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第6話 俺、考える


 いつまでもプリティー駄々っ子をしているわけには行かないのでとりあえずおさらいをしよう、俺はいつもマルに負けている、それは最後の直線の速度がマルの方が速いからだ。

 俺にキレる脚が皆無とは思わない、現状他の三頭としか比べるしかないが大多数の仔馬と比べたってきっと俺は上澄みの方だろう……ただマルが超一級品の素質を持っているだけで、最終直線のマルはなんというかとてつもないオーラがあるのだ、というか俺が平凡なヤツに負けるなどあまりに悔しいのでマルは超一級品!じゃないと困る!


 四頭で走り始めてすぐ気づいたマルの才能、俺は当然マルに聞いた、なぜ最初から本気を出さないのか?先頭って気持ちよくない?俺ならそうするのに。

 それに対してマルの野郎、あのクソマイペース野郎!


 『えー、最初から本気って疲れるよー、それに最後ハナより前にいたら良いだよね?なら最後だけでいいかなー』


 そうのたまいやがった!お前なんて舐めプでも余裕だぜ(笑)ということだ!だが俺は今負け犬、ではなく負け馬、こんなことを言われても前掻きするしかない。

 おのれマルめ絶対お前を負かせてやるからな!と思ったあの日から連敗記録は更新中である、無念。


 俺は元人間である、その頭脳をもってして色々試してはみたのだ、先頭大好きな俺だがあえて控えて最後に全力を出してみたり……これは当然マルの方が抜群のキレでスピード勝負に負け俺の記憶にある限り最大着差となった今となっては思い出したくもない出来事だ。

 それならばといつもは考えるペース配分を一度忘れ全力で駆けた、結果?記憶にございません。

 他にもあの手この手で色々試してみたのに勝てない、これは非常に問題である、俺はまだまだ未熟なベイビーこれから成長し走りも変わっていくだろう、だからといって今勝てない相手に一切の策なしなど断じて許されない、だって悔しいじゃん!


 『クッソー!』


 ぶり返した悔しさに飛び跳ねると母ちゃんがあらあらまあまあと言わんばかりの顔でこちらを見ている。

 母ちゃんは基本的に放任主義というか俺が変わっているというのは姉の育児経験を通してわかっているようだが特に何かを言ってくることはない、お願いしたらできることはしてくれるし、一緒に駆けてくれたり、昔の話をしてくれるし、とてもいい母ちゃんである。

 そう母ちゃんの昔話、そして俺の人間だった頃の記憶、そこに答えはきっとあるはず!とウンウンならぬヒンヒン鳴きながら考えてみる。

 

 そして閃いた、そうだ距離適性!競馬には距離区分がある、短距離、マイル、中距離、長距離、詳しい距離は忘れたがそこにきっと活路がある。

 なにせ俺たちが今使っているコース、もとい放牧地は仔馬基準で広いと言っても知れていて俺の前世の感覚から導き出すと短距離がいいところ、なにせ俺たちが元気に走り回れる規模だ。まだまだ仔馬の俺たちだが走って寝て、また走って、そうしていると見えてくる能力はなにも単純なスピードだけじゃない。


 そうスタミナだ!俺は他の仔馬に比べてとても体力がある方だと思う、四頭で駆けるのはもちろんマルを抜いた三頭で駆け回ったあと他のやつらが休んだり寝たりする中でも元気溌剌!といった感じで母ちゃんと一緒に駆けるのが常だ、いつも付き合ってくれてありがとう母ちゃん、やっぱ母ちゃんは最高だぜ。

 基本的な走りも配分を考えはするがスタートしたら先頭に立ちそのまま速度を緩めず最後まで突っ走るといった感じである、だってそれが一番俺は気持ち良い。勝つのは大前提だとしても俺は気持ちよく走りたい、その方が気分よくスピードも上がる気するし!プリティーベイビーにストレスはよくない。


 現状でもモモとシロは引き離しながらゴール出来ている、距離が長くなればそれはもっと広がるだろうと俺は確信しているしマルが今と同じように走るつもりなら最終直線に入った時の差はもっと広がっているだろう。

 今は俺の適正もマルの適正もわからない、わからないが俺の本能がこれだ!と言っている、それがどこまで信頼性があるかなど今はギャン!!!!!!!!!


 『ハナー、約束したよね?寝よーよう』

 

 俺が真面目に思案していたというのに突然首をハムハムしてくるクソマイペース野郎、びっくりした、心臓止まるかと思った。


 『バッカお前普通に話しかけろよ!』


 『ハナの名前呼んだよー?けど気付いてくれないからさあ』


 『え、マジ?それはごめん』


 『いいよー、だから寝よ?』


 俺がせっかく良い閃きをしたのにと思わないでもないが約束は約束、確かに俺は走る前にマルと寝るといった以上寝るしかないだろう。

 そう思い今日のマルお気に入りスポットらしい場所に向かうのにパッパカついていく、マルは寝ることが大好きなのはもちろん寝る場所もこだわるタイプだ、それは日当たりであったり柵との距離であったり、草の生え具合であったり色々あるしいが俺にはわからない。そもそもマルは一緒にゴロゴロしていたら俺が寝ているかどうかなど気にしないだろう、その時に改めて考えたらいい。

 

 それにしても俺が産まれた時を考えるとだいぶ暖かくなった、陽射しはぽかぽか、ふく風も心地よく、草もだんだんと青々とした色が強くなっていってる気がする。

 本日のマルお気に入りスポットに到着すると二頭でゴロンだマルは寝つきがいいので直ぐ寝ることだろう、本当になんでこんな万年寝太郎みたいなヤツがあんな脚を持っているのか誠に遺憾である。

 しかしこうして強い相手と仔馬のころから走れるという意味では俺にとっていいのかもしれない、マルがいるおかげで慢心せずにいられるしもっと考えて、走って、強くならなければという思いも強くなる。それは俺が俺として……。


 ぐー。

 

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