第37話 俺、こんらん
順調に疲労を抜き筋肉痛もなくなった俺は今日も元気に調教の準備中だ、馬の身では秋から冬にかけてくらいが1番調教に適しているなと思う、とても快適でいつもより多く走れます!って気分になる、上に乗ってる兄ちゃんとか調教助手とかに切り上げられるから出来ないけど、いがぐり坊主?アイツはちょっと多めにイケる、そして怒られてる。
そして!なんと!朗報!俺の次走マイルチャンピオンシップに決定!!!
10月の半ばにある秋華賞から11月の後半にあるマイルCSまでの間隔はけっして長くないが俺なら熟せるとオッチャンやひょろさんは判断してくれたのだろう、ひとつでも多く勝ち鞍を増やし1日でも長くオッチャンに走ってる姿を見ていたいと思わせることを目標としている俺は大歓迎、なにより今年行われる国内G1で1800m以下のレースはこれのみ。
つまり!そう!マルとの直接対決ってことだよなあ!?
一足先に古馬戦線へ挑み勝利したマル、スプリンターズSからの間隔は問題ないとなれば当然さらなる勝利を求めてやって来るだろう、俺たちは同じオッチャン所有だがきっとオッチャンならきちんと適したレースなら2頭出しだってしてくれるとういう信頼がある。
古馬相手に勝って高くなった鼻を見せびらかしながら俺に勝てるのかと暗に問うてきたマル、見事三冠牝馬に成った俺が蹴散らしてやるぜ!
それもあって俺のやる気は右肩上がり、だった。
「谷戸君今日からよろしくね」
「はい!まさか自分がタカネノハナへ乗ることになるなんて」
「丸井さんの考えだからねぇ、普通は避けるんだろうけど」
準備してくれていた兄ちゃんがいつものように乗るのだろうと思っていたところにそう話ながら来たのはひょろさんとシュッとした若い騎手……マルの主戦である。
わっつはっぷん?
なんでマルの主戦がここに?俺に乗ることになるなんて?オッチャンの考え?まさか乗り替わり?
わけのわからないままとりあえず俺は耳を絞り前掻きする、宥めるためか兄ちゃんが首を撫でるがいったん無視、ゴメンな兄ちゃん。
「警戒してるなぁ」
「ハナマルゴーゴーに乗ってる人って認識はあると思うんだけど……だからこそかな?」
「頭良さそうですもんね」
『良さそうじゃなくて良いんだが!?ひょろさんどういうことだよ!』
ブフーンブルルル
「すごく何かを訴えてる……」
「うーん、ハナサン実は次ロメロ君が乗れなくてね、丸井さんがそれならって手を回した結果谷戸君がってことに……」
「説明してる……」
俺の目を見て話し掛けるひょろさん、そしてそれを不思議そうに見るマルの主戦、ひょろさんはわりと俺に話しかけてくれるいい人なんだそんな目で見てやるな。
『ロメロが乗れないってなんだ!意味わかんねぇけどそうだとしてもマルの主戦はおかしいだろ!マルの鞍上はどうするんだよ!』
ブヒュンフヒーン
「応えてる……?」
「ハナマルゴーゴーは次香港スプリントを予定してるんだよね?」
「あ、はい!マルゴーはマイルもイケますけど真骨頂は短距離だろうって話で」
え
『え』
プヒュ
「まあ色々あるしね、丸井さんの考えを聞いたから納得でもあるけど、調子はどう?」
「順調ですよ、きっとマルゴーなら香港でも、なんならオーストラリアだってイケます!!!」
え
『え』
プヒュ
「良い走りを期待してるよ、じゃあ早速今日から乗ってもらうけどハナサンの様子を見てかな」
「はい、任された以上しっかりがんばらせてもらいます」
そっかー、マルは香港スプリントかー、年内の国内G1だと短距離はもうないけど国外に目を向けたらまだあるもんなー……。
いやさ、俺が思ってたマルと直接対決っていうのはそう聞いていたわけじゃなく俺が勝手に思ってただけだし?マルがクソマイペース野郎なせいで短距離が1番いいっていうのは俺だって同意できる、選択肢がひとつなら間違いなくマイルCSに出てきただろうけどよその国により適したレースがある場合当然そっちに行くだろ、俺だって自分が馬主だったらそう考えるもんな。
『なんだよマルいないのかよー』
プヒーン
明らかに気落ちした様子で頭を下げる俺を苦笑いしている兄ちゃんが撫でながら馬房の外へと誘導する。
「ハナちゃんよろしくね」
『ういー……っていうかそういえばロメロ乗れないってなんで?怪我?怪我じゃないよな!?』
マルの衝撃で1回抜けたけどロメロは無事か!?




