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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第二章
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真理の伝導②

「三人は、神様のなり方って知ってる?」


コハクの問いかけに、僕たちは互いに顔を見合わせる。


「御伽話で神様になれるっていうのは聞いたことがあるけど……。」

「余り詳しくは聞いたことがないですね……。」

「私も聞いたことはないかな……。」


小さな頃に母さんから聞いた御伽話で、人としていいことを積み重ねて、多くの人を救った人 ── 確かユーリっていう名前だったと思うけど、その人が神様になるっていうものはあったけど……。そこでもあんまり詳しくは語られなかったしなぁ……。


「まあ、そうだろうね。こんな事をおおっぴらにしてたら、邪神が結構生まれちゃうもん。」


僕がそんなことを考えていると、コハクは頷きながら続ける。


「それで、肝心の神になる条件だけど……一定以上の強さは絶対条件として、それに加えて必要なものが三つあるんだ。それがさっき言った"神の因子"と、人々からの"信仰"、それに"穢れなき魂"だね。……正直、君たち二人はかなり神に近い存在なんだ。」


そう言ってコハクは、僕とトウカを見る。言葉こそ発していないものの、アカネさんも同じく僕たちのことを見ていた。


「僕たちが、神に近い……?」

「……正直、実感は無いですね……。」

「だね。ノア君は昔と何も変わらないし、トウカさんも凄くいい人ではあるけど普通に皆と同じ人だと思うんだけど……。」

「あくまで、神に近づいているのは二人の魂だからね。君たちが感じられる部分では殆ど変化はないと思うよ。……まあ、こればっかりは見てもらった方が早いかな。」


そう言うとコハクは何かを小さく呟き、僕たちに手を向ける。すると、


「!」

「何これ!」


僕たちの胸の中心に、光の玉が音も無く出現した。具現化した魔力や精霊たちとはまた違った輝き方をしているそれからは無数の細い線のようなものが出ており、光の玉同士を繋いでいたりどこか遠くへと伸びたりしている。


── 僕のが若干紫がかった白で、トウカのが純白、ミリアのがちょっと黄色っぽい白……。それに、僕とトウカのやつが同じくらいの大きさで、ミリアがちょっと小さめ……。ってなると……。


「……話の流れ的に、これって所謂魂だったりするのかな?」

「流石ノア。正解だよ。」


僕の予想に、コハクは頷く。


「じゃあノアに質問ね。この魂から分かることって何だと思う?」

「うーん……。まず、色は多分魔法の適性でしょ?で、白に近いほどさっき言ってた"穢れ"が少ないってことだろうし……。……そうなると、大きさは存在の強さ、かな?」

「……凄いね。全部合ってるよ。」


そしてコハクからの問いに答えると、まさかそこまで答えられるとは思っていなかった、と言わんばかりの表情でコハクが答える。


「なるほど……。……一つ、いいでしょうか?」


すると、トウカが小さく手を挙げる。


「何かな?」

「先程から出てきている"穢れ"というのは一体どういう物なのかが、よく分からなくて……。」

「私もあんまり……。」


そんなトウカとミリアの言葉に、コハクは少し考えるような素振りを見せた後、ぽんと手を打つ。


「……あ、そっか。最近は"穢れ"っていう言い方はしないのか。……"穢れ" ── 最近は(カルマ)って呼ぶんだっけ?まあ、それは言っちゃえば"今までに犯した罪の量"だね。殺人や強盗みたいな犯罪はもちろん、必要以上にモンスターを討伐したり、なんならちょっとした嘘とかでも加算されてくものになってて、善行で打ち消すのもかなり大変なんだ。」

「なるほど、業のことでしたか。」


そんなコハクの言葉に、トウカは納得した様子だ。


「で、これが三人だけをここに残した理由の一つなんだけど……三人の"穢れ"は、結構珍しいレベルで少ないんだよね。」

「そうなの?」

「うん。ここまで綺麗な魂ってなると、この世に生を受けたばかりの魂とかくらいしか思いつかないからね。当然、神になるにも十分なレベルだよ。……で、"信仰"に関してだけど、これは妹さんが満たしてる条件だね。君、かなりの人を無償で癒してたんでしょ?それで、リトス教の"聖女"に任命されたと。」

「はい。……ですが、それが何か関係が……?」

「大ありだよ。……本来、人が他者からの信仰を集めるのは難しいんだ。確かに人を助けて感謝をされることはあるかもしれないけど、それこそ信奉されるレベルってなると普通だと殆どないだろうしね。だけど、君の場合は違う。多くの人を助けたのに加えて、君には"聖女"の称号とその見た目っていうわかりやすい偶像がある。当然、人々の信仰も集めやすいんだ。」


── なるほど。確かに普通の人への感謝はすぐに消えるけど、有名人、それこそ聖女ともなると長く感謝されてもおかしくはないね。それに、白い生き物は神の使いとして扱われることも多いって聞くし、信仰を集めるのも当然か。


「……他人事みたいな顔してるけど、ノアも割と信仰は集めやすいからね?」


僕がそんなことを考えていると、コハクがジト目でこちらを見ながら言う。


「へ?そう?」

「はぁ……。……いい?まず、ノアも妹さんと同じ白髪赤眼でしょ?」

「そうだね。」

「で、ノアの性格的にもこれから多くの人を助けることになるでしょ?それこそ、自分が死んでも。」

「まあ、そうだろうね。自分が動けば助けられた命を助けられないのは嫌だし。」

「で、ノアはSランク冒険者でしょ?」

「なる気はなかったけどね。」

「これだけ揃ってて、逆に何で他人事だと思えるかな……?……言っておくけど、"信仰"は憧れとかのプラスの感情は全部含んでるからね?」

「……えっちょっと待ってそうなると話が変わってくる。」


そしてしれっとコハクが言った言葉に、僕は思わずそう声をあげる。


「"信仰"ってこう、神様に祈るとかそういう感じのやつだけじゃないの?」

「確かにそれが一番効果が高いけど、憧れや理想っていう感情も一時の感謝に比べれば遥かに"信仰"としての効果は高いんだよ。……ノアの場合は一番の難関になってる"因子"も獲得しちゃったし、本当いつ神になってもおかしくないんだ。」

「……まじかぁ……。」


僕はそんなコハクの言葉に、思わず頭を抱える。


「……えーっと……ノア君とトウカちゃんの二人が残された理由は凄くよく分かったんだけど……私って何で残されたの?正直、さっきの"穢れ"の話も私は聞かなくても良かったと思うし……。」


すると、これまで基本的に聞きに徹していたミリアが、そう疑問の声をあげる。


「確かに、そうですね。今までの話だと、ミリアさんが残る理由はないように思えますし……。」

「まあ、そう思うのも当然だよね。……君を残したのは、今から話すことに関係してくるからだよ。」


トウカがそれに同意する言葉を口にすると、コハクは一度頷いてそう言う。


「それじゃあここで、ちょっと昔話でもしようか。」


そして、コハクは過去を懐かしむような目を天井に向け、不意にそう言うのだった。

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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