第52話 俺、渾身のダメージ
『だいぶ暑くなって来たな、まあバテるほどじゃないし全然快適だけど』
抜けるような青空のもと放牧されている俺はのんびりと青草をもしゃりながら過ごしていた。
マルとモモも早く帰って来ねぇかな、モモはローテが大きく違うからまだしもマルはそろそろ帰って来てもいいと思う、せめて隣の放牧地誰か連れて来てくれねぇかなジイサン俺あんま一頭って好きじゃない、寂しいし。
『いーちにーさんしーにーにーさんしー』
新鮮な草をしっかり味わった俺はストレッチタイムだ、安田記念でこけた時に思ったが体の柔軟性はやっぱり大事だと思う、体が固かったらもっと衝撃を受けていただろうし怪我にいたっていたかもしれない。
体幹の強さと柔軟性、これは馬に限らず人間でも生きやすくなるから鍛えた方がいい、トレーニングは自分を裏切らないレッツトレーニング!
「タカネノハナー」
「はなちゃー!」
無駄に放牧地の中心でストレッチをしていた俺を呼ぶ声、これは間違いないオッチャンとヒナちゃん!!!!!!!!!
『はーい!ビューティーホースタカネノハナはここですよー!!!』
ヒヒィィィィイイン
ストレッチを途中でやめてすぐさま駆け出す、俺の優先順位圧倒的1位はヒナちゃんだから当然だな。
オッチャンにヒナちゃん、それにジイサンみっつの影がある方へと駆けた俺は柵越しに久しぶりのヒナちゃんとの対面となった。
『えー、プリティヒナちゃんは俺に会いに来た感じ?やっぱ俺ってば愛されホース?』
プヒュフンフンフン
「こりゃあご機嫌だ、ハナは本当にヒナちゃんが好きだなぁ」
「ひなもはなちゃすきー」
ヒナちゃんは少し見ない間に発話のレベルも上がりハイパーミラクルプリティーぷくぷくまるまるキッズからハイパーミラクルプリティーふくふくキッズへと進化していた、等身が変わってもまだまだ小さき生き物、人間の子供、小さい、弱い。
「そんな大好きなはなちゃにヒナは言いたいことがあるんだよなー?」
『なになに?俺に?大好きって?俺もー!!!』
オッチャンがヒナちゃんを抱き上げて俺の目線と合わせるように持ち上げる、成長したヒナちゃんを難なく抱き上げるなんて、さてはオッチャンヒナちゃんを抱っこするために鍛えてるな……?
やはりトレーニング!トレーニングはすべてを解決する!ことはないが年を取った後の筋肉は大事だから俺も鍛えよう、目指せ生涯現役。
「はなちゃ」
『なーにー』
プフー
「あぶないのだめよー?」
『アッ』
ブヒュッ
「ひなはなちゃとばいばいやーよ」
『あばああああああああああああああああああああああああ』
俺の精神に∞のダメージ!
目の前が真っ暗になった…………。
ッハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『いやあのなヒナちゃんアレは不慮の事故で決して故意ではなく俺も避けれるなら避けたいに決まってるんだよな、でもどうしてもああいう事の可能性は否定できないしそれこそ引退したからって安全とは限らない、もともと俺たちサラブレッドは繊細過ぎるほどに繊細でヒナちゃんが心配し「だめよー?」』
フヒィンブヒュブルルルブフフンヒィン、ヒン!
必死に言い募る俺だがヒナちゃんのお鼻タッチという名のストップで唇をブルブルさせて言葉を飲み込む。
「おー、見事にしょぼくれた」
『オッチャァン』
フヒュン
「周りがドタバタしてる中お前は1頭ケロッとしたままで無事だったから良いって言っても心配してることが伝わらないのは困りものだからな」
『だからってヒナちゃん使うのは狡いだろ?』
「……あの日ヒナも居たんだ」
『ふぁ!?』
ブフッ
「直後は何があるかわからないから会わせるって選択肢はなかったが見てたから説明はできる限りした、そうしたらはなちゃに会いたいってな、それで今日は連れて来た」
ヒナちゃんに鼻面をぺちぺちされオッチャンに側頭部を撫でられる。
「子供が育つのは早いなぁ……タカネノハナが悪いわけじゃないってことはわかってる、もちろんロメロ君もな、でもできればヒナと一緒に見て1着じゃなくてもいいからしっかりと見届けられるレースをして欲しいとワガママを言いたくなる」
「はなちゃはずっとぱかぱかするのよー」
『オッチャン……ヒナちゃん…………』
プフーン
「ハナお前こんな愛されてるんだ怪我には気を付けてこれからもしっかり走らないとなぁ」
ジイサン………………。
うん!?ジイサン今これからもって言った!?
現役続行確定演出キタアアアアアアアアアアアアアアア!!!
『わかったわかった!もう2度とこけないし!次あんなことあったらこうピョーンとして体勢直して走って見せるから!オッチャンとヒナちゃんが安心して勝利喜べるようなレースするから!!!』
ブフフンブルンヒヒーン
「うーん……これ、大丈夫か?」
「どうでしょうねぇ」
「はなちゃげんきねー?」
おう、俺今超元気!!!!!!!!!!!!!!!!!




