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第81話 俺、想定内の想定外


 「うーん……会っちゃったか、いやよくここまで回避してきたというべきかな?それにしてもフォレッタがねぇ……」


 「フォレッタが走ったのはシーマですしもう戻っているだろうと思ったんですが……油断してました、すみません」


 「いやいや、本番前に接触がなかっただけよくやってくれたよ、そもそもレース後なら問題ないと思っていたしね……どうやら違ったようだけど」


 荒ぶる俺を宥め馬房に引き上げた兄ちゃんはひょろさんと共に戻ってきた、お手入れも終わり無事もぐもぐタイムに入っている俺を覗きながらひょろさんと兄ちゃんが話す。

 

 ふむ……この会話の感じ、フォレッタがあの黒馬の名前か?

 あんな馬体を持って凄まじい圧を出しているのにずいぶんかわいい響きの名前だ、意味はさっぱりわからん、何語だ、英語じゃないとは思う。


 『ひょろさんなんで俺とアイツ会わないようにしてたんだ?』


 プヒュフーン


 「ハナサン、今日の食事はそれで終わりだよ」


 『ちっげぇよ兄ちゃん!いや貰えるならいつでもおかわりは貰うけど!』


 ブフンブルルルル


 「あとでオヤツはあげようか」


 『マジで!?』


 プヒュ


 「先生はすぐそうやって甘やかす……」


 「うちのかわいいハナサンだよ?よく走ってくれたし、それにしても拗ねてないようでよかった」


 「ダートを走らされると思ってなかったでしょうしねハナサン」


 「気づかれないよう頑張った甲斐があったかな」


 「芝を混ぜた結果フォレッタと出会って対決する気満々!なんてことになっていたらマイルCS並みに拗ねてたでしょうし本当に今日までやり過ごせてよかった……」


 「苦労かけたね」


 「ハナサンのためですから」


 どこか誇らしげにしている兄ちゃん、俺のためといいながらその態度、本当俺ってば愛されビューティーホース。


 それにしても、なるほどな?

 どうやら俺にダートだと気付かせないように立ち回っていたのは確かだったようだ、そして黒馬……フォレッタと会わないようにしていたのも。


 確かに兄ちゃんがいうとおり先にフォレッタと会っていて宣戦布告をされていたらかなり拗ねていたかもしれない、今日ですらアレだったのだ事前に会っていてもきっとフォレッタのやつは共に走り格の違いをわからせるなどとのたまっていたことだろう。


 その状態でダートを走らされる俺、は!?なんで!?俺は芝馬ですけど!!!!!!!っと荒ぶり爆走しその後盛大に文句をいうことは想像にたやすい、本来必要ないであろう気を回させているような気がする、正しい判断なんだがなんかごめんなひょろさん兄ちゃん……。


 「そうだフォレッタのことは……」


 「もちろんSNSでは触れません、けどあちらがどう出るか」


 「その場にいたのは厩務員だけだったんだろう?」


 「そのはずです」


 「こればかりは願うしかないかな……」


 「なにかアクションがあった場合はどうしましょうか?」


 「とりあえず丸井さんと今からご一緒する予定があるからついでに相談させて貰おう」


 「ハナサン……凱旋門賞行くんですかね?」


 「その予定ではなかったけど……」


 『ひょろさん俺は出るぜ凱旋門!逃げたとか思われたら遺憾の意!遺憾の意!!!!!!!!!』


 ブヒュフゥンブルルルヒヒィーン


 「うーん……ハナサンはやる気満々、かな?」


 「きっとオヤツって言ったのになかなか渡してくれないから怒ってるんですよ」


 『兄ちゃんはなんでいつも斜め上に行くかな!?オヤツもほしいけど!』


 ブフーン


 「まぁ次走がどこでも我々がやることは変わらないからね、じゃあハナサンのことを頼むよ、準備しないと」


 「はい!気を付けて」


 オッチャンとの予定があるらしいひょろさんは去っていき兄ちゃんは少し離れたがすぐ戻って来て、その手には俺の愛しのフルーツ!!!!!!!!!!


 「ハハハ、わかったわかったそんな鳴かなくてちゃんとあげるって、お疲れ様ハナサン、初めてのダートレースだったのにハナサンはハナサンだったなー」


 『まあな!ダートでも関係なく俺ってばスーパーパーフェクトビューティーホースだし!』


 兄ちゃんの手からバナナをもらい受けもちゃもちゃと食べる。


 「まだ先はわからないけど次も怪我なくがんばろうな」


 朗らかに笑う兄ちゃんの言葉でいつの日か見た泣き顔が重なる、多分これ生涯引きずるんだ……。


 『ウッス』


 ブフ


 安全第一、ヨシ!


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