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第33話 俺、まだまだ成長期


 オッチャンの話を聞いてから俺は併走してくれるヤツがいなくなって寂しくとも生えてる牧草のやけ食いはやめた、決してアルテミスSと同じ状況になるわけには行かないからな、といっても厩舎でもらえるご飯はもりもり食べてオヤツももらえる分はしっかりもらってはいたが、ひょろさんの想定以上にならないようにとは心掛けたつもりだ。

 そうしてよく食べ、よく眠り、よく走った俺は夏も大部分を過ぎた頃帰厩した。


 「おかえりハナサン、クレノの翁から聞いてたけど大きくなったね」


 ……え!?


 「本当ですね、フレーム自体デカくなってこれで鍛えたらどうなるのか!」


 あ、そっち!?よかったー、いやマジで焦った、てっきりまた俺食い過ぎ案件かと思ったじゃん、どうやら自分ではあまりわからないが俺は夏前より成長したらしい。

 骨格自体がしっかり成長したのに加えてこれから鍛えて絞っていく前提の脂肪を蓄えた体だ、それは大きいって言われるかもしれない、というよりやっぱりそういう報告してるんだなジイサン自分からオヤツをもらいに行くのは控えてたら「最近おねだりしないなハナ」ってオヤツをくれたのはもしかしたらそういった分を加味した上で馬房での食事量とかを決めていたのかもしれない、そうならそうと早くいってくれよ。


 厩舎に戻ってからはこれまたよく食べ、よく眠り、よく鍛えた、スクスクバキバキと出来上がっていく俺の体。

 オークス時点で4XX(ピー)kgだった俺の馬体重はついに5XX(ピー)kgとなり、ムッキムキのモッリモリである。


 「今日もがんばろうなハナサン!」


 『おー、いがぐり坊主俺の背中に乗れることを光栄に思えよ!未来の三冠馬だからな!』


 今日はいがぐり坊主を背に乗せている、兄ちゃんやロメロほどじゃないけどちょくちょくと乗せることのある騎手だ、若いうちから俺みたいな一流馬に乗れるんだしっかり勉強して未来のG1ジョッキーになれよ!ま、レースとは全然違うけど。

 いがぐり坊主と一緒にパッパカコースへ入っていくと同じようにやって来たとある馬と騎手が一直線にこちらへ向かってくる。


 「おっと……ごめんね、タカネノハナちゃん見るといつもこれで」


 「いえハナサンも嫌がってませんし、あの!おめでとうございます!」


 『おめでとう?』

 

 『ハナだー』


 そうマルのヤツとその主戦騎手だ、マルは近付いたと思ったら首をハムハムし始める。

 コイツは相変わらずのクソマイペース野郎だ、というかひと夏を越えて改めて見るとデカいな、俺が自分のデカさにあまり気付けないのはわりと頻繫にこのマルの馬格を見るからというのもあると思う。


 「ありがとう、マルゴーなら古馬ともやり合えると思ってたから俺が足を引っ張るなんてことがなくてよかったよ」


 「最後の直線一気痺れました!」


 「マルゴーの末脚は凄いからね!」


 ウッキウキなこの会話、そうか、マルは目標だったスプリンターズSで勝って来たのか、前から思ってたけどマルの主戦騎手ってマルのこと大好きだよな……まあ?うちのロメロだって?俺のこと大好きですけど?

 一足先に古馬も混じるレースを走り勝利を持ち帰ったマル、本人はわかっていないのかそんなことはどうでもいいのかいつも通り俺をハムハムしながらご機嫌になっている。


 『お前年上連中とやり合って来たんだな』


 『そうだねー』


 『どうだった?』


 『今までより大変だったかなー……でも僕は勝ったよ』


 ハイ、カッチーン!


 カッチーン来ましたよ俺は、コイツわざわざ僕【は】って言いやがった!無意識?被害妄想?いいやそんなことはない、なぜならハムハムするのをやめてこちらを見つめて来るマルの目がいっている『ハナは勝てる?』ってな。

 俺が古馬とやり合うのはまだ先だ、今の目標は秋華賞だからな、けど古馬とやり合うようになればきっとマルと同じ舞台に上がることもあるはず、その時はなんとしてもわからせる必要がある。


 『三冠馬としてお前のことも負かしてやるから覚えとけよ!!!』


 『楽しみだねハナ』


 まずは秋華賞、またひとつ負けられない理由が増えた。


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