第60話 俺、まさかの参戦
あの後は大変だった、何がって色々だ、色々。
勝利したら必ず勝ったものだけがする行為というものがある、職員はそれを2頭分やることになるし関係者は通常よりも長く待機したりするわけだ、写真撮影も一苦労なにせ優勝した馬用の馬着やレイは一組しかない、当然だよな同着なんて滅多に出ない以上二組用意することは無駄の極み。
つまり今回この馬が勝ちました!という写真を撮るのは交互になる、どちらからという話し合いが軽く行われ俺からとなったことを神に感謝したい、ただでさえ検量室前で1着の場所を取られ業腹だったのだここで先にソテが着ますなんてことになっていたら俺はヒナちゃんの前であろうと構わずあのクソマイペース野郎2号に喧嘩を売りに行ったことだろう。
そう、口取り式にはしっかりヒナちゃんがいます!安全なレースで分け合うことになったけどしっかり1着を取った!ヒナちゃん俺やったぜ!
口取り式のために並ぶ最中も俺は周りの人々に褒められ無事を喜ばれヒナちゃんに唇をぺちぺちされ大変幸せな撮影であった、……俺の顔ゆるゆるになってなかったかな?写真はキメたい。
撮影が終わると一時馬着とレイがソテへと渡る、やはり1着は1頭で取るべきだ、なぜ勝ったのにその証を取り上げられないといけないのか誠に遺憾である。
その後ソテは馬着、俺はレイを首に掛けて表彰を待ったりなんだり、……馬着とレイの別ける基準ってなんだ?俺が着ると馬着がちょっとぴちっと見えるとかじゃねぇよな?華やかなレイはビューティーホース俺の方が似合うってことだよな!?
ソテの馬体は俺より小さかった。
まあそんなこんなでいつもの倍近い時間を掛けて諸々を終えた俺はいつものようにさっさと馬運車に乗せられ第二の故郷と言っていいトレーニングセンターへと移動し厩舎の馬房に収まった。
そしてコズミなどもなく今日も元気にご飯をムシャムシャしている俺の前でひょろさん、兄ちゃん、ロメロが集まり話し始めた。
「前回のアレ……」
「ハイ、たしかにハナサンスタートしてすぐかたくなったです」
「安田記念の……か、気を付けていたつもりだったけど調教では問題なかった以上気付きようはなかったよ、牧場からの報告でも問題なさそうだということだったしね」
「本番だからこそ起こったこと……と?」
「それしかないだろうね、ロメロ君はどう思う?」
「そう思うです、それにほんのイッシュンのこと」
「その一瞬がハナサンにとっては……難しいね、こればかりはハナサンの心ひとつだ」
『……うっす』
ムシャア
なんの話し合いかと思ったら秋天でのスタート直後、俺の体が強張ったことの相談だった……そうだよな、鞍上であるロメロは当然報告するだろうし、そうじゃなくてもひょろさんや兄ちゃんは俺がおかしいことに気付いたはずだ。
気持ち食べる勢いが落ちる俺、もしゃ……もしゃ……。
「ひとまず一度起こったことから次は本番じゃなくとも起こる可能性を考えて試したほうがいいかな、もちろん十分安全に気を付けて」
「ハイ、なにもない方がいい、けどまたあるなら安全なほうがいいです」
「ハナサンはいつでも元気が1番なので」
あ、ちょっとしんみりした……、あの、そろそろ薄れさせて……無理?無理か、そうだよな。
本当べつに俺のせいじゃないけどこれ下手したら引退までこんな感じ?生涯現役とかしてたら一生?さすがに何年かしたら薄れるかな……。
「次は有馬記念予定……ただでさえ距離が伸びる、それまでにどうにかできるといいが」
「ハナサンなら今年も投票結果で上位でしょうからね、話題性も十分!美人サンで強い!」
へへへ、そんな褒められると照れちまうぜ兄ちゃん。
「ハナサンまた一緒にがんばるです」
おう!ロメロ次も頼むぜ!
そっかー、次走どこかと思ってたけど有馬記念かー。
………………。
うん?
有馬記念!?!???




