第95話 俺、フラグは回収してまた立てる
おかしいなー、おかしいなー、って思ってたんだよ。
やけに少数頭で管理されるし。
夏は真っ盛りなのにもう帰るの!?って思ったら西じゃなく東だったし。
去年の有馬で見た顔見たり、何より……。
『また一緒に走れそうで嬉しいです、今度こそ完勝してハナさんを惚れさせてみせますから!』
ソテがいるんだもんなー……。
どうもスーパーパーフェクトビューティーホースタカネノハナです、俺は今馬生で3度目の長いながーい空の旅をしています。
そう。
つまり。
タカネノハナフランス遠征するってよ。
……。
ヤッター!!!!!!
ドバイワールドカップ→安田記念というレース選びに、オッチャン……俺オッチャンの考えがわからないよ……となっていたがこれは納得というか嬉しいというか、なにせ俺はドバイであの黒馬に喧嘩を売られている身だからな、たとえそれが馬主の意向によるレース決定といっても凱旋門賞に出走せず逃げたと思われたら業腹だ。
本当によかった!俺は秋天→ジャパンカップ→有馬記念の秋古馬三冠ローテもありえると思ってたからな!
オッチャンの考えはいまいちわからないがロマンを求めがちという傾向はなんとなく見えている気もするわけで、春はさすがに天皇賞春がある関係で難しいと考えても秋ならワンチャン……と望まれる可能性があるのでは?と、よかったよかった。
『勝っても、どんな走りしても、惚れはしねぇけど?』
『その考えを変えさせるような走りをしろ、と!自分燃えます!』
『お前もぶれねぇよな……つーか俺ばっか気にしてる場合じゃないだろフランスだぜ、凱旋門賞、他にも強い馬はいる』
『……ティトゥスの野郎が負けた馬のことですか?』
『なんだ、意識してるじゃねぇか』
『意識というか認識は、まあ、自分は直接会ったことがないんで聞いた話しか知りませんが』
『俺は会ったぜ』
『ハナさんが!?』
『ドバイでな、初対面で喧嘩売られた』
『喧嘩を売られた!?』
『意味わからねぇよな、けど……アイツは相当強いぜ』
『それはティトゥス……ハナさんがそう感じるほど?』
『あ?そうそうティトゥスが俺のこと話してたらしいんだよ、まあ……ティトゥスが負けたって話も納得する程度には』
『一緒に走ったなら会ったじゃなく競ったでしょうし、走ってはないんですよね?』
『おう、俺はダート走ったし』
『ダート!?ハナさんが!?なんで!?!!!!』
『それは俺も発案者に聞きたい』
ついでに決定権があるオッチャンとひょろさんの見解も聞きたい。
『自分にはやっぱり人間の考えがわからないです』
『俺もあの時はそう思った、けど馬同士でも理解できないことはあるしな』
『確かに』
『お前が俺惚れさせたいっていうのもわからないし』
『それはハナさんが自分にとって運命だから!』
『いやそれだけじゃないだろ?』
『え』
『お前そこまでバカじゃねえだろって話』
『……本当にハナさんは魅力的ですね!否定はしません、けどこれも自分の本能的なものなので』
『本能なあ』
どういった意味での本能なんだか。
『それよりハナさんティトゥスが負けた馬についてですが』
『ん?あいつがどうかしたか?』
『自分はあくまで聞いただけで実際のところを目にしたわけじゃないんで絶対そうって話じゃないっていうのを前提に……』
『まどろっこしいな!いいたいことがあるならい『があああああああああああああああ』なんだ!?』
『もうダメだここまで耐えたけどもうダメだ!なんで俺はこんなところにいる!?あのクソジジィまた俺を騙しやがって!!!!!!!!!!』
『落ち着きなさい坊や、騒いだところでここから出られるわけじゃないんだから』
『うるせぇガキ扱いすんな!』
『そういうところが坊やなのよまったくもう……』
俺たちとはまた別、近くに配置されてる2頭がやいのやいのと騒いでいる。
『ビックリしたな、まあこんな環境じゃストレスも溜まるか』
『いい環境とはいえないですからね、自分だってハナさんがいなかったらストレスでどうなってたか』
『それでもソテはああならないだろ』
『それはまあ、自分大人なんで』
『聞こえてんぞそこぉ!!!!!!!!!』
『『あ』』
プフン
ドバイの時に負けず劣らずの道中、はたしてフランス遠征ではどうなるのか。
……。
そういえばソテのやつはなにを話そうとしたんだろうな?