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第31話 俺、夏休みを満喫する


 オークスを無事勝利し二冠馬となった俺は本格的な夏へ入る前に故郷である牧場へと帰されていた、もしかしたらオークスで一緒に走ったモモも帰ってワンチャン一緒に放牧されたりしない?と思ったがそんなことはなく、代わりに。


 『いいか!俺がスタートって行ったらだからな!?ズルすんなよ!』


 『わかったー』


 放牧されている場所は前回と違うが同じように通路を挟んだ反対側にマルのヤツがいた、ジイサンめ!!!


 『よーし、スタート!』


 だが俺にとっていい暇つぶし相手なことも否定できない、偶然お隣さんになった馬が柵越しの併走をしてくれるとは限らないからな。

 その点マルなら寝てる時以外は声を掛けたら付き合ってくれる、スタートの掛け声と共に駆け出す俺たち。


 牧柵の範囲内で2頭が走ってカーブ含めて完全に一緒ということはありえないし離れるとよくわからなくなるため隣り合っている柵越し、つまり直線での競走だ。

 直線、そう、直線勝負。


 『うがあああああああああああ!!!』


 『僕の勝ちー』


 いや、全然、休むために来てるんだし、本気じゃねぇし、負けたって悔しくねぇし!?

 ハイ、嘘です。けど言わせてもらいたい、直線のヨーイドンじゃ絶対的にマルの方が有利というか、そもそも俺はそのヨーイドン勝負では優れた能力を持った相手に勝てないと理解したからこそ今の競走スタイルなわけで……負けるだろうと思ってたけど!それとこれとは別で悔しいなチクショウ!


 「タカネノハナー、ハナマルゴーゴー」


 そんな風に駆けて遊ぶ俺たちを呼ぶ声が聞こえた、これはジイサン……ではなく。


 『オッチャン!』


 声の方へと駆けだす俺、その速度は近付くにつれ速まった、それはなぜか、そう。


 「はなちゃ!」


 ハイパーミラクルプリティーぷくぷくまるまるキッズのお出ましだあああ!!!

 さすがオッチャン!俺はいつか牧場に連れて来てくれるって信じてたぜ。


 「ほらヒナ、ヨシヨシしてあげよう」


 『えー、ハイパーミラクルプリティーぷくぷくまるまるキッズはヒナってお名前?ハナとヒナで一文字違いじゃーん』


 いつもオッチャンに撫でてアピールする時と同じ仕種をするとオッチャンは俺を直接撫でるのではなくハイパーミラクルプリティーぷくぷくまるまるキッズ改めヒナちゃんを抱き上げて撫でるように促す、これが神対応、神ファンサ!?

 オッチャンに促されて俺の鼻を撫でるヒナちゃん、撫でるっていうよりぺちぺちしてる、小さくてふくふくとしたお手手でやられても痛みなんて皆無だから俺はされるがまま、むしろもっとしてくださいの受け入れ態勢だ。


 「お、ハナマルゴーゴーも来たか」


 『お前空気読めよ!俺が今ヒナちゃんに構って貰ってんだろ!』


 『えー、やだ』


 「ヒナ、この子がヒナが名前を選んであげたお馬さんだよ」


 「ごーご!」


 な ん で す と ! ?


 え、ちょっと待ってくれ、聞き間違えか?今なんかオッチャンがマルのヤツの名前はヒナちゃんが選んだって言った?名付け親ヒナちゃん?


 『オッチャンどういうことだマルのヤツはヒナちゃんに名付けてもらったのか!俺は!?俺も!?』


 プヒンプヒヒンプフィーン!


 「候補の札用意して選ばれたんでしたっけ?」


 「そうそう、タカネノハナはすぐ決まったんだけどハナマルゴーゴーは悩んでね、ヒナの手を借りたよ、物理的に」


 必死で鳴く俺の横でハッハッハ!と笑いながら話すオッチャンとジイサン、なんてことだ!すぐ決まるなよ俺の名前!むしろ俺の名前こそもっと悩んでくれよ!今じゃそれなりに気に入ってるけど最初聞いた時の衝撃凄かったんだからな!?

 しかしここに来て驚愕の新事実だ、まさかマルのヤツの命名はヒナちゃんだったなんて……どうりで愛嬌があるすばらしい名前だなって思ったんだよ俺は。


 …………。


 く゛ や゛ し゛ い゛ !!!


 『甘いのないのー?』


 「ほらヒナごーごだ」


 抱きかかえたヒナちゃんとマルのヤツをご対面させてるオッチャン。

 オッチャン、マルのヤツはオッチャンやヒナちゃんに興味があるわけじゃなくたんに俺への対抗心と甘いものを食べたいという欲求に従ってる悪い野郎です、それに比べて俺はいつでもオッチャンとヒナちゃんからのなでなでウエルカムな愛されたい系ビューティーホースですよ。


 「ハナお前はわかりやすいなあ」


 嫉妬の視線をじっとりと向けているとジイサンが俺を撫でてくれる。

 

 それだけじゃ俺の気持ちは晴れないんだからな!


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