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第11話 俺、既知との遭遇


 あのあと日を空けてオッチャンがやって来た、俺とマルをジイサンが呼びよせ嬉しそうに今日からうちの子だぞとオッチャンに宣言されたことで俺とマルは見事にセットで購入されたらしいことを知ったわけだ。

 俺としては購入してくれるならマルと一緒だろうと一緒じゃなかろうと問題ないので喜んだ、マルはジイサンがお前らこれからも一緒だなあと言ったのを聞いて喜んでいた。ところでオッチャンって個人馬主だよな?実はクラブ馬予定でーす!とかいらないからな、クラブ馬が悪いとかじゃなく俺の個人的願望のためにだから、ジイサン信じてるぞ!


 「お前たちの馬名も考えていかないとな、さてどうしたもんか」


 『プリティーベイビーからプリティーホースへ進化する俺にふさわしい名前で頼むぜオッチャン!』


 「ハナはすでに美人さんだからなぁ、負けない名前考えないと」


 衝撃の事実、俺ずっとプリティーベイビーだと思ってたけどビューティーベイビーだったらしい。

 母ちゃんを見てなんとなく俺はおめめクリクリプリティーベイビーだと思ってたんだ、だが現在は馬なので鏡を見るという習慣は当然なくどうやらカワイイ系よりキレイ系であることが発覚した、もしかしたら父馬に似た顔立ちなのかもしれない、ほら娘は父に似るってよく聞くし。


 そんなこんなで晴れてご主人を得た俺とマルだがそれから急になにかが変わったなどということはない、俺はモモとシロと日常的に駆けっこするし、マルは好きに寝こけているし、保母役の牝馬に見守られ四頭で駆けっこしたりもする。

 それからまたしばらくしてマルと一緒の馬房ではなくなり、ただ元々少し離れた場所だったのがマルの抗議という名の暴れっぷりと嘶きに最終的にお向かいさんになったなどの事件もあったが大きな出来事と言えばそんなものだ。


 「ハナー、マルー」


 今日は何度目かの訪問日だったらしい、俺とマルを呼ぶ声に今日も今日とて昼寝をしているマルを起こしてから二頭でなんだなんだとパッパカ近寄って行く、それにしてもオッチャンよく来るな俺がそんなに愛らしいか?なんてたってオッチャン公認ビューティーベイビーだもんな可愛がりたくなっちゃうか。

 ジイサンと並び立つオッチャンがなんだかソワソワとしている気がする、どうした?なにかあったのか?


 「今日はお前らにプレゼントがあってな……」


 プレゼント、だと!?貰えるものはなんでも貰うタイプだからな!ください!オッチャンと同じようにソワソワし始める俺、オッチャンの言葉がわからないためいつもと変わらず眠そうなマル、そんな俺たちを見守るジイサン。


 「ほらこれだ、差し入れる許可貰ってなどうせなら初めてどうですかって言われたもんだから」


 オッチャンが見せてくれたのはなんと俺がジイサンにアピールしても全く食べさせてもらえる気配のなかった、そう、果物!具体的に言えば林檎とバナナであった。

 さすがオッチャン!俺たちの主人なだけあるぜ!さあさあビューティーベイビーはもう早く食べたくてしかたない状態ですよ、ちゃちゃっと、ちゃちゃっとそれをこっちへ、カモン!


 「ハナは興味深々だな、マルは……食べ物だってわかってないか?」


 『オッチャンマルなんていいから俺に、なんなら全部俺に!』


 『えー、ハナなあにそれー』


 口にしやすいようにかカットされた林檎を片手に手を伸ばすオッチャン、俺は当然なんの躊躇もなくそれをパクリと食みオッチャンの手から奪い去り咀嚼を始める。

 うーんこの馬になってからはなかったシャクシャク食感、そして牧草をおいしいと感じるようになった馬としての味覚で感じる林檎、実に美味!みずみずしく溢れる果汁、母ちゃんの乳よりすっきりとした甘さ、お口が緩めなのでつたっちゃうけどそんなのは気にならないくらい実に!


 『馬ーい!』


 ヒヒーンと高らかに鳴いて喜びの舞という名のその場でピョンピョン飛び跳ねる俺を横目にオッチャンはマルへと林檎を差し出す、マルは俺が口にしたことでそれが食べ物だと認識しかつ害がないとわかったからなのか俺と同じように口にした、チッ、俺の取り分が減ったぜ。


 『わあ、なにこれおいしいねえ』


 「おー、二頭とも気に入ったか?じゃあ次はバナナだ」


 今度はバナナを手にしたオッチャン、俺はまたまたパクリ、林檎とは異なり食感は柔らかくまとわりつく感じすらある、だがその分濃い甘さに満たされるようでもちょもちょと咀嚼を続ければここはもう南国!トロピカルな風を感じるぜー!

 テンションがブチ上がり思わず走り出す俺、パカラッパカラッ放牧地を軽く一周して戻って来ると。


 「ありゃ、マルはバナナ好かないか」


 『変な食感……なあにこれ、ヴェー』


 なんともったいないことか、バナナをもらったマルがそのままぼとぼととバナナを地面に落としている、農家さんに謝れ!あと俺に謝れ!おいしいだろバナナ!


 『オッチャンオッチャン、俺はバナナも好きだぜ、だから俺にちょうだいちょうだい』


 「ハナは気に入ったか?これは差し入れし甲斐があるな」


 笑いながらまたバナナをひとかけら俺へと差し出してくれるオッチャン、俺の中でオッチャンの株が急上昇、これからオッチャンのためにも走るからな!


 もっちゃもっちゃもっちゃもっちゃ。


 うーん、デリシャス!

 

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