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第98話 俺、面食らう


 俺、タカネノハナ、今フォワ賞のゲートの中にいるの。


 唐突?そうだな!そうだよな!わかる!!!!!!!!!


 けど実際そうだから仕方ない。


 あれから俺はストレスでよく食べ日本とは違った環境で絞り切るには足らなかったのかひょろさんの生温かい視線を受け止めながら太め残しの出走となった……、いや!違う!これはあれだフォワ賞から凱旋門賞って中3週らしいから!?ここで絞り切ると本番までに逆にガレる可能性とか、休養も十分取れるとは限らないからであって!


 『ハナってばまたデブったぁ?』って幻聴が聞こえる、おかしいなロッカはいないのに。


 それにしても俺の記憶にある限り前哨戦から凱旋門賞って中2週だった気がするんだよな、いつから変わったんだ?


 「私の美しい華、このフランスの地でも君の強さを見せてあげよう……ただしやり過ぎないように、だ」


 俺のオシャレにキメてるたてがみを撫でながらロメロがそう言い聞かせてくる、フォワ賞はあくまで前哨戦で本番は凱旋門賞、凱旋門賞に影響がでないようにほどほどの力で勝つのが理想ということだな。


 いやおそらく正直なところでいえば勝ちすらも必須ではないのだろう、一番は本番と酷似した環境で走ること、その感覚を掴むこと、わかってる……わかってるが俺は走る以上負けたくなんかないし?ひょろさんも俺のこの性質をわかった上で出走させているだろうからその点は諦めてほしい!絶対負けたくない馬ン!


 『やり過ぎないでも勝てるようエスコートしろよロメロ!』


 日本と異なる、芝、ゲート、それでも変わらない発走はタイミングが命!


 開いたと思った時には既に体は動き出しフランスでも変わらない最高のスタートをキメる俺!


 問題なく先頭を取る、ニエル賞やヴェルメイユ賞といった他の前哨戦に比べたら出走頭数が少ないフォワ賞。

 さらに日本馬の俺はまずお手並み拝見といった感じで好きに走らされるのか、こっちとしては気持ちよく走れるならそれに越したことはない。


 フランスへと渡ってから今日という日まで走ったフランスの馬場、正直好きではない、ただ嫌いではないのも確かだ。

 それはスタミナに自信を持っている上で人間としての理性や思考力がある俺だからということであって一般的日本馬は馬場にキレるやつがいてもおかしくない、根本的に違うんだよな、この芝にはこれ、このコースにはこれといった走り方の違いというのが日本にだってあるんだ国違いなんてさもありなん。


 それにしてもロンシャンって森林の傍らに競馬場って感じで不思議だ、もとからあったのか植林されたものなのかなど知らないが日本より緑マシマシ!にもかかわらずコースの内側には車停まってるし、ドバイよりも異国感があるかもしれない。


 競り合って来る逃げ馬の存在も、俺をピッタリとマークしてくる馬の存在もない……なんでないんだ?


 いや海外馬はわかるんだよ、けどソテは今までの経験からそこそこついて来そうな気がしたんだが、今日は控えるようだ、あくまで前哨戦は前哨戦って割り切れるタイプだったのか俺がG1しか走らないから知らなかった。


 道中特別プレッシャーを感じることもなく、いや正確に言えばある、あるが日本のG1で走っていた時や、それこそドバイワールドカップの時の方が凄かった分そこまでではないというべきか。


 ロンシャン名物幾頭もの馬を狂わせてきたフォルスストレート、のぼってくだってこの感じどう考えても最終直線だろ!って感覚になるのが心の底からわかる。

 人間だったころはあれがそんな風に感じるもんかね?なんて思ってたが見ると走るじゃ大違い、稍重?本当に稍重?という馬場で来ると思わず行きそうになる、俺が元人間じゃないとにかく突っ走るぜ!な逃げ馬だったらうっかり引っかかるところだった。


 フォルスストレートを過ぎ本当の直線、最後の勝負……。


 なのだが。


 『いいのか?本当にこのままでいいのか??????』


 思わずそう口走ってしまう、ロンシャンにも負けない俺のスタミナをすり潰しながら駆ける。


 後続馬の気配を感じるがこれはもう届かない、そう判断できるほどの差がいつの間にか生まれていたらしい。


 G1複数勝利馬である俺がまさかのラビットだと思われたのか、それとも他の原因か、わからないが悠々自適な一人旅、そしてそのままゴールをしてしまった俺。


 「いい走りだったよ私の華」


 首をぽんぽんと撫でてくれるロメロ。


 よし勝利!


 勝利なのだが……。


 『うーん??????』


 確かに勝った。


 勝ったけどとんでもない違和感。


 前哨戦だからか……?


 「……欧州競馬、という感じかな」


 あ、ロメロもなんか感じてる?


 俺それ知りたいなー。


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