第48話 俺、世界は回る
マル絶対倒す馬ンになった俺は闘志をみなぎらせながら輪乗りに勤しみ他の馬がゲート入りして行くのを待っていた。
そう本日は何を隠そう8枠18番、大外枠である!
……いや、前回どうせならどっちかに振り切れた方が走りやすいとか思ったぜ?思ったけどそうしろとは言ってないんだよな!
この枠運は果たして俺なのか、ひょろさんなのか、ロメロなのか、はたまた全員なのか……。
ところでゲート入りってなんで枠順奇数→枠順偶数なんだろう、単純に1~とかだとそのまま隣に馬が入っていってただでさえ俺たちにとって不快感強めなこともあるゲートでの待機で1枠1番の感じるストレスが強いからとか?
きっとこうなる過程で色々あったんだろうけど不思議なことのひとつだ。
さあいよいよ最後の一頭となりゲート入りの時間、俺は気合十分のまま促されゲートへと入って行く、いつもと違い待機時間はスターターがよしと判断するまでつまり極端に短くなる。
それでも俺のやることは変わらない、いつも通りゲートが開いた瞬間飛び出す、それだけ。
ガチャン!
いつものように駆け出した俺。
しかしその瞬間ガクッと視界が揺れた、いつもより近くで地面が踏み付けえぐられる音が聞こえる。
『あぇえ?』
フヒューン
馬の動体視力と視野をもってしてまるでスローモーションに感じる光景がおかしな角度になっていった、なぜか?
どうやら何かに躓いたらしい、背から滑り落ちていく重み、立て直そうとするが勝手に崩れて行く体勢はそれに抗うよりも身を任せた方がいいと本能的に感じる、俺はそのまま崩れ落ちるように横転した。
……。
…………。
………………。
ヤダ!恥ずかしい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
歓声と悲鳴が入り混じる東京競馬場、散々周りにわかりやすく敵対し人には聞こえていないが馬の間では知れ渡った宣戦布告までした俺はスタート直後に競走中止。
安田記念でよかった!マイルでよかった!!!!これがもし1ターンじゃない、例えば中距離レースであったらゲートが設置されていた場所はコースとなるので倒れていたら危険極まりない、つまり俺は溢れる羞恥心を押さえつけてなんとか退かなければならなかった、だがマイルで1ターンの安田記念の場では羞恥心のまま寝転がり内心悶えることができる。
うおおおおおおお!あんな啖呵切ったくせにこれとかはずかしいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!
「ハナ!!!!!!!!!!」
倒れている俺に悲痛な声で普段使うことのない呼称を叫びながら駆け寄ってくるロメロ、大外枠で外側へと体は流れて行ったし崩れ切る前に落ちたロメロは大丈夫だろうと思っていたがこの様子ならやはり問題なかったらしい、一安心。
「ハナ大丈夫か!?ハナ!」
俺が何かの拍子で立ち上がったり暴れたりしたら危ないとわかっているだろうに俺の傍らに膝をつき顔を覗いて来るロメロ、衝撃はそれなりにあったが痛みは今のところなくただ羞恥心に負けて倒れたままだった俺は伸ばされ震えたロメロの手をハムハムする。
「嫌だダメだハナ、もっと一緒に走りたい!」
アッ、なんか誤解させてる!?俺のハムハムが怪我して最期になんとか騎手へ愛情伝えようとしてる的なアレにとらえられてる!?
起き上がろうと思った俺しかしこの状態で下手に動いたら5XXkgのビューティーボディがうっかり負担重量のためにオモリを付けたところで56kgしかないロメロに害を与えてしまう可能性が否定できない、人間弱い、小さい、脆い。
「ロメロさん!ハナちゃんは!?」
『ハナ大丈夫?大丈夫だよね?』
どうしたものかと倒れたままの俺とロメロの周りに集まり出す職員の皆さん、そしてさらにそこへ加わったのは俺がパドックで散々敵対意思を見せたマル、そしてその鞍上だった。
絶対負けないと誓った相手に勝つとか負けるとか以前の問題で横転している姿を見られる羞恥心。
くっ、殺せ!!!!!!!!!!
え、ていうかマルなんでお前ここに居んの!?!???




