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第83話 俺、事情聴取


 『よう、元気……だよな?飯はしっかり食えよ』


 『ボス……はぁ、自分なんかがこんないい飯もらっていいんですかね』


 初っ端からネガティブをかます牡馬、こいつが今回の話の中心にいるであろう馬である。


 え?どうやって話し掛けたかって?


 実は俺の馬房の出入りを制限しているいわゆる馬栓棒は簡単に外せる、いや、普通の馬だとそうでもないのかもしれないが何といっても俺は天才的ビューティーホースだからな!人の知能の前では造作もない!


 どこぞの弟と同じじゃないかって?いやアレは牧場だぜ?規模違うし、全然違うし。


 ひょろさん達が対策しないのかといえば俺はそのまま外へと脱走することがないし手を打ってもそれをまた……ということでいつからか見守るしかないということで話は纏まったらしい、そもそも俺が自ら馬房を出るの自体こうして他の馬と交流する時かオヤツが欲しい時だけだからな、だいたいオヤツを貰えば帰る。

 

 厩舎内なら自由に動ける環境を最大限に生かせるのが実はボスという立場なのかもしれないとは思う。


 『お前な、人間はお前のために用意してるし残したら心配掛けることになる、何より丈夫な体はよく食べて運動することだぜ』


 『ボスがいうと説得力ありますね……でも自分にそんな『いいからまず食え!』ハイ』


 俺の一喝でもそもそとひょろさん厩舎配合めちゃうま飯を食べ始めるネガティブ野郎。


 こいつは去年入ってきた時からこんな感じだった、二言目には『自分なんて』『自分には』『自分ごとき』で自己肯定感というものを母体に置いて来たのかはたまた牧場での育成期間になにかあったのか、よくわからないが俺が周りにいたらうっかりイラッとするようなタイプの性格をしている馬。


 だがただネガティブなだけならまだマシでこいつはこんな感じでいながら強者側なのだ、なにを隠そう昨年のホープフルステークスの勝ち馬はこのネガティブ野郎である、そんなヤツが自分なんて……ってネガティブするんだぜ?周りの同世代からしたらたまったものじゃないし軽くキレられて当然まで思う、少なくとも俺はこいつが同世代だったら後ろ蹴りをかましたくなっていたかもしれない。


 別にどんな時でも自信満々でいろとはいわない、ただあらゆる意味で周りからの評価や目というものを理解していないこいつが世代を率いるのかと考えると……俺らの世代はティトゥスで良かったよな、いや、別に俺だってアイツに負けてねぇけど!?俺は牝馬だしやっぱり牡馬の方がそういった空気感ってのはある、俺が牡馬だったら間違いなく世代の顔は俺だったし。


 『それで?俺がいない間にお前絡まれたのか?』


 『まぁ……でもアレは自分も悪いっていうか……』


 『お前の考えは置いといてどんな風に絡まれたんだよ』


 『はぁ……いつものように調教するためにコースへ出たところだったんですが前のレースで一緒だったヤツがいたらしく』


 『いたらしく、ってお前まさか……』


 『まぁ……覚えてなかったんですよね』


 『お前他の馬に興味なさ過ぎだろ!!!!!!!!』


 『いえ、自分もさすがに自分の後ろとその後ろくらいはなんとなく覚えてたんですけど……』


 『それでもなんとなくかよ……いやまあ俺も掲示板外の馬まで覚えてるかっていわれると、個性的なやつ以外はちょっとか』


 『まぁ……だいぶ個性的なヤツだったんですけど』


 『個性的なのかよ!!!!!!!』


 『自分もおかしいなと思って……多分そのレースの時はそんな感じじゃなかったんですよ、アレだったらさすがの自分も覚えてると思うんで』


 『そんな特徴的なやつだったのか?』


 『はぁ……少なくとも自分はアイツ以外に自分のことを俺様なんて呼称するヤツは知らないですね』


 『うん?』


 『それに見た感じ自分がソイツにレースで勝ったのも不思議でしたし、そうとう速いですよアイツ』


 『うん??????』


 『あぁ、あとはボスとよく似た栗毛でしたね、タテガミと尻尾はもっと派手でしたけど』


 『うん?????????????』


 …………。


 身内の恥の気配を察知!!!!!!!!!!!


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