実技試験 魔法編
「それじゃあ、私はこっちだから。」
「私も一旦ここでお別れだね。ノア君、レオナさん、頑張ってね!」
「うん。トウカとミリアもね。」
さっきの試験会場からしばらく歩いたところで僕とレオナさんはミリアとトウカの2人と別れ、魔法試験、攻撃魔法部門の会場に向かう。
── 2人とも、大丈夫かな……。ミリアは一応光魔法を使えるけどあんまり使わないって言ってたし、トウカはさっきの試験があんまり振るわなかったみたいだし……。
「……2人なら大丈夫。」
会場に向かう僕の顔を見て、レオナさんがそう口にする。
「あれ?顔に出てた?」
「ん。……2人のことは心配しなくていい。昨日ちょっと魔法を見せてもらったけど、あれならどんな試験でも通る。」
「そう?」
「私が保証する。」
「……そっか。」
レオナさんの言葉に僕は小さく笑みを浮かべ、気持ちを切り替える。
「……よし。」
「ん。行こ。」
「うん。」
僕の顔を見て笑みを浮かべたレオナさんにそう答えたところで、、僕たちは会場に辿り着く。
「……見ろ、"探究者"と噂のあいつだ。」
「本当だ。……でも、あの噂本当なの?さっきの刀術、凄かったけど……。」
「どうせ魔法は碌に使えないだろ。」
そんな僕たちの姿に、少し離れたところでそんなやりとりが交わされる。
「……強くなるって、いいことばかりじゃないよね……。」
「同意。……けど、気にするだけ無駄。」
「だね。……そういえば、トウカがこの試験で"普通"を学んできて、って言ってたけど……どういうことなんだろうね?」
レオナさんの言葉に気持ちを切り替えた僕がそう聞くと、彼女も首を傾げる。
「分からない。私達も別に普通。」
「だよね。……まあ、多分試験を見てれば分かるかな。」
そう言って試験の様子を眺めていた僕たちは、想像もしていなかった試験の様子に顔を見合わせる。
「……何か、レベル低くない?」
「……ん。詠唱も長いし、威力も制度も駄目……。無詠唱とはいかなくてもせめて短縮詠唱くらいは使えると思ってた……。」
「……もしかして僕たち、結構規格外?」
「……この感じだと。」
僕が恐る恐るそう聞くと、苦い表情をしながら頷くレオナさん。
── 世間一般の"普通"が、まさかここまで低いレベルだったなんて……。トウカがあんなことを言うわけだ。
「これ、手加減ってした方が良かったりするのかな?」
「……それはやめておくべき。」
目の前で見せつけられたレベルの低さに僕がそう呟くと、レオナさんは少し考えた後、僕の言葉を否定する。
「私もノアも、魔法が人並み以上に使えることは認知されてる。ここで手を抜けば、私の場合は手を抜いたことがすぐにバレるし、ノアの場合は余計な隙を作ることになる。」
「……確かに。」
「── 次!レオナ=トパズ」
「だからこそ、ここは予定通り行く。」
レオナさんはそう言うと、試験官の指示に従い的の前に立つ。そして、
「……展開。」
彼女の呟きと同時に、大量の魔法陣が展開される。
── 話には聞いてたけど、凄いな。ほぼ全部の属性の魔法を同時展開するなんて。一応、結界と時空間、深淵、重力は無いけど……深淵は禁術だし、他三つは攻撃に使いにくいからなくても当然だ。
「……万穿。」
そして魔法陣が全て重なったかと思えば、レオナさんの合図で白く光り輝く矢が射出される。それは一瞬で的を飲み込み、そのまま空をどこまでも進んでいく。
「す、スゲー。」
「流石は"真理の探究者"だな。」
その魔法に、周囲の観衆からもどよめきが起こる。
「うむ。文句なしの満点だ!次!」
試験官からの満点評価を受けたレオナさんは、こちらに戻ってくると僕にVサインを向けてくる。
「……ぶい。」
「流石はレオナさん。凄いね。」
「私の魔法の中でも割と最大火力。」
「だろうね。」
普通は相殺する属性の魔法も全部合体させた魔法だ。とんでもない制御力が必要にはなるけど、その分威力も折り紙付きだろう。
「あれもオリジナル?」
「ん。一ヶ月くらいかかった。」
そう言って得意げな顔になるレオナさん。
── これは、コピーできちゃったことは言わない方がいいよね。
「── 次!ノア=シスト!」
そんなレオナさんに若干の申し訳なさを覚えつつ、僕は的の前に移動する。
「湧水。」
そして僕が展開した魔法に、周囲からは嘲笑混じりのどよめきが起こる。
── まあ、それもそうだよね。湧水って、誰でも使える、攻撃力皆無の魔法だもん。だけど……魔法は、使い方が大事だ。
僕はそんなことを考えつつ、とめどなく溢れてくる水を圧縮し続ける。
── この試験で高得点を取る方法は主に2つ。1つは、さっきのレオナさんみたいにその人以外には使えないような魔法を使うこと。そしてもう1つが、普遍的な魔法で従来以上の効果を出すことだ。
「……そろそろかな。」
十分に水を圧縮できたことを確認し、僕は親指と人差し指でL字を作る。
「……解放。」
そして人差し指を的に向けそう呟くと、それまで圧縮されていた水が的に向け放たれる。その威力は、的はもちろん、その先に展開されていた防御用の結界をも貫通するほどだ。
「……嘘、だろ……?」
誰かの小さな呟きが響くほどに黙り込む観衆。そんな中、僕は内心冷や汗をかいていた。
── 思ったより威力出ちゃった……!結界も壊しちゃったし、何とかしないと……。
「まさか、湧水でここまでの威力が出せるとは……。しかも、魔力消費も軽微だな。うむ!満点だ!」
「あのー……。」
「何だ?」
僕の魔法の評価を大声で告げた試験官に、僕は声をかける。
「さっき壊しちゃった結界、僕が張り直してもいいでしょうか?」
「別に構わないが……強度は大丈夫なのか?」
「はい。……こんな感じです。」
僕はそう言って、結界魔法を発動する。
「……これだけの強度なら問題ないな。頼めるか?」
「勿論です。……壊しちゃった以上、責任は取りますよ。」
「では、次!」
そんな試験官の声を聞き流しつつ、僕は結界を再展開するのだった。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




