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おは競走馬 ~走れ俺、いやマジガチで死ぬ気で走れ大事なものを守るため!~  作者: noy


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第55話 俺、認める


 『出せー!ジイサンどこ行くんだ俺様を解放しろー!』


 アホ殿のことを俺に投げたジイサンは背中にアホ殿のどことなく悲痛な声を受けながらも振り返ることなく去って行った。

 さあアホ殿よ、2頭切りだぜ!


 『オイ』


 『……なんだよ』


 『お前俺の弟らしいぜ』


 『俺様2歳……いくつ上?』


 『2歳かよ、ならふたつだな』


 『ふたつ……お前が母ちゃんの言ってた戦闘狂のイカれた姉ちゃんか!?!!???』


 『ア゛ァン????』


 『ひぃ!』


 思わずまた威圧してしまった、だが聞き捨てならないなんだその戦闘狂のイカれた姉ちゃんってのは!というか母ちゃん俺のことそんな風に思ってたのか!?遺憾の意!遺憾の意!!!


 俺はただちょっと産まれた瞬間から目標があって日々トレーニングを自分にかしてマルやモモ、シロと負けようと勝とうと走り続けた……うーん、母ちゃん視点だとそう見えるかもしれない、けどもうちょっといい言い方とかなかったのか、ほらこう走るの大好きビューティーお姉ちゃんとかさ。

 それにしても母ちゃん口悪くない?ジイサンはそんなこと言わないだろうし現役時代他にもジイサンみたいな人間がいたのか、でも俺の前では別にそんなに口悪く……まさか、俺から?


 うん、よし!考えるのやめ!母ちゃんが俺のこと覚えててくれてウレシイナー!


 『母ちゃんから俺の話聞いてたんだな』


 『俺様が1番って言ってたら話してくれた……』


 『なんて?』


 『かわいいベイビーも速いけどふたつ上のお姉さんは速い上に毎日がんばってたわよー、って』


 間違いないこれは母ちゃんだ、かわいいベイビー量産系母ちゃんだ、そして俺を使って煽ってやがる。


 『それで?』


 『母ちゃんに姉ちゃんが何してたか聞いて俺様もした!』


 『へえ?』


 『そうしたらどんどん他のヤツらじゃ勝負にならなくなってやっぱり俺様がナンバーワン!!!』


 あちゃー、どうもアホ殿がアホ殿になった原因の一端は俺にもあるらしい。

 俺と同じ配合なら競走能力の上限値が近い可能性はある、もちろん同じ血統なら必ず強くなるとかそういうことは馬産にはないが……こいつアホ殿だけど強い馬特有のオーラ、あるんだよなぁ。


 そんなやつが母ちゃんから俺がなにをしていたか聞いてきちんとトレーニングしていたとしたら、周りの馬の能力とやる気次第では1頭突出した存在になってもおかしくない。

 俺だってマルがいなかったら他の馬は相手にならなかったし天狗になっていた可能性もある、実際牡馬と牝馬に分けられてからの俺は負け無しだったしな……。


 『そうかそうかナンバーワンか、じゃあ勝負しようぜ!』


 『なんで!?』


 『なんでってナンバーワンなんだろ?見せてみろよお前の走り』


 『ひえ』


 フヒュン


 すでに精神的に負けてる気がするアホ殿、それでも逃げ出すことはない……なんというかジイサンとの対峙でも思ったけどもしかしてこいつの中に逃げ出すって選択肢はないのか?理不尽でも、嫌でも、怖くても逃げない……たんなるアホ殿と思ってたけど、俺の弟なだけあるじゃん。


 『俺が俺のライバルだと思ってるヤツとやってる方法だ、いいな?』


 『チクショウなんで俺様がー』


 『いいな???』


 『ハイ!』


 あきらかに嫌そうにしているアホ殿に説明するやり方はいつもマルとするもの、この放牧地で出来る最大限の模擬レースだ。


 『いくぜえええ!!!』


 『俺様は負けねえええええ!!!!!』


 イヤイヤしてたのに始まれば勝つ気で挑む、いいな!だからこそお前は1回ここでわからせてやる!!!!


 瞬発力加速ともにヨシ、アホ殿になるだけの実力はしっかりある……だが所詮は2歳馬未熟な肉体と体の使い方で俺に勝てるはずねぇんだよ、つーかG1馬である俺に2歳で勝てたら本物の化け物だそいつは、馬じゃないUMA。

 スタートこそ差がなかった俺たちの走り、しかし進むごとにその差は確実に広がりゴールと取り決めた地点を通過するころには大きなものとなっていった、スピードを緩める後方から負けたとわかってなお緩めず駆け抜ける足音が聞こえてくる。


 『チクショオオオオオ!』


 ふたつの年の差があっても最後まで全力で走り切り負けたことに本気で悔しがる姿、うんこいつやっぱ俺の弟っぽい!


 『ま、なかなかじゃねぇの?』


 『う、うるせー!姉ちゃんふたつ上だろ!俺様が弱いわけじゃない!』


 『それでも負けは負けだ、それに来年にはもう一緒に走る機会があるかもしれねぇぜ?俺は3歳で上の連中とやりあったし、勝った』


 『ウッ……、来年姉ちゃんと……?』


 『可能性ならな、ある。それに俺じゃなくても古馬連中は強いぜ、お前今のまま勝てんのか?』


 『俺様はまだ成長途中だし、毎日走るし、勝つ!』


 『ふーん……でもお前調教で人間困らせてるんだろ?』


 『人間は俺様がしたくないこともさせようとしてくる、しかたなくやってやるが俺様は敷かれたレールを走るつもりはない!』


 『そのしたくないことがお前を強くするんだよ、人間は俺たちより俺たちのことを知ってる、もちろん全部が全部有効ってわけじゃないけどな。だからこそ従って繰り返してそれが自分にとってどう繋がっていくかを常に考えるんだよ』


 『考える……?』


 『考える、お前母ちゃんから俺のこと聞いて真似だけして来たんじゃねぇの?自分にとってどうか、周りが相手にならなくなった時それならどうしたらいいのか、考えたか?』


 『……考えなくても俺様が1番だった』


 『今はな、けどこの先はそれだけじゃ足りない、負けていいのか?勝ちたいだろ?』


 『勝ちたいんじゃなく勝つんだ!俺様が一番になる!』


 『なら考えろ、っていきなり言われたところでわからないだろうから俺がしっかり考える力と走りを鍛えてやるよ、ジイサンはどうせ俺の放牧期間中は面倒見させるつもりだろうしな』


 『姉ちゃん……』


 『俺の全姉弟が重賞馬になれないとか俺のプライドが許さねぇからな!覚悟しとけよアホ殿!』


 『俺様はアホ殿じゃない!!!!!!』


 えー、アホ殿はアホ殿だろ?


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