第63話 俺、気遣いの馬
『自分が煩いならティトゥスはウザイ!この間振りですお元気ですかハナさん、今日も栗毛が輝いて美しい』
割って入ったと思ったら流れるようにティトゥスと貶し俺を褒めるソテ、お前なんかちょっとキャラ違くない?
『お、おう、ありがとう元気だぜ』
『ソテ……お前ハナと知り合いなのか?』
『ティトゥスこそ……自分とハナさんは一緒にゴールへ入った仲いわば共同作業をした将来を約束『違ぇな!?』……はしてないけど求愛はした仲だ!』
馬面のドヤ顔で語り始めたソテに勢いよく否定を入れる俺、うっかり俺の将来が決まるところだった、まあいくら俺たちの中で話しても所詮は馬主の意向次第だから何が変わるというわけでもないが、気分的にそのまま流すことはできなかった。
クソマイペース野郎2号の思い通りにさせたら俺が痛い目に合う、マルとの経験でわかってることだな。
『求愛?お前ごときが?ハナに?』
『聞いてなかったか?自分はつい最近ハナさんとレースに出て共に汗を流し合ったんだよ』
『ハ?』
『ア?』
『ヤメテーオレノタメニアラソワナイデー』
俺のためか知らんけど。
いや、本当に知らない俺関係ないの構えでいたいのに立ち止まり行く手を阻むように向き合っているティトゥスとソテのせいでそうはいかない。
なによりこんなくだらないことで万が一にも喧嘩になってはいけない、言葉だけならいいが本格的ものになったら大変だ、険悪な雰囲気を感じ取っているのかそれぞれの引き綱を持った人たちには焦りが見える。
当然だ今からレースだというのに、そもそも競走馬として、ティトゥスに至っては種牡馬入りが確定している馬として、怪我などあってはならない俺たちは繊細なんだ。
遠退かせようとする兄ちゃんに内心で謝りながらソテとティトゥスの間に入る、多分現状はこれが一番安全。
『落ち着けってお前ら』
『 『ハナ(さん)』 』
『お前らここへ何しに来たんだよ、競走だろ?ならここでどうこうじゃなく勝負はターフで付けるべきなんじゃねぇの』
『そうだな格の違いをここでわからせてやってもいいが……それはハナが嫌がりそうだし、そうするか』
『ア?自分はティトゥスに負ける気なんて微塵もないが?』
『だからやめろって!ティトゥスも煽るんじゃねぇよ!』
『……わかったよ、勝負はターフで』
『そうそう、体のデカさとか強さとかも大事だけどやっぱり速くねぇとな』
足が速いはかっこいい!とか言うと価値観小学生かよみたいになるか?いやでも俺ら馬だし、牝牡関係なしに一番速いやつが偉い。
そもそも争われたところで結果はどうであれ俺の後味が最悪なことは確定してるようなもの、なるべく穏便に、人間も心配しなくて済むような道筋を示すしかないんだよ、俺は気遣いもできる優秀なビューティーホース。
俺が割って入ったことで若干緩和された空気も人間たちはいまだ油断ならないといった感じでなんとか2頭を離そうと苦心している、そうは言っても成熟した牡馬は簡単には動かない、俺よりも小柄と言っても推定馬体重は400kg後半といった人からしたら数倍の生き物だからな。
「すみません、ソテ行くぞ!本当基本的にイイコなくせにティトゥスやタカネノハナには……お前ってやつは、わかりやす過ぎるだろう」
「こちらこそ、ティトゥスお前いつもは相手にしないだろう、ほら行くよ」
それぞれの馬の性格と扱いを熟知した厩務員がそれぞれ動く、兄ちゃんは俺が間に立っていることもあって動くに動けないって感じだな。
しかしそんなの関係ないとばかりに俺越しにバチバチと意識を向け合う2頭、俺のこと見えてる?つーか話聞いてる?
『ハナさんは速い牡がいい、つまり今日勝った方がハナさんを嫁に取れると、そういうことですね!?』
『なるほど、そういうことか……なら問題ないな、俺が勝つ』
『ハァ?海外の芝ムシャついたお前が何を』
『問題ないことは前のレースで証明した』
『いつまでも王様ぶってるつもりだ?』
『だからお前ら俺の話を聞けえええええええええええ!!!!!!!』
ヒヒィーン
やっぱこいつら真面に聞いてなかった!
つーか誰が勝とうが俺は嫁に行かねぇよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




