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おは競走馬 ~走れ俺、いやマジガチで死ぬ気で走れ大事なものを守るため!~  作者: noy


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第65話 俺、ふたりの道中


 ゲートへ大人しく収まった俺だが1枠1番ということもあり早々発走とならないのは当然、にしても時間が掛かってるような……?

 ゲート内に居るし隣に入った馬が大人しくできないタイプのようで煩くよくわからないがさてはごねている馬がいるのかもしれない、何歳になっても苦手なものは苦手だよな仕方ない、目隠しINされてその後暴れ出さなければそれでよし。


 ロメロに撫でられながらするのはイメージトレーニング、想像するのはいつだって最強の自分ってやつだな。

 スタートをきちんと決めてハナを取る、それから俺のペースに周りを巻き込んで最後まで逃げ切るんだ、特に注意しないといけないのはティトゥス……新馬戦以来の対戦、いったいどれだけ強くなっているのか。


 「私の美しい華、直に最後の馬が入るよ」


 心地のいい手が離れたと思っていたらロメロが俺にそう語り掛けて来た、イメージから現実へと焦点を変える、最高のレースを再現するための気合はばっちり、よっしゃやるぞ。

 ロメロが姿勢を僅かに変えた瞬間ゲートが開いた、発走後強張るという症状が出てからもこのタイミングだけは外さなかったんだぜ俺は、今日も抜群の出を見せてやる!


 誰よりも速く躍り出た俺は最内枠というアドバンテージを最大限生かすんだ、運を味方にするのも強い馬の条件のひとつってな。

 症状を治すために繰り返したことでより一層磨きのかかった反応、そして今日この日に合わせて鍛え上げた脚力で地を蹴りグンッと前へ。


 『出すのが遅ぇんだよクソガアアアアアアアア!』


 嘶きが聞こえたと同時に遠い観客席の方から悲鳴や雄叫びが上がる、これは発走直後に何かあったな?まあゲートが開くまで時間が掛かったしそういうこともあるだろう、だが俺には関係ない、なにせ俺は最高のスタートを切って既にハナを取り誰より速くターフを駆け出しているからだ。


 強張りの症状もなし!ヨシヨシヨシ!!!


 治ったと大見得を切っていたが実際のところはやはり本番環境とは異なる練習環境で症状が出なかっただけの話、実際レースで走るとなれば症状が出る可能性はあった、それでも俺はひょろさんを信じていたしロメロを信じているから迷いなくゲートから出て走れた、その結果はこれ!


 やっぱり俺って最高のビューティーホース!


 問題なくハナを取ることができた俺は症状が出なかった高揚感もあり気持ちよく先頭を駆ける、今回俺以外の逃げ馬はいない、まあそもそも有馬記念って逃げとは相性がよくないレースって言われてるらしいし。

 そういえば俺は中山競馬場で走るのは何気に初めてだったりする、阪神、東京、京都、中京が今まで走ったことある競馬場だからな。


 そしてこの中山競馬場も癖がある、まあ同じようなコースじゃ展開が似通って見てる方も面白くないからか?まずスタート位置がなんだこれは、有馬記念が2500mということもあるだろうが全体の構造も不思議な感じで……前回走ったのが東京競馬場というのもあるかもしれない、なんだか感覚的にキュッとしてる。


 年末の中山競馬場、有馬記念というレース、俺は競走馬として走る上では何ひとつこの戦場で必要な情報を知らない、だが問題もない、なぜか?それは当然俺にはロメロという相棒が背中に乗っているからだ!

 ひょろさんやロメロたちが話し合い考え出してくれた勝ち筋がきっとある、俺の症状に対処しながら様々な作戦を検討してくれたはずだ、兄ちゃんがポロッとこぼしてたこともあるしな、皆が考えてくれた作戦を俺が信じて走らないでどうするって話なんだよ。


 『今日も頼むぜロメロ!』


 内を走るか外を走るか、芝の具合はどうなっているか、このメインレース前に確認しているロメロが走るべき場所の指示をくれる。

 スタート位置からコース本線に合流する感覚、不思議だ、そこからコーナーを曲がって行きホームストレッチへ、遠くに聞こえた歓声が近づいて来た。


 先頭のまま駆ける俺、同じ逃げ馬はいないが先行馬の集団が塊となって後方を走っている。


 ゴール前の直線その坂を駆け上がると、なるほどこれは中々……スタートしてから走ったコーナー、先で待つコーナー、さらにこの坂を2回登らなければならないとなれば確かに逃げ馬は大変なものがある。


 まあ?一般的な逃げ馬なら、って注釈を付けるけどな!なんせ俺はスタミナ自慢の逃げ馬、いくらこの有馬記念という超一流の馬たちが集うレースでだって負ける気なんて微塵もないんだ。

 坂を上り切った先にあるゴール板を横目に1コーナーへと入って行く、先行馬たちの気配は感じるがそれには開きがありただ1頭で冬の中山を満喫だ……間違えた、ロメロと1頭と1人でだな。


 鞍上のロメロはボディアクションで指示は出しても基本的に静かだ、まあ当たり前といえば当たり前かきっとロメロはその体内時計で俺の走るタイム、ラップをしっかり作戦通りに刻んでいるんだ。

 だから俺はそれが狂わないように出来るだけロメロの指示通りに走る、もちろん遠心力諸々があるから完全にロメロの思い描いたコース取りにはならないだろうがそれでも意識が違えば誤差も変わる。


 2コーナーを超えてバックストレッチに入るころには今度は下り坂、中々負担を駆けて来るコースなことで、真っすぐ続く道、頭上には白い雲……そういえばティトゥスのやつ真っ白になってたな、新馬戦で会った時はまだら模様が特徴的だったがあの時点でアレだから早々に白くなったんだろう今は白馬と見間違えんばかりの馬体だった。


 そういえば俺が人間の子供だったころ葦毛を白馬だと勘違いしていたことがあったな、いやだって白いしパッと見でわからないだろ?まるで白馬ですとばかりに飾り立てられていたら余計に知識のない子供だった俺には見分けがつかなかったんだ。


 なんて余裕の考え事ができるのはどうやらここまで、後ろで走る連中の雰囲気が変わる。


 本当の勝負の始まりだ。


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