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第3話 お花をあげます。とっても綺麗なんですよ。

 お花をあげます。とっても綺麗なんですよ。


 そこには夜の暗闇の中に、ぼんやりと浮かび上がる大きな蛇が口の開けているような白い岩の洞窟があった。

 ここが白蛇の棲み家なのだ。

 腰にさしている妖刀の震えから、それが間違いないと小鹿姫にはわかった。

 小鹿姫と藤姫は森の木のうしろに隠れるようにして、深い霧の中から、じっとそんな白い岩の洞窟の入り口を見つめていた。

「小鹿姫。お手を」

 とにっこりと笑って藤姫は言った。

 小鹿姫は差し出された藤姫の小さな白い手を見る。

 それから藤姫の顔を見て、にっこりと笑って、震えている小さな自分の手で藤姫の手を握った。

 すると、小鹿姫の手の震えはゆっくりと止まってくれた。

 本当なら、剣を握るためではなくて、こんなふうに誰かの手を握るために、私の手はあるのかもしれない。

 そんなことをひんやりとしている冷たい藤姫の手を握りながら、小鹿姫は思った。


 自分を守るために剣を学ぶのです。

 誰かを守るために剣を学ぶのです。

 むやみに人を傷つけるために剣を学ぶのではありません。

 剣の腕を競走するために剣を学ぶのではありません。

 命を奪うために剣を学ぶのではないのです。

 私たちは『命を守るために剣を学ぶ』のです。


 それは小鹿姫の剣のお師匠さまである藤姫のお母さんの言葉だった。

 そのお師匠さまの言葉を小鹿姫は今宵、裏切ることになる。

 ……、でも、それでも、白蛇を切らなくてはならない。

 命を奪わなくてはいけない。

 人を食う白蛇を。

 ……、『お母さまの命を救うために』。

「白蛇の心臓は万病に効くという薬になります。小鹿姫のお母さまの病気を治すためには、どうしても白蛇の心臓を手にいれなくてはいけません」

 ずっと口を固く閉じている小鹿姫のかわりに口を動かすようにして、藤姫はじっと(大好きな)小鹿姫の大きな目をまっすぐに見ながらそう言った。

 ……、それから二人の姫は、手をつないだままで、ゆっくりと白蛇の洞窟に向かって歩いていった。

 夜の霧深い森にぽつぽつと雨が降り出したのは、ちょうどそんなときだった。

 降り出した雨はすぐに滝のような土砂降りの雨になった。

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