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おは競走馬 ~走れ俺、いやマジガチで死ぬ気で走れ大事なものを守るため!~  作者: noy


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第25話 俺、後ろの正面


 『お前寝てる時以外四六時中こっち見るのやめろよ!』


 『えー、久しぶりのハナなのにい』


 おはよう、こんにちは、こんばんは、タカネノハナです。

 俺は今一日の大半熱視線を浴びながら暮らしています、相手はそうクソマイペース野郎マルである、いくらコイツが万年寝太郎といってもそれは馬基準のであって馬はそもそも睡眠時間が短い、俺は他の馬に比べたら平均よりは寝てるだろうがそれより寝てるマルでもおそらく健康的な人間の睡眠時間程度なんじゃないか?そんな中感じる視線、嫌がらせかと思うレベルだ。


 さて俺とマルが一緒にいるということはおわかりかもしれない俺たちは故郷の牧場に帰って来ている、別の厩舎で面倒を見られるようになってから顔を合わせるのはたまに一緒になる調教時などに限定されていた分マルの圧が強い、ジイサンも様子を見に来るたび寝てるか俺を見つめるかの二択なマルに笑っていた。

 俺は阪神ジュベナイルフィリーズを勝ち凱旋となったがジイサンの話を聞く限りマルはマルで朝日杯フューチュリティステークスを勝利したらしい、年末のホープフルステークスじゃなかったのは距離適性か?そうなるとマイルになって牡馬と牝馬の混合レースとなったらぶつかり合うことになるのか……覚悟はしていたが面倒な相手だ、まあ負けないけど!


 しっかしオッチャンは幸せものだな同じ牧場からセットで購入した馬が二頭揃って2歳G1を取って来るなんて、牧場としても万々歳だろう、母ちゃんの繫殖実績もさらに積み上がり俺の妹か弟は高額馬になってもおかしくない、というかそうなるくらいに俺が走る!母ちゃんのことは今でもちゃんと好きだし牧場の人たちも優しくて好きだからな、俺ができる恩返しはしっかりしたい。


 「ハナ、外行くぞー」


 ジイサンがやって来て俺に声を掛けて来る、今日の放牧の時間らしい、夏に比べたら冬は格段に過ごしやすいと馬になってから思うようになった。

 念のための引き綱をつけられパッパカパッパカ、これでマルの視線から自然と逃れられるぜ、常時いるわけではない俺やマルはいくつかある臨時の放牧場に割り振られている、常にいる馬ならこだわりが生まれたりして同じ場所を使ったりそうじゃなくてもわかりやすさもあり固定されるが現役競走馬は帰って来るタイミングもバラバラで頭数も固定されないから帰った時次第で連れて行かれる場所が変わる、っぽい。

 前回とジイサンが連れていく放牧地が違うことと周りの様子を見て俺がそう判断している、違うかもしれない。


 「はー、ハナは楽しそうだけどスッ転ぶなよー」


 そう言いながら綱を外し柵を閉めるジイサン、辺りは一面の雪景色、それでも俺が感じる寒さは耐えられない!無理!なんて微塵もないもので馬ってすごいなと思う、その分夏は辛いが。


 『ひゃっふー!』


 誰にも踏み荒らされていない雪面を荒らすというのはなぜこうも楽しいのか、思わずテンションが上がった俺はその場でゴロンゴロン転がる。

 人間だった頃は特別雪を好きということはなかった、あまり雪が降らない地域で育ったということもあるだろう、大人になってからは雪が降ると出勤するのが面倒だから嫌だなと思ったことはあった、でも今は馬である出勤もなければそもそも娯楽というものに縁がなく寒さにも強いそうなったら楽しめる雪という存在は好き以外ない。


 北海道の雪っていいよな、俺の記憶にある雪と言えばなりそこないというかべちょっとして例えばこう走るだろそうするとギュッグジュッとなる、北海道の雪はフカッバフッとなる、この感じが溜まらない思わず駆けだしちゃう。

 夏の波打ち際を走ることで脚力強化なんて類のものとは違う単純に楽しいだけの走りだが今はいいだろう、そもそも俺は休養として牧場に帰されてるはずだからな。


 そんな風にひとり楽しく遊んでいると不意に視線を感じそちらを向く。


 『なんでマルがここに!?お前昨日まで放牧地違ったじゃん!!!!』


 こちらをジッ……と見つめるマルがいた、柵越しにジイサンを横に置いて。

 おかしい、昨日までは確かに違う馬が放牧されていたはずだ、前回とは違って始めから会話してくれないタイプの牡馬だったがそこはまあ好き好きがあるし俺としてはなんら問題がないお隣さんだった。

 それが、なぜか、今日、隣の放牧地へと入っているマル。


 「今日からマルもこっちになってなー、頼むぞハナ」


 俺はマルの世話係じゃないぞジイサン!!!!!!!!!


 そんなこんなで冬が過ぎていく。


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