第42話 俺、牧場でのひと時
『帰って来たぜ故郷!!!!!!!』
ヒヒィーン
『ねむいー』
プフン
一度機嫌が戻ると後は再びナナメになることなく無事快適ではない旅を終え辿り着いた牧場、いや本当にいつになったら快適な旅路を……馬である限りは無理?そうか、そうだな、どんなに気遣っても限度はあるし俺たちは悲しき産業動物、でも気遣いはちゃんとされてるしバッチリそれは感じてるぜこれからもご飯たっぷりよろしくな。
それにしても相変わらず広いなここは北海道って規模が違う、いや当然変わらないサイズもあるのは知識として知ってるけど俺の関わる範囲だとやっぱり色々デカいし広い。
「よく帰って来たなマル、ハナ」
「おかえり!マル君ハナちゃん!」
今回はジイサンと姉ちゃんのお出迎えか、牧場に帰って来た時の出迎えには必ずジイサンがいる、こんな寒い中でも元気なジイサンだぜこれからも俺の世話をしてくれよな。
無事引き渡しが終わり流れるように向かい合わせの馬房へと入れられた……うん、そんな気はしてた、そもそも放牧地は変わっても馬房って滅多に変わらないし、こだわりが特別強いわけではなくてもここは自分の部屋的に思う馬はそれなりに居ると思う。
こうして牧場に戻った俺は今年も飽きずに雪の中でヒャッハーしていた。
『何度荒らしてもふわふわだぜー!!!』
『待ってよハナ―』
当然のように隣の放牧地へと連れて行かれた俺とマルは柵越しに遊んでいる、しかし今までと違う点がある、それは。
『ひらひらがいっぱい』
そう!モモがマルとは違うお隣さんとしていることだ!配置は俺を中心に考えてモモが北、マルが東って感じだな。
『モモも遊ぼうぜー』
『イヤよせっかくひらひらがいっぱいいるんだから』
モモはやっぱり変わらず夢見がちガール、初めて出会った時から言ってるひらひらとはいったい何なのか俺は未だにわかっていない、わかっていないが多分知らない方が良い気もしているからこの件に関してはノータッチで今後も行きたい。
『そういえばモモ俺と走ったあと足りないって言ってたけど足りるレース走ったのか?』
『そう!聞いてハナ!走ったの、アレすっごく気持ち良かった!……勝てなかったけど』
『あー、な、まあ気持ちよく走れてよかったじゃん、モモはそういったレース初めてだったんだろ?なら仕方ねぇよ』
『そういうもの?』
『そういうもん、俺らの駆けっこだって最初から上手く行ったわけじゃなかっただろ』
『それは……そうね』
『だからそれに適した走りってのを身につけないとダメなんだよ』
『……ねえ、アタシ駆けっこ勝てたことないけど、アレもしかしてハナの気持ちよく走れ『マルー!一緒に駆けっこしようぜー!!!』ちょっとハナ!!!』
君子危うきに近寄らず、百計逃げるにしかず、俺はとても負けず嫌いとだけ記しておこう。
嘶くモモを置き去りにしてマルと駆け出し雪の中を転がり存分に遊び、それからのんびり休み過ごす、これぞ休養って感じで最高だぜ!
『レースも好きだけどやっぱ牧場もいいよなー』
『僕はハナと居る牧場が好きー』
……マルっていつになったら俺離れするんだろうな?ジイサン、乳離れも大切だけど俺離れもしっかりさせた方がよかったんじゃないか?
1日でも長く走り繫殖入りを拒否したい俺は多分マルより長く走る、オッチャン次第だがなんとしても長く走る、絶対意地でも長く走る。
そうなるとマルは先に引退するわけで、その後どうなるかはわからないがG1勝ちもあるし待遇を見るに明るい未来はもう確約されているだろう……多分、されてるよな?これでされていなかったらさすがに悲しい。
だがそうなった時当然俺はそこに居ないわけで、クソマイペース野郎のご機嫌はよろしいことにはならなさそうだ、種牡馬入りとかするのかコイツ、そもそも出来んの?
長いこと一緒に過ごしてるけど俺マルが馬っ気出してるの見たことないんだよ、だからティトゥスの時あんな過剰反応してしまったというのがある。
『お前引退した後周りに迷惑かけるなよ』
『えー』
俺、心配。




