第47話 俺、宣戦布告する
愛され、甘やかされ、すくすく成長……身体的なものはさすがにそろそろ止まって来た気がする、その分出来上がった体は厚みを増し筋肉が浮き立つビューティーホースのビューティーボディを作り上げていった俺とひょろさん筆頭の厩舎一同。
取って見せるぜ安田記念!!!!!!!!!
そう意気込んでやって来ました安田記念パドック、俺は非常に、ひじょーに、ひっじょおおおおおおに!ご機嫌ナナメなマルと対峙していた。
それはなぜか、マルも安田記念に出走すると知った日から俺を始め厩舎一同というかまあ俺がマルとの接触を拒み続けた結果兄ちゃんからひょろさんに伝わり他の人たちにも伝わりなるべく調教時間や調教内容をずらす事で接触を拒んで今日まで来たから……だと思う。
何と言っても今の俺にとってマルは不倶戴天の敵、というとさすがに言い過ぎだが心情的にはそれに近いなんとしても次ぶっ倒すリスト堂々の1位を飾っているのだ、盛大に煽られた俺の思いはかたく強い。
そんな中のほほんと併走したりグルーミングできるか?できるわけねぇよなあ!?
そういったわけで俺からスキンシップを拒まれ、会話もろくに出来ず、周りの人間がどうにかしてくれることもない状況におそらくマルは腹を立てている、多分!
そんな俺とマルがパドックで出会ったらどうなるか、そう、前回にはなかったバッチバチだ。
『ハナ、いい加減にしなよ』
『いやそれこっちのセリフな、俺はちゃんと言っただろ次の勝負が終わるまでグルーミングナシって』
『僕はそれいいよって言ってないし』
『俺がされるんだから拒否権は俺にあるだろ!』
『ずっとして来たのに急にダメとか意味わからない』
まあ、それは……そう、物心ついてすぐからずっとして来たのに急にするなって言われたって理解できないよな、馬だし。
いやこれは差別とか下に見てるとかじゃなく純然たる事実として馬の知識は人間より少ない、いくら年上の馬やジイサンみたいな人間の言葉を介して増やしても限度はあるしそもそもが動物として本能を基準にすることは俺だって多い。
馬としての快不快や深く考えず本能で判断するという行為は当たり前なんだ、そんな中俺は言葉だけでマルを拒んだ、周りが心配するし万が一にも怪我をするのは嫌だから物理的に喧嘩を売るとかそういうことはしていない、だからこそマルは俺の意図をしっかりと理解できていないと今この場で気付いた。
正直スマン!マルの厩舎の人たちは特にスマン!大変だったろうなこのマル相手に調教したりなんだり!スマンかった!!!!!!!!
けど言い訳させてほしい、俺やマル、モモとシロの4頭の幼駒時代から牡牝にわけられて以降も俺は他の馬と仲が良かったんだ、だって俺強いし、強いは偉いからな?
つまり、まともな喧嘩の仕方というか、馬同士のわからせ方は本能でわかっても怪我したりさせたりしたら大問題な以上競走馬としてうまい喧嘩の仕方がわからなかったんだよ!
『……それは俺が悪かった、けどダメなもんはダメなんだよ!敵対してる群れのボスとグルーミングはしないだろ!?』
『ハナも僕も群れなんて持ってないよ、……持ったの?』
『いや持ってない!まあパイセンに次のボスどうだって打診はされてるけど、今それはどうでもよくてたんなる例えで俺とお前は敵対してんの!』
『してないよ』
『俺は!お前のこと!敵視してんだよ!次は負けたくねぇの!!!!!!!!!!』
擬音を付けるならハラハラしか選択肢がない状態で俺とマルの担当厩務員が俺たちを眺めながら万が一の時を考えてか引き綱を強く握っている、物理的喧嘩はしないから安心してくれよな。
『ハナが僕を敵視……』
『そう!今日この瞬間お前は俺の最大の敵で絶対倒す相手なんだよ!』
『ふーん、最大の敵……終わったら元通り?』
『俺が勝つからそうだな!』
『そっかー』
わかったのかわかっていないのかよくわからないが一応の納得をしたらしいマルはグルーミングすることを諦めてパドックを周回する他の馬に混ざって行く。
『いいかマル、俺は絶対お前に負けない!しっかり見とけよ!!!!!!』
そんなマルの背中に俺はそう声を掛けた。
ところで他の馬がたくさん居る中お前以外眼中にないお前だけがライバルだみたいなやり取り感じ悪くない?
大丈夫……じゃない?やっぱり?
愛想振り撒いておこ。
シャスシャスシャーッス!!!




