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第91話 俺、夏の訪れ


 あの後解散となった俺たち、つまり結局あいつの名前聞いてないんだよな……いや俺は元人間のハイパービューティーホースだからゼッケンでわかるんだけどな?名乗られてもないのに名前を呼ぶのってどうなんだみたいなところあるだろ、それがもっと親交を深めたあとならまだしも俺とあいつは初めましてだったし。


 それにしてもティトゥスにしてもそうだがマルもどうして俺の話に、やっぱりあれか?海外馬と話すってなるとそっちの国で強いやつって他にどんなやついるの?みたいな話に……そういえば俺ドバイであんまり他の国の馬と話さなかったな、だいたいいつも周りに日本馬いたし。


 ……。


 べ、べつに馬見知りじゃねぇし!?ぜんぜん!コミュニケーション能力高いし!!!!!!!!!!!!!


 まあいい、そんなこんなで安田記念を終えた俺は本格的に暑くなる前にと早々に牧場へと帰された、ただいま故郷。


 『うめー、うめー』


 シャクシャクシャクシャク


 俺が馬じゃなく羊になってしまいそうになるほど歓喜しながら食べているのはスイカ、夏だなー、もちろんオッチャンが送ってくれたし周りのやつらにもおすそ分けしている、俺は心が広いのでそれに決して文句などいわずどうぞ食べてくださいの姿勢……、ジイサンもちろん俺のが1番大きく切ってあるよな?


 オヤツタイムの俺、つまりそう馬房にいるわけだがいつもの夏とは異なる風景がそこにはあった。


 『マルのやつ帰ってこねぇなー?』


 そう、本来ならお向かいさんであるはずのマルが一向に帰ってこないのである、はたしてどういうことなのか。


 怪我とかではないよな?怪我ならむしろ療養として俺より先に帰って来ていないとおかしい、万が一……ということもないはずだ、G1複数勝利馬になにかあったとなったらさすがに騒ぎになるだろうしいくら俺へ入る情報を操作してるらしいひょろさんといえど俺の耳に入れないでおくなんてことはできないはず、だからこそ原因がさっぱりわからん。


 『うめー』


 シャクシャク


 「おー、ハナは今年もよく食うなー、丸井さんも喜んでくれる」


 そういいいながらカメラを構えているジイサン、ジイサンはよくなんか無駄にデカいカメラを持ってレンズを向けてくる、撮影されるのはやぶさかではないけど食事より走ってる姿の方撮ってくれねぇかな?いやでもオッチャンへそれが送られて喜んでくれるならいいか。


 『あ、ジイサン、マルのやつ帰って来ねぇけどなんで?引退になって種牡馬入りの準備とか?つってももう種付けシーズンって終わってるだろ?』


 プヒュフフゥン


 「なんだ食べてていいぞ?あぁ、人間でもうまいスイカだマルにも食わせてやりたいか?」


 いや違ぇけど、つーか人間でもうまいってさてはジイサンつまみ食いしたな!?


 『マルのことはマルのことだけど違う!』


 ブルルルル


 「その気持ちは大事にしてほしいけどマルはもうな……」


 『え、なにその濁しなんかあったのか!?』


 プヒィン


 「今頃はあっちで……」


 『え』


 プヒ


 「元気に駆けてるだろ、オーストラリアの水は合ったみたいだしなぁ、まあハナと全然会えなくて機嫌がナナメの時が多いって話も聞くが」


 『てめぇジジイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!』


 ヒヒィーンンン


 もったいつける言い方しておきながらオーストラリアに行ってるだけかよ!!!!!!!!!!!


 ……。


 オーストラリア!?


 『マジで!?』


 プフゥ


 オーストラリアといえば短距離レースの充実具合が知られている、なにより短距離王国で勝利を上げることが出来たら短距離馬としての知名度と評価は一段階上のものとなるだろう、短距離以外のG1を手にしていないマルにとっては種牡馬入りすることを考えるとあちらの関係者にアピールできることにもなる、クラシックディスタンスに重きを置く日本の馬産一本で種牡馬生活を設計するより繫殖牝馬の数を確保できるかもしれない。


 いい子供を、ひいてはいい後継を生み出すことを命題とされる種牡馬、しかしそれにはある程度数が必要なんだよ、血統の相性の良し悪しなんて結局配合して生まれて育ててからじゃないとわからないし。

 

 種牡馬生活は繫殖牝馬の数と質によって左右されるといっても過言ではない。


 まあ中にはそんなこと知ったこっちゃない唸れ俺の遺伝子!みたいに数撃たずに当たるやつもいるらしいけど。


 『そうか、結果はわからないけどマルならきっと大丈夫だろ』


 「マルはとねっこのころから強い馬だからなー」


 そうそう、俺が連戦連敗してたしな!


 ってうるせぇよ!!!!!!!!!!!!!!


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