真理の伝導③
「 昔々あるところに、一人の青年がいました。」
コハクは静かに、昔話を始める。
「精霊と心を通わせる、という類稀な才能を持っていた彼は、人を助け、時には街を守りながら暮らしていました。」
「あれ……?」
「これって……。」
そんなコハクの語りに聞き覚えのあった僕は、思わずトウカの方を見る。すると、ちょうどトウカもこちらに視線を送るところだった。
「昔、母さんが聴かせてくれたやつだよね……?」
「うん。でも、何で……?」
僕たちがそう話している間にも、コハクは話を続けていく。
「そんなある日、彼は精霊王様から頼み事を受けることになりました。各地に暮らす大精霊様と盟約を結び、彼らを助けてほしいというのです。青年は了承し、各地を巡る旅に出るのでした。その後、道中で出会った銀狼族の少女と共に各地を巡り、青年は大精霊様と盟約を結びました。」
「やっぱり、同じだ……。」
それを面白そうに聞いているミリアとは違い、僕とトウカは記憶と同じその内容に少し首を傾げていた。
── 何でこの話を今したんだろ……?この話、確か最後は青年が神様になるっていう話だったと思うけど……。その部分は深掘りされなかったし……。正直、『他の人に優しくするのは大事だよ』的な内容だと思ってるけど……。
「そうして最後の大精霊様と盟約を結んだ帰り道、青年たちは神と出逢います。神は言います。『誇れ。お前は私に選ばれた。お前を神にしてやろう。』と。」
「……あれ?」
「内容が、違「 昔々あるところに、一人の青年がいました。」
コハクは静かに、昔話を始める。
「精霊と心を通わせる、という類稀な才能を持っていた彼は、人を助け、時には街を守りながら暮らしていました。」
「あれ……?」
「これって……。」
そんなコハクの語りに聞き覚えのあった僕は、思わずトウカの方を見る。すると、ちょうどトウカもこちらに視線を送るところだった。
「昔、母さんが聴かせてくれたやつだよね……?」
「うん。でも、何で……?」
僕たちがそう話している間にも、コハクは話を続けていく。
「そんなある日、彼は精霊王様から頼み事を受けることになりました。各地に暮らす大精霊様と盟約を結び、彼らを助けてほしいというのです。青年は了承し、各地を巡る旅に出るのでした。その後、道中で出会った銀狼族の少女と共に各地を巡り、青年は大精霊様と盟約を結びました。」
「やっぱり、同じだ……。」
それを面白そうに聞いているミリアとは違い、僕とトウカは記憶と同じその内容に少し首を傾げていた。
── 何でこの話を今したんだろ……?この話、確か最後は青年が神様になるっていう話だったと思うけど……。その部分は深掘りされなかったし……。正直、『他の人に優しくするのは大事だよ』的な内容だと思ってるけど……。
「そうして最後の大精霊様と盟約を結んだ帰り道、青年たちは神と出逢います。神は言います。『誇れ。お前は私に選ばれた。お前を神にしてやろう。』と。」
「……あれ?」
「内容が、違う……?」
しかし、その後に続くコハクの言葉に、僕たちは思わず声を漏らす。
「しかし、青年はそれを拒みました。『僕は人間として生を受けた。ならば、人間として死ぬのが道理だから。』と。しかし、青年たちの努力も虚しく、神は青年の神格化を強行しました。」
そこでコハクは一旦息をつくと、続きを話していく。
「初めは抵抗していた青年でしたが、神格化が進み現世との繋がりが消えていくにつれ、青年は抵抗を弱めていきました。そして……最終的には、全ての記憶を失い、彼はこの世界を去ってしまうのでした。……自らの守った家族も、絆を深めた精霊たちも……自分の愛した少女のことも、全てを忘れて。」う……?」
しかし、その後に続くコハクの言葉に、僕たちは思わず声を漏らす。
「しかし、青年はそれを拒みました。『僕は人間として生を受けた。ならば、人間として死ぬのが道理だから。』と。しかし、青年たちの努力も虚しく、神は青年の神格化を強行しました。」
そこでコハクは一旦息をつくと、続きを話していく。
「初めは抵抗していた青年でしたが、神格化が進み現世との繋がりが消えていくにつれ、青年は抵抗を弱めていきました。そして……最終的には、全ての記憶を失い、彼はこの世界を去ってしまうのでした。……自らの守った家族も、絆を深めた精霊たちも……自分の愛した少女のことも、全てを忘れて。」
「そんな……!」
「えっ……。」
「嘘……。」
そんなコハクの言葉に、僕たちは声を漏らす。
「こうして、この世界に安定がもたらされたのでした。おしまい。」
そしてコハクの語りが終わると、場に沈黙が満ちる。
「……それって、本当のことなの……?」
短いはずなのに異常なまでに長く感じられた沈黙の後、僕はコハクに問いかける。
「うん。実際に昔にあった出来事だよ。……そして、これがそこの子を残した理由でもあるんだ。」
「私が?」
「うん。……人が神になる時、その人はこの世界との繋がりを失っていくんだ。……過去、神に至った人は3人いたけど、その全員が記憶も、愛しい人も、自分自身も失っているんだ。だからこそ、君には二人を繋ぎ止める存在になってほしいんだ。」
そう言って、コハクは僕のことを見る。
「ノアには見えてるんでしょ?魂の繋がりが。」
「なんかよく分からない紐みたいなやつなら見えてるけど……。」
「それで合ってるよ。……で、それ、君たちの間でどういう感じになってる?」
「えーっと……僕とトウカ、僕とミリアの間はすごい結びついてて、トウカとミリアの間はあんまり、って感じかな?」
「なるほどね。」
そう言うとコハクは少し考えた後、続きを口にする。
「……多分、この中で一番最初に神になるのはノアだと思うんだ。そして、神になる時は、基本的に弱い繋がりから切れていく。」
そこでコハクは、ミリアの方を見る。
「だからこそ、ノアと魂の強い繋がりを持つ君が、ノアをこの世界に繋ぎ止めて欲しいんだ。」
「……私が、ノア君を……。」
「うん。妹さんに関しては、良くも悪くもノアに引っ張られちゃうと思うんだ。だからこそ、君にしか頼めないんだよ。」
そこでコハクは、少し悔しそうな顔をする。
「……もうこれ以上、あいつのせいで手の届かないところに行くなんてことはあっちゃいけないからね。」
「あいつ?」
「……いや、何でもないよ。」
そんなコハクの言葉に出てきた何者かについて僕が言及すると、コハクは誤魔化すような笑みを浮かべると、そう口にする。
「とまあ、こんな訳で君をこの場に残したんだ。」
「……なるほど。正直、よく分からないところもあったけど……分かった。私も、ノア君がいなくなるのは嫌だからね。」
そんなミリアの言葉にコハクは頷くと、アカネさんの方に目配せをして、言う。
「助かるよ。……それじゃあ、僕たちはそろそろ行こうかな。……ノア、それに妹さん。もし、困ったことがあれば、僕たちを頼ってね。……それじゃあ。」
そして、コハクはアカネさんと共に彼女の作り出した炎の中に入り、姿を消すのだった。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




