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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第二章
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真意

── コハク 視点 ──


「── 白、よかったのか?」


四神の箱庭に帰ってきたところで、朱がそう聞いてくる。


「何のこと?」

「あの子らに、全てを伝えなかったことじゃ。」

「ああ、それね。……それに関しては、伝えない方がいいって判断したからだよ。」


そんな朱の言葉に、僕はそう返す。


「何故じゃ?少なくともトウカに関しては、既に神気が ──」

「朱、思い出して。ノアの撃ったあれ(・・)を。」


朱の言葉を遮って続けた僕の言葉に、彼女ははっとした表情を見せる。


「……多分、これからノアたちは、どんどん力をつけていくことになる。……確かに、神気について教えるのは、メリットも大きいよ?割と簡単に強くなれるしね。だけど……。」

「……あの少年を、消失させうるということか……。」


朱の言葉に、僕は頷く。


あれ(・・)は本来、人の身で撃てちゃいけないものだからね。……前回は十分な"穢れ"のエネルギーと記憶の封印っていう代償、今回はあの狼から受け継いだ神気と大量の存在値を消費して撃ったみたいだけど……。……前回はともかく、今回はかなり危なかったじゃん。」


そんな僕の言葉に、朱は重々しく頷く。


「妾の権能(ちから)で何とか戻せたが……ぎりぎりじゃったからの。」

「もちろん、ノアは神気を掴むのも早いと思うよ?だけど、そんなことしちゃったら、あれ(・・)が目覚めることになる。そして……どうしようもない強敵に、あれ(・・)を撃つことになる。……そうなれば、ノアの身体が耐えられない。」


神気を溜め込むことは、より上位の存在を引き寄せることと同義だ。今のノアがそういった存在に勝てるとは思わないし……。確実に、神気の認識と同時に任意で使用できるようになるあれ(・・)に頼ることになるだろう。そうなったら、確実に『ノア』っていう存在が消える。


「ノアには、可能性がある。……これまで誰も敵わなかったあいつ(・・・)を、引き摺り下ろせる可能性が。だからこそ、ノアには消失のリスクは負ってほしくない。」


── まあ、仲良くなったからっていう理由もあるけどね。


「……あの少年に、任せるというのか?」


そんな僕の言葉を聞いて、朱はそう聞いてくる。その言葉に頷きつつ、僕は少し悔しさを表に出す。


「うん。……悔しいけど、僕たちじゃあいつに勝てないから。」


僕たちみたいな神格は、成長することができない。神格になった時に、存在の強さが確定されてしまうからだ。だから、自分より強い存在に逆らうことはしないし、下剋上なんてことを目論む馬鹿もいない。だけど、例外はある。それが、人間が神格を獲得すること。


「成長ができない僕たちとは違って、ノアならいくらでも成長ができる。……多分あいつ(・・・)も、この成長を恐れてる。……そうじゃなきゃ、あの子たちに執着するはずないからね。」


僕は、あいつ(・・・)のせいで人生を歪められてしまった二人のことを思い出しつつ、そう続ける。


「一応、あいつ(・・・)のことは上には伝えてはいるけど……多分、証拠不十分で動けないだろうし……。」

「じゃろうな……。……あんなでも、一応上位神に軒を連ねておるしの……。」


上の干渉であいつ(・・・)を消すことは簡単だろう。あいつ(・・・)自身には、そこまでの戦闘力はないから。だけど、神の中でもそれなりの位置にいるあいつ(・・・)を消してしまえば、ノアたちに少なくない影響が出る。


「その点、ノアならこの世界に与える影響は少ない。何せ、あいつ(・・・)自身が生み出した存在だからね。」


だけと、この世界に暮らす存在があいつ(・・・)を弑したとなれば、それはあいつ(・・・)の自滅と見做される。世界に与える影響も少ないし、一番丸く収まる形だ。だからこそ、あいつ(・・・)のことはノアに任せることにした。


「……ま、すぐに事が起こるってこともないだろうし、しばらくは静観、やるとしてもアドバイスくらいだね。」


僕はそう言って、話を終わらせにいく。


「じゃな。妾たちが接触すれば、多少なりとも神気が移る。それに、青や玄とも話しておかなければならんこともあるしの。」

「ノアと妹さんと一緒にいた二人のこと?」


僕の言葉に、朱は頷く。


「うむ。……ノアとトウカ(あのふたり)ほどではないが、あのダンジョンに入れたということは可能性はあることになる。未来のためにも、干渉しすぎることはよくないからの。」

「それもそうだね。」


そんな朱の言葉に、僕は同意する。


「……妾は戻るが……あまり考えすぎないようにの。」

「分かってるよ。」


そして暫くの沈黙の後、僕と朱はそう言って別れる。


「……さて、と……。」


朱の気配が無くなったことを確認して、僕は小さく呟く。


「さっきはああ言ったけど……僕は止まらないよ。……ノアには悪いけど、アドバイスくらいで何とかなる程、あいつは甘くないからね。それに……ノアが駄目だったら、多分あいつを安全には消せなくなる。」


── 二人持ってかれてて事を起こすのも大変になってるし、創世期の神の力も弱まってる。そんな中ようやく現れたノアもあいつ(・・・)に持ってかれたら、この世界の存在があいつ(・・・)を弑すのはほぼ不可能になる。


「だからこそ、ここで終わらせないとね。」


そう言って僕は、虚空からとあるものを取り出す。


── それは、ビー玉ほどの大きさの黒色の二つの球体だった。周囲に黒い靄を放出しているそれを、僕はとある二つの存在の元へ送る。


「……強者には、壁を。英雄には、宿敵を。そして……器には、試練を。」


そう呟いた後、僕は笑みを浮かべる。


「時代は誰も待ってはくれない。器足り得るなら、この激流を乗りこなしてみてね。」

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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