第14話 俺、ハナはハナ
「この子がクレノの翁の?」
「はい、牡馬の方も一緒だったんで見ましたけど凄かったですよ」
「はー、この子も凄いけどねえ、それにしても美人さんださすがタカネノハナ」
どうもハナ改めタカネノハナです、馬名がタカネノハナです、ハナ+ビューティーホース=高嶺の花、って?
だまらっしゃい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
オヤツやなんや差し入れてくれたり顔見せに来て撫でてくれたりいいご主人だなと思ってたオッチャンのネーミングセンスは絶望的でした。
初めて自分の新しい名前を知った時は思わず固まってしまった、そんな俺にジイサンが語ってくれたのは先輩重賞馬であるハナサナイデ(小倉記念)、コノハナイナイ(シリウスS)、ハナサカジイサン(中山大障害)、の頑張りである……それでいいのかオッチャン!本当にそれでいいのか!
ちなみにマルのヤツはハナマルゴーゴーになりました、まあハナマルゴーゴーよりは、待てよなんかハナマルゴーゴーの方が愛嬌あってかわいいとか言われない?俺はタカネノハナにふさわしいビューティーホースだけど他の馬に自意識過剰とか思われない?
俺だってオッチャンが真面目に考えてくれた名前なんだからあんま文句は言いたくないわけ、けど限度ってあるだろ?将来のG1馬である俺の名前はつまり実況で連呼されること間違いなし、その時タカネノハナ先頭だ!タカネノハナの先頭!後続馬懸命に追い掛けるが届かないこれは決まった!決して手が届かない後ろ姿は正しく高嶺の花!とかされたりするかもしれない……。
あれ、ちょっといいかも。
自分の名前に思いを馳せている俺の前にいるのは俺の引き綱を持ってくれていた兄ちゃんと見知らぬひょろっとしたオッチャン、ってほどではないか?若くはないが年配と言うほどでもない男。
「事前に聞いてた通り飼い食いは良さそうだね、輸送後新しい環境でも問題ないみたいだし」
「やったらやった分だけ食べる、でしたっけ」
俺はそんな2人を前に食事中である、ご飯の時間にもりもり食べるなにか問題が?ないよな、そうだよな。
「体重管理には気を付けないと、か……」
「元々先生デカくするの得意ですからね」
ジイサンだろ!絶対その引継ぎ情報諸々用意したのジイサンだろ!元人間の男だって今は牝馬!牝馬に言っちゃいけないことってあるよなあ!?
言っておくが俺は断じてデブじゃない、デブじゃないしマルに比べたらかわいいもんだ、マル以外と比較したら……?同世代では大きいほうだった、きっと父に似たんだ。
それより今兄ちゃんが先生って呼んだな、つまりこのひょろっとしたのが俺の調教師ってことか、自慢じゃないが俺に調教師や馬主、騎手の知識はほとんどない、有名所を知ってるくらいであるつまり俺はこの調教師が管理する厩舎の力がさっぱりわからない。
さっぱりわからないがオッチャンは俺のことをとてもかわいがってる気がするからきっと悪くない厩舎なんだと思う、マルのヤツと違う厩舎だったのは予想外だったけどそろそろマルも俺離れした方がいいしな新しい環境で友達作り頑張れよ。
『なあ食い終わったんだけどデザートは?俺が来た喜びを表すウェルカムフルーツあってもよくない?』
考えながらむしゃむしゃしてたらいつのまにか空になっていた、食い足りないってほどじゃないが牧場で食べていた量より少ない気がする。
馬栓棒を越えてにゅっと顔を出しじっと調教師のひょろさんを見つめながらふひーんふひーんと鳴く、これをすると姉ちゃんは度々内緒だからねと言いながら果物や角砂糖をくれたのだ。
「おっと、これが例のオヤツおねだりタイムか」
「確かにかわいいですね、けどごめんなー今日は無しだぞー」
ジイサンめ!!!!!!!!!!!
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