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おは競走馬 ~走れ俺、いやマジガチで死ぬ気で走れ大事なものを守るため!~  作者: noy


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第49話 俺、謝罪の気持ち


 「ハナ、ハナ……」


 「医者は!?」


 「ロメロ騎手大丈夫ですか」


 「落ち着けマルゴー!」


 『ハナ?大丈夫でしょ?』


 本来なら他の馬と一緒にゴールを目指しているはずのマルが何故だか俺に近づいて来たことに羞恥心を覆うほどの混乱におちいっている俺の周りで人々は騒めく。

 のっそりと近付く黒い巨体を留めようと鞍上が手綱を引いてもマルはお構いなしに俺へ声をかけ、しかしそれで俺は意識を引き戻すことが出来た。


 『あ、大丈夫大丈夫、ただ下手に動くとロメロ巻き込みそうでな?』


 ブフン、ブルルルルル


 端正な顔を歪めながら俺の名前を呼ぶロメロいくらハムハムしても逆効果でしかなくいったいどうしたものかと手を解放してマルに応える。

 するとマルはロメロの肩あたりをハムったかと思えばそのまま頭をグイグイと押し付け始めた。


 「オイ!マルゴー!!!」


 「皆離れろ!」


 『ちょ!優しくしろよ?人間は弱いんだからな!?』


 多分だがマルなりに考えての行動ではある、最初にハムることで敵意がないアピールをして結果的に俺が立ち上がるのを妨げることになっているロメロを退かそうと一番攻撃力が低い頭で押してるからな。

 だがマルは俺を超える巨体、その馬体重は一体どれほどになっているのか……600kgは行ってないよな?どうだろう、とにかくそんな巨体が人間へアクションするというのは傍から見たら緊張が走るもので事実鞍上は先ほど以上に焦った声を出し周りも巻き込まれないようにと声を掛けロメロも下手に抵抗しないほうがいいと判断しているのか押されるまま俺から離れて行く。


 『サンキューマル』


 人間からしたらただでさえ俺がこんな状態なのにも関わらずさらにマルの暴挙かと背筋が凍る思いをしたかもしれないが俺からしたら救いの一手だ、感謝はきっちり伝える礼儀正しいビューティーホース。

 ロメロ含め周りとの距離がある程度開いたため横転したままだった体を動かし脚を曲げのっそりと起き上がる。


 『どっこいせー』


 プフーン


 「ハナ!?無理しなくていいんだ!」


 なるべく周りの感情を刺激しないように緩慢な動作で起き上がった俺だがロメロの目は脚に釘付け状態、まあ馬にとって脚は命だからそうなるのも当然といえば当然。

 そんな心配をすることはないと示すために四本足でしっかりと立ち上がった俺に複数の安堵の吐息が聞こえて思わず耳をピルピルしちまう。


 『俺は大丈夫だって、ほら元気元気』


 フヒンヒンヒン


 その場で足踏みしてアピールするとそれは逆効果だったのか周りがアワアワと手を躍らせている、はて?……あ、そうかちゃんとした診断がない以上心配だよな、言葉もわからなければ馬は怪我をしているからといって大人しくしているとは限らないわけで。


 『よかったー』


 プフゥ


 そんな中唯一落ち着いて俺の無事を喜んでいるのはマルのみだった、まあマルは俺の言葉わかるしな、そうマル、マル……。


 『いやお前なんでここに居るんだよ!?』


 『なんでってー?』


 『レース中だろ!』


 『うーん……』


 『うーんじゃなくて!』


 『だって……』


 『だって?』


 『ハナが見とけって言ったから』


 『は?』


 ファ!?


 ヒン!


 ……いや言ったな、確かに言った、絶対負けないからしっかり見とけって言った。

 そしてそうだ、マルはこういうヤツなんだよな、素直というか深く考えないというかこちらが意図した伝わり方をするとは限らないクソマイペース野郎。


 それでもまさか俺がいないからといってレースを中断するとは思いもしなかった、けどこれは俺のせいと言って過言ではない、俺とマルどちらもまず間違いなく人気上位馬もしかしたら1番人気と2番人気かもしれないそんな2頭が現在仲良くスタート地点……いったいいくら飛ぶのか、何十億?桁変わる?

 馬券師のみなさんには正直スマンかった以外なにもいえない……。


 「ハナサン!!!!!!!!」


 なんともいえない気分になりマルと見つめ合っていた俺の耳に届いたのは兄ちゃんの声だった。

 足音が聞こえる方に顔を向ければ兄ちゃんが向かってくる姿、その表情はこわばり近づいて来ても緩むことなくしきりに俺の体へと視線を走らせているのがわかる。


 「……ハナサン、よかっ……よがっだぁ」


 四本足でしっかりと立ち普段と変わらない様子の俺を間近で確認した兄ちゃんはボロボロと涙をこぼしながらその場に崩れ落ちた。

 もちろん躓いたのは故意ではなかったし俺が悪いわけではないのだが罪悪感でしょんぼりしちまう……。


 ごめんな兄ちゃん、俺がどうこうできることじゃない気もするけど気を付けるからそんな泣くなよ。

 俺、兄ちゃんは俺の横で誇らしげにしてる顔が好きだぜ。


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