第54話 俺、ミッション受注
『ジイサンこのアホの俺様が弟とか嘘だろ!?』
プヒュゥンブルルル
『誰がアホの俺様だ!俺様は天才って言った……俺様がおとうと、ねえちゃん?』
フヒンブフーヒン
俺とアホの俺様……ジイサンはトノって呼んでたな、なんだトノって殿様か?アホ殿って呼んでやろう、アホ殿2頭の視線を一身に受けてもなんてことのないように笑っているジイサン。
「いやーリアクションも似てるなぁ、さすがは全姉弟だ」
全姉弟……ぜんきょうだい…………母と父が同じ競走馬………………。
俺とアホ殿配合一緒なのかよ!?配合っていうか両親か!えー、マジで?こんなアホ殿がビューティーホース俺の弟ォ?
『な、なんだよ』
『べっつにー?』
どうにもジイサンの言葉が信じられずジロジロとアホ殿を見ていたら居心地悪そうに頭を振り出したアホ殿。
姉弟ねぇ……まあ確かにきれいな栗毛はお揃いだ、俺は尾花栗毛じゃないけど。
脚の長さも似てるかな、俺はコイツより距離が短めの体格だけど。
顔がいいところも、うん、姉弟かもしれない、よくわかんねぇけど!
血縁だと認識して出会う馬は母ちゃん以来、姉ちゃんの話は聞いてたけど実際会ったことはない、多分ない、知らない馬と出会っても俺の母ちゃんは○○で~なんて話しないからわからないんだよ。
血縁ならピンとくるはずなんてことも今までなかった、アホ殿にも別になにか、感じる!的なのもないし、そもそも競走馬なんて同父だらけだしわかったら凄くね?
落ち着きがないアホ殿、真っすぐとアホ殿を見つめる俺、そんな2頭を交互に見るジイサン。
そんな奇妙な光景が生まれてしばらくしたころジイサンが唐突に閃いた!みたいな顔をした。
なんだか俺はとても、とても嫌な予感がする、ジイサンのこの顔前にも一度見たことがあるんだよな……それはいつだって?
俺とマルが馬房を離されてクソマイペース野郎が暴れに暴れて最終的にお向かいさんになった時だよ!!!!!!!!!!!!!!
つまりジイサンはきっと俺に面倒事を押し付けようとしてやがる!!!!!!!!!!
「あー、トノは無事だ、それでトノの放牧地なんだが今までの――――」
スマホでどこかに連絡を取るジイサン、なにやら不穏なことを話すジイサン、この区画に振られた番号はなんですか?アホ殿の放牧地変更しようとしてますね?それはどこですか?
「よし、トノ!ハナ!今日からお隣さんだぞー」
ほらねえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!
『嫌でござる!絶対に嫌でござる!!!』
ヒヒーンブフンブルルル
『えー!俺様も嫌だ!なんか嫌な予感がする!!!』
プフーヒュンブフフフン
「ハッハッハ、早速息があってさすが姉弟だなー」
俺とアホ殿の抗議の嘶きを意に介した様子もなくアホ殿の引き綱を持って隣の放牧地へと誘導するジイサン、アホ殿は口では嫌だ嫌だというが物理的に抵抗することはなく放牧地へと入れられしっかりと柵を閉められた、ここの柵はちょっと頑張れば開く類ではないのでもう脱走はできないだろう。
それにしても見付かって引き綱を付けられた時もそうだがなんでアホ殿はジイサンに抵抗や反抗をしないのか、なにか弱みでも握られてるのか?馬の癖に?
「よし、ハナこっち来い」
嫌だ―出せーとフヒュンフヒュン鳴いているアホ殿を尻目に俺のいる放牧地へと近付き柵越しに手招くジイサン。
不満たっぷりの俺は渋々、本当に渋々手招きされるまま顔を近付けてやった。
「トノだがなぁ、産まれた時から歩けないわけじゃないのに立ってるだけで自分から動かずパトラの方を近付けたらようやく乳を飲む殿様みたいなヤツでトノって呼ばれてるんだが」
本当に殿様で草超えて芝。
「走りはお前の弟なだけあって抜けてるんだよ……それがまた困りもので周りに同レベルの馬もいなかったせいかあんな感じに仕上がって来ちまって、調教する奴らも困ってるんだ」
俺にはマルがいたしマルには俺がいたもんなぁ……。
「だからまあアレだ、ハナ、姉より優れた弟などいないってわからせてやれんか」
……。
やぶさかじゃねぇな!
このオネエサマことビューティーホース俺がその鼻っ柱ぶち折ってやるぜ!!!!!!




