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第7話 俺、初勝利


 考え付いたからと言ってすぐさま実行とは行かなかった、いきなり駆けっこの距離伸ばそうぜ!なんて言ってもクソマイペース野郎のマルはウンと言わないだろうしモモとシロのこともある。

 モモはまだしもシロのほうは俺たちの中で明確に劣っているのだ、それはスピードでありスタミナでもある、俺は本当にシロのことが心配です、それで競走馬になって大丈夫そ?


 だからまずはシロの心が折れないように鍛える必要があったしなにより俺自身がマルに勝てる距離というのをわかっていないわけで、母ちゃんにこっそりお願いして気づかれないようにじりじりとゴールの位置を変え、元気に駆けまわることで走力を鍛え。

 繰り返す日々、季節の変わりを感じるころだった。成長して行く俺たち仔馬ならもっと距離を伸ばすべきじゃないか?そう提案しなんとか三頭の同意を得て行った最初のころと比べたら倍はあるんじゃないかという距離の駆けっこ。

 そこで俺はついに初勝利を迎えた!初めての距離で感覚の違いがある中粘りに粘った頭差のかなりギリギリの勝ちだろうと勝ちは勝ちなのである。


 『母ちゃん!俺勝った!!!!!』


 『そうねさすが私のかわいいベイビーよ』


 『だろー!?ここから俺は連勝記録をッ』


 身の毛もよだつ感覚にバッと振り返る、そこにはこちらをじっと見つめているマルがいた。


 『ハナに負けるのは……、嫌だなあ』


 ヒェッ!

 俺はどうやら眠れる獅子を起こしてしまったらしい、今のマルは最終直線を駆けている時と似た雰囲気を纏っている、あと目が怖い、そんな目で見ないで俺はプリティーベイビーそんな目で見られると思わずチビリたくなっちゃう!母ちゃんを盾に召喚!俺は戦略的撤退を選択するぜ。


 モモとシロ?アイツらならマルのバチ切れに気付いてすぐ走って逃げたぜ、風のようにな!お前ら普段からその速度出せよ!特にシロ!!!


 『坊や落ち着きな』


 そんなマルにかぷりと嚙みついてなだめるのはマルの母馬だ、母は強し、ありがとうおかげでマルが俺をガン見してくるのをやめました。


 『えー、でもお』


 『次勝ちなさい、ジイサンだって言ってた最後に勝ったらいいって』


 『うーん、うん、また勝つ』


 前方で次の勝利宣言をされる俺、でも今は反論しないでおこう、そもそも今回は半ばだまし討ちと言われてもしかたない勝利であることはちゃんと認識してるしな。

 それでも勝ったという事実は俺を歓喜させたしこれまでの努力は間違っていなかったという自信にもなった、これからマルとはまだまだ勝負することがあるだろうし俺も当然負けるつもりでは走らない、次もきっと勝ってみせると闘志がみなぎっている。


 無事落ち着いたのかいつもの調子に戻ったマル、かっ開かれていた目も眠たげなものに様変わり、……これから先勝つたびああなんの?マジで?あのモードのマルはちょっと遠慮したいんですけど。

 俺がまだ見ぬ未来に震えているとマルがのそのそこちらに近付いて来た。


 『ハナあっちでお昼寝しよー』


 そう俺は今日も今日とてマルを一緒に寝ることで釣っていた、他にもマルの気分がいい時を狙って誘ったりぽかぽかスポットを教えるなどで釣れることもあるがこれが一番手っ取り早く勝率もいいのだ。


 『ういー』


 母ちゃんと軽くハムハムし合ってからマルにパカパカついて行き本日のマルセレクションお昼寝スポットへ。

 謎のこだわりを見せるマルだが確かに選ばれる寝場所は居心地がいいんだよな、あと最近俺は草テイスティングにハマっているので味わうとそれもいいことが多い、母ちゃんの乳ももちろんうまいけど近頃では添えるだけといった感じだなんか出もよくないしな、草の味の違いもわかるようになったし馬が果物をもらってるところを映像で見たこともあるのでジイサンくれたりしないかなと思う今日この頃馬に生まれ変わっても俺はグルメに生きたい。

 草をある程度食んでからごろりと寝転がり脚をパタパタ、いやー実にいい昼寝日和である。


 のんきに寝入った俺とマルは起きた時あんなことになっているなんて知る由もなかったんだ。


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