一難去って
「……何か、凄いことになっちゃったね……。」
紅い炎が消えた後、ミリアがそう呟く。短いながら、ここまでに伝えられた全てを表現するその言葉に、僕とトウカも頷く。
「……まあ、だからと言ってやることは変わらないね。僕は僕らしく生きていくだけだもん。」
「だね。さっきのを聞いたからと言って、別に何かが変わるってわけでもないもんね。」
短な沈黙の後、僕がそう口にすると、トウカも頷いて続ける。
「……とりあえず、皆を呼んでくるね。」
再び場に沈黙が下りる中、トウカはそう言って、一度部屋を後にする。
「「……あのさ。」」
三度沈黙が場を満たす中、しばらくどこをともなく眺めていた僕たちは、同時に口を開き、そのことに少し目を見開いた後、どちらからともなく笑いを漏らす。
「── やっぱり、こういうのが僕たちらしいよね。」
「だね。こうやって仲良く話せるのが、一番私たちっぽいもん。」
「……ミリア。」
「何?」
「さっき、コハクはああ言ってたけど……。……本音を言っちゃえば、僕はミリアには変わって欲しくないと思ってる。」
そんな僕の言葉に、リアは少し真剣な顔をした後、再び笑みを浮かべる。
「私も、今の関係を壊したくはないよ。それに……ノア君と『雪下の誓い』として活動してれば、自ずとノア君も引き止められそうな気がするしね。」
「だね。僕もこうして活動してるのが一番楽しいもん。」
そんな僕の言葉を最後に、再び場に沈黙が満ちる。だけど、その沈黙は先程までとは違い、どこか満ち足りたような、そんな沈黙だった。
「── ん?」
そんな中、不意にこちらに近づいてくる気配を察知した僕は、窓の外に目をやる。
「どうしたの?」
「いや、何かがこっちに向かってきてて……。敵意は感じられないんだけど……。」
そんなことを話している間にも、気配の主はこちらに近づいて来る。
「……あ、もしかしてあれ?」
「多分……。……何だろ、鳥、かな?」
そして小さくその影が見えたかと思うと、その気配の主は一気に加速し、窓をすり抜けて部屋の中に入ってくる。
「何!?」
「梟……?にしては魔力が多いような……。」
そしてそのまま窓の縁に音もなく降り立った梟をみ、僕たちはそう声を漏らす。
「……ん?手紙?」
その足に小さな紙が結えられているのを目にした僕は、それを外して中に目を通す。
「── あー、そういえばそんなことも話したっけ。」
「何だったの?」
「マーリンさんからの依頼。」
僕は手に持った紙を軽く振りつつ、そう答える。
「マーリンさんって……もしかして『賢者』様!?」
「うん。」
「凄いじゃん!……ちなみにどんな依頼なの?」
「マーリンさんの学校で魔法を教えてほしいっていう依頼だね。」
「何で?ノア君ならどちらかというと近接戦闘の方を教えてほしいって言われそうな気がするんだけど……。」
「僕の使える魔法ってどれも珍しい属性じゃん?最近、そう言った魔法を教えられる人が減ってるっていうことを前に会った時に言ってたから、それでだと思うよ。」
「あー、なるほどね。」
そんな僕の言葉に、ミリアは納得の声をあげる。
「でも、それならちょうどいいかも。私も前からラピズの学校に行った方がいいって言われてたし、一緒に行く?」
「え、ちょっと待って?ミリアも行くの?」
そして、そのまま続けられたミリアの言葉に僕は驚きの声を漏らす。
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ!」
「そうだっけ……?まあいいや。……ノア君は、一応私が貴族籍を持ってることは知ってるよね?」
「うん。苗字があるもんね。」
ミリアの言葉に、僕は頷く。
「で、私みたいに貴族籍を持ってる人は例外なく、18歳になる位から、ラピズの学校に3年間くらい在籍して、いろんなことを学ぶんだよ。」
「へー……。……ん?」
そんなミリアの言葉を聞き、僕はふと、ほぼ確実な、だけど確実に面倒ごとになるとある可能性に行き着き、ぴたりと動きを止める。
「……ミリア。」
「何?」
「さっき、貴族籍を持ってる人は皆その学校に通うって言ったよね……?」
「うん。……あ。」
そしてミリアに問いかけると、彼女も僕と同じ可能性に行き着いたようで、動きを止める。
「── れてたぁぁぁああ!!!」
それとほぼ同時に、廊下の方からトウカの大声と、慌ただしく廊下を走るいくつかの足音が聞こえてくる。
「お兄ちゃん!ちょっといい!?」
そしてそのまま部屋に飛び込んできたトウカは、その手に2枚の封筒を持っていた。
「な、何?」
その勢いに若干驚きつつ僕が聞くと、トウカはそのまま、できれば当たってほしくなかった可能性を口にする。
「突然で悪いけど、4月からお兄ちゃん、ラピズの"総合学校"に通うことになってるから、準備お願い!」
「……あー……うん……。」
「あはは……。大変なことになっちゃったね……。」
「ん?何かあったの?……あ。」
その言葉を聞き、思わず頬を引き攣らせる僕と、苦笑を浮かべるミリア。そんな僕たちを見て不思議そうな声をあげるトウカだったが、僕の手に握られた手紙を見て、小さく声を漏らす。
「……そのー、ノア君?……頑張ってね。」
そしてしばらくの沈黙の後、ミリアがそう言う。
── 学生と教師の両立とか、どうすればいいの……?
だが、そんなミリアの言葉も耳に入らない僕は、思わず頭を抱えるのだった。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




