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第100話 俺、夢の地


 アレから2週間、ソテは会う度に馬体が戻り毛艶はよくなっていったしクソガキは本当にこの地の水と飯が合うのかはたまた成長期なのか絶好調だぜ!といわんばかりに足取り軽く調教をしている姿を見た。


 そしていよいよ迎える本番、ロンシャン競馬場のパドックである!!!!!!!!!!


 うん、すごい緑、日本じゃありえない緑、緑っつーか木、すごく、生えてます……。


 『その分空気はうまいようなそうでもないような、どう思う兄ちゃん』


 プヒューン


 「ハナサン少しでもいい印象を持たれるようにお澄ましさんしような」


 よし、今日も兄ちゃんにはまったく通じない!

 そして多分空気は別にうまくない、こういうのは大体気分だし人間だったころの感覚としてなんとなく木がいっぱいあると空気がいいとなってるだけだと思われる。


 兄ちゃんがお澄まししろというので俺は意識的に歩様を整えツーンと前を向く。

 日本で出走する時と違い今日はたてがみを編んだりしていない、フランス仕様は自然美らしい、ま!俺ってなにもしなくてハイパービューティーホースだし!!!!!!!!!!


 「アレが今回日本から来た……」


 「フォワ賞での走りは?」


 「ラビットと呼ぶにはあまりに強かったね」


 「アレは周りの思惑もあっただろう?」


 「日本からなら私はあちらの方が好みだね、母父ともに元は我が国の馬だ」


 「ニエル賞ではいい走りをしていたしあるかもしれない」


 「しょせんどちらも前哨戦、凱旋門は遠いだろう」


 「少年は妖精に惑わされるものだよ」


 「どんな馬を何頭送って来ようとフォレッタは負けないさ」


 日本とは異なりパドックの中央を突っ切ってしまえばすぐ会える構造ではないからか今日のパドックでは馬から絡まれるという心配は前後を除けばほぼない、その代わり外側はもちろん内側にも人々が並び好きに語らうのでそれがとても耳につく。


 あとは内側に報道陣か?がいるのもなかなか、凱旋門賞はレースっていうよりこの地の人間にとっては祭りとかそっちの側面が強いのかもしれない……いや、全然知らないけどなフランスの競馬事情とか。


 他に目を惹くのといえば個性的な色を身に纏う女性たちだな、馬主やその関係者なのか日本ではあまり見ないパステルなスーツだったりなんだり、あ、着物!日本人じゃん!


 『やっほー!』


 ヒヒィーン


 「ハナサン!?」


 嘶く俺に注目が集まる、お、着物の人こっち見た……どこかで見たことがあるような?うーん、思い出せない、馬の脳味噌はもう少し容量増やしてもいいと思う。


 気を引けて満足した俺はまたお澄ましで歩き始める、悪いな兄ちゃん日本的なものを見掛けてうっかりテンションが上がっちまった。

 なんだかんだとフランスの地に来てからひと月以上経ってるんじゃないか?飯や水はもちろん周りにいる人間や馬だって異なる環境に置かれている俺たち、日本大好きな俺としてはホームシックまではいかないがそろそろ日本要素を摂取したい気分だったんだ、よーし気分いいしやるぞやるぞ!


 『兄ちゃん今日も頑張るからしっかり見てくれよ』


 プフプフ


 「なんだか機嫌がよく……?まぁご機嫌なのはいいことか、今日も怪我なくがんばろうな」


 『うっす』


 ヒュン


 その後も他の馬に絡まれることなく……遠くで聞きなれた嘶きが聞こえた気はするが問題もなく、やって来たロメロを背に乗せていよいよ本馬場入場。


 やって来ましたロンシャン競馬場のターフ!いや初めてじゃないし?なんなら重賞勝ったレース場なわけだし、でもやっぱり元日本人として凱旋門賞の日のロンシャン競馬場ってなるとちょっと違うなって思っちまうわけよ。


 本日は曇天、馬場は重、正直日本の馬からしたら最悪だな!

 

 それでも負ける気なんてしない、例え同い年でしのぎを削り合う馬がいようと、例え次世代の顔になる可能性を秘めた馬がいようと、例え禍々しいまでの圧を放つ馬がいようと。


 なんてたって俺はパーフェクトハイパービューティーホースタカネノハナだからな!!!!!!!!!!


 待ってろよ凱旋門賞、俺が勝利を持ち帰ってやるぜ!


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