフン


 …………。


 『オイ、聞こえてんだろ』


 ブフフン


 ………………。


 『今なら許す余地は残してやる無視するんじゃねぇよ!』


 ブヒヒィーン


 『……なんだ』


 『なんだじゃねぇよわかってんだろ』


 『…………悪かった』


 『謝って欲しいわけじゃないんだよ、なんであんなアホしたかって聞きたいんだよこっちは!!!』


 バチバチにキレてティトゥスに詰め寄る俺。


 当たり前だろ、なぜならこのレース本来の勝者はティトゥスだ。

 ソテとの同着で実質俺が負けを感じた時とは違う、完全に、絶対に、ティトゥスが頭を下げたままゴールしていたら俺は2着だった。


 勝ちを譲られたも同然の行為。

 俺は1着が好きだ、負けるのは嫌いだ、だがこれは違う、こんな勝利は認められないし認めたくない。


 『答えろティトゥス、なんであんなアホしたんだよ』


 『アホじゃない』


 『そこはどうでもいいだろ!答えろ!!!』


 『……俺は今回が最後のレースだ』


 『そうだな、本来なら有終の美で飾られるはずだったな!!!!!』


 『ハナと走るのも最後になる……』


 『アァ?だから?』


 『お前の走ってる姿を、顔を、しっかりと見たかった……もう見られないかもしれないから』


 ……。


 …………。


 キュンです!


 とはならねえからな!?


 『は!?お前、本当にそれだけで!?!??』


 『それだけじゃない、俺にとっては重要なことだ!』


 『だからってお前、お前!』


 『大切、なんだ……』


 『そもそもお前勝って俺を嫁に貰うとか言ってなかったか!?』


 『あ』


 『あ、って忘れてんじゃねぇかこのアホ!』


 『いや、でも、ハナわかるだろ、俺の方が強かった!』


 『ハアアアアア!?知りませーん、俺が勝ったからそんな話は無しだ無し!そもそも了承した覚えもないけどな!俺が優勝馬、負け馬はさっさと帰れ!!!!』


 『ハナ!』


 『ケッ!!!!!!!!!』


 ブヒュン


 ティトゥスを前に荒れ狂う俺、といってもロメロを背中に乗せた状態で暴れ出しはしないが、心理的な意味で。


 ソテは端から敗者となっていたからか早々に撤退していた、俺の荒ぶりを感じ取って逃げた可能性もある。

 ティトゥスからアホみたいな答えを得た俺は引き留めようとするティトゥスを置き去りにロメロと再びターフを走る、あのアホは鞍上の人間がなんとかしてくれるだろう、勝ち馬である俺は忙しいんだ構ってられるか。


 あー、苛々する、勝ったのにこんな気持ちになるの初めてだ……そしてこれが最初で最後であってほしいと心底思う、ティトゥスのアホめ絶対許さないからな。

 俺の精神状態を感じ取っているのか、まあ俺ってわかりやすいみたいだしティトゥスとあんなにやり合ってたら当然気付くか、ロメロは俺の首を撫でて来る。


 全く勝ったという気分ではないし優勝馬ですと胸を張れるようなレース内容ではなくなってしまった気もするが記録上では勝ち、症状を無事克服して元気に走った俺はひょろさんを始め皆にたくさん褒められてもいいと思う。


 口取り式もあるからオッチャンとヒナちゃんにもいっぱい褒められていいと思う。


 俺は今癒しという名のお褒めが必要です!


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