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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第二章
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継承と……?

「ふぅ……終わった……。」


フェンリルの首を斬り落とし、その巨体が動かなくなったことを確認した僕は、大きく息を吐き、"風流"と"琥珀"を虚空に収納する。


【確認しました。スキル 共鳴 を解除します。】


それと同時に、結局よくわからないままだった"共鳴"スキルも解除される。


── ……結局このスキルなんだったんだろ……?……まあ、検証は後でもできるだろうし、今は置いておこう。……それにしても……


「この装置、本当になんのための装置だったんだろ?モンスターが集まってきたのも副次効果っぽかったし……。……それに、『森の主』が襲ってきた理由も……。」

〈それに関しては、私の方から説明します。〉

「!?」


僕が独り言を呟いていると、不意に柔らかな声が聞こえ、僕は警戒しつつ辺りを見回す。


「誰!?」


しかしいくら見回せど、声の主と思しき姿は見当たらない。


〈私は、あなたに斃されたフェンリルです。……今こうしてあなたに声を届けることができているのは、あなたに譲渡するものがあるからです。〉


すると声は、そう僕に伝えてくる。


── 『森の主』が?僕に譲渡するものって……?……敵意はなさそうだし、聞くだけ聞いてみようかな?


〈そうしてくださるとありがたいです。〉


僕がそう考えていると、まるでその思考を読んだかのように声は言う。


「それで、譲渡したいものっていうのは?」

〈一つは、私の子供たちです。〉

「子供?」

〈はい。……これだけだと分かり辛いかと思うので、少し説明させてもらいます。〉


その内容を要約すると、こんな感じだった。


『森の主』は、この森に500年は暮らしているらしく、今日も森の奥で静かに暮らしていたらしい。すると突然、強い魔力の波を感じ、異変だと判断してこちらに向かってきたらしい。


「……じゃあ、何で僕たちを……?」


僕たちは、その魔力の波の原因である装置を壊そうとしていた。魔力の波の原因を取り除くのが目的なら、何で僕たちを……。そう考えて僕が聞くと、声はしばらくの沈黙の後、こう答える。


〈……すみません、それは"契約"のせいで、言えないんです。〉

「"契約"?」

〈私の力の代償です。〉

「ふーん……。……それで?何で子供を僕に?」

〈見ての通り、私にはもうあの子たちを守ることはできません。……なので、私を倒すことのできる力を持ったあなたに、あの子達を任せたいんです。〉

「うーん……。」


その言葉を聞き、僕は少し考える。


── 『森の主』の子供ってことは、確実にフェンリルだよね……。……僕としては『森の主』を倒しちゃった責任もあるし、受けたいんだけど……。


「……ちなみに何匹ですか?」

〈全部で2匹です。〉

「……トウカ。」

「何?」

「うちに狼の子供2匹を受け入れる余裕ってあるかな?」

「突然だね!?……うーん、うちの使用人とかに攻撃しないんだったら別に問題ないと思うけど……。でも何で?もしかして、今話してる『何か』と関係があるの?」

「ちょっとね。……ということなので、多分大丈夫です。」


記憶が戻ったとは言え家の状態を詳しく知っているわけじゃない僕は、トウカに問いかける。そしてトウカから返ってきた答えを聞き、声に返事を返す。


〈ありがとうございます。……あの子たちには私が死んだら相続者の元へ向かうよう伝えてあるので、そのうちあなたのところへ来ると思います。〉

「分かりました。」

〈そして、次が本命なのですが……。……あなたには、私の力を受け継いで欲しいんです。〉

「あなたの力、ですか?」


そんな声に、僕は思わずそう聞き返す。力ってあれだよね?さっきの"契約"の結果手に入れたっていう……。……そんな面倒臭そうなもの、受け継ぐ気はないんだけど……。


〈安心してください。"契約"はあくまで私が結んだものなので、あなたに影響を与えることはありません。〉

「あ、そうなんだ。」

〈それに……あなたの場合ですと、これがあった方がいいでしょうしね。〉

「?よく分からないけど……。……それがあなたの望みなら。」

〈では、行きます。〉


僕の答えを聞き、声がそう言った瞬間、僕に大きな力が流れ込んでくる。


【確認しました。逾槭?蝗?子を獲得しました。スキル 威圧 がスキル 逾槫ィ に進化しました。スキル 氷魔法 を獲得しました。スキル 鑑定 がスキル 神眼 に進化しました。】


「凄い……!」

〈……これで、譲渡は完了です。……どうか、"あの方"には気をつけ……!危ない!〉


僕がアナウンスの内容に驚いていると、徐々に弱まっていっていた声が不意に警告を発する。その声にばっと後ろを見れば、例の装置が異常な光を放っていた。その光に背筋が冷たくなった僕は、反射的に体を横にそらす。


── その瞬間、装置から純白の雷が放たれ、僕の右腕を蒸発させる。


「ぐっ……!?」


── 何だ……!?咄嗟に躱したけど、雷耐性があってこれ……!?一体誰が……ッ!?


突然の攻撃に焦りつつ僕が状況を確認しようとすると、不意に右腕から何かが侵入してくるような感覚と激痛が僕を襲う。


「あああぁぁぁぁぁああ!」

「お兄ちゃん!?大丈夫!?」


その激痛に、僕は大声をあげる。トウカが何かを呼びかけてきているが、それすら耳に入らない。


── 痛い痛い痛い!何これ!?どうすれば……!


痛みのせいでうまくまとまらない思考の中そう考えているうちにも、違和感は僕を侵食していく。


【異常の侵入を確認。排除に挑戦します。……失敗しました。再挑戦します ──】


ナビィが異常を排除しようとしてるみたいだけど、何度やっても失敗に終わっている。


【……主様(マスター)の保護を優先。精神を隔離します。】


そして、何度目か分からない挑戦が失敗した後のそんな声を最後に、僕は意識を失うのだった。

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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