目覚め
「……ん……ここは……。」
「あっ!ノア君!」
「ノアさん!」
僕が目を覚ますと、僕の横に座っていたミリアとトウカが同時に声をかけてくる。
「僕の部屋……。」
「!?」
そのまま部屋を見回して僕が呟いた一言に、トウカが目を見開く。
「ノアさん……!」
「ノア君、もしかして……?」
「うん。全部、思い出した。……戻ってくるまで長いこと掛かっちゃって、ごめんね、トウカ。」
そんな僕の言葉に、トウカはゆっくり首を振ると、
「ううん、そんなことないよ……。……本当に……よかった……!」
と言い、目に涙を浮かべながらも、
「おかえり……お兄ちゃん……!」
と、笑顔でそう言った。
「うん……。……ただいま。」
そんな彼女の言葉に、僕はそう返事を返す。すると、堪えきれなくなったのか、トウカは僕の胸に飛びついてきて、そのまま声をあげて泣き始める。
── やっぱり、そうだよね……。10歳の時から、1人にしちゃった訳だし……。……本当に、申し訳ないことをしちゃったなぁ……。
トウカの頭を優しく撫でつつそんなことを考えていると、ミリアが遠慮がちに声をかけてくる。
「……え〜っと、つまりノア君は帝国の、しかもかなり上の方の貴族ってことかな……?」
「まあ、血筋的にはそうなるね。……だけど、この家と繋がりがあるのはあくまで行方不明になっていたノア=シストだよ。」
「ん?どう言うこと?」
「要するに、"Sランク冒険者のノア"と"シスト公爵家のノア=シスト"は別人だってこと。」
「???」
僕の言うことが分からない、と言わんばかりに首を捻っているミリアに、少し落ち着いた様子のトウカが追加で説明をする。
「……この国では、7歳の時に戸籍登録が行われます。そして、お兄ちゃんはあくまで"行方不明"、つまり死亡はしていなかったことになります。そして、貴族としての身分と冒険者としての身分は全くの別物です。」
「……つまり?」
「ミリアのよく知ってるノア君は、今の僕とは名前が同じだけの別人、ってことにできるんだよ。」
「冒険者はかなり自由な存在なので、多くの貴族が身分を隠して登録してるんです。」
「まあ簡単に言っちゃえば、僕は冒険者として、今までと変わらず活動できるってことだよ。」
「……と言うことは、『雪下の誓い』の解散は……?」
「そんなことしないよ。今の僕も、冒険者の僕も、どっちも僕なんだから。」
「……何かよく分からないけど、今までとは変わらず活動できるんだよね?」
「うん。」
僕がそう答えると、
「よかった〜!もしこれでさよならすることになったりしたら、どうしようかと……。」
と、ミリアは胸を撫で下ろしたような言葉を口にする。
「ところでノア……お兄ちゃん、ステータスってどうなってるのか見せてもらってもいい?」
「あ、確かに気になる。」
「分かったよ。……これで見えるかな?」
僕は鑑定スキルを応用して、自分のステータスを表示する。
────── ノア゠シスト ──────
種族 人族
天賊 刀聖 LV 54
HP 61,587/61,587
MP 186,957/186,957
ATK 97,245
DEF 56,870
DEX 124,589
POW 86,358
スキル 隠蔽、讎ょソオ遐工螢、雷魔法、鑑定、共鳴、時空間魔法、状態異常耐性(高)、精霊視、精霊同調、精霊魔法、繰糸術、超回復、荳?黄蛻?妙、魔導、魔導書、立体機動
特殊スキル 桜花流刀術
契約精霊 アルノー=リストリア
称号 蜈ャ辷オ螳力縺ョ逾樒ォ・
魔法の神髄に至りし者
精霊王の盟約者
────────────────────
「「「……。」」」
そこに表示された結果に、僕たちは揃って黙り込む。
「あ、あれ〜……?私の目、おかしくなっちゃったかな……?」
「ミリアさん、そんなことはないと思いますよ……?恐らく私も、同じものを見てると思うので……。」
「うーん、記憶の封印は全部解けたのに、まだ文字化けがある……。」
「なんか1人だけ違うこと考えてない?……ノア君、もっと他に見るところあるんじゃないかな……?例えば、天賦のレベルが限界突破してるところとか、ステータスが6桁になってるところとかさ……?」
「え?それは結構前からだよ?」
「えぇ……。」
「そ、それはそれとして……。記憶は全部戻ったんだよね?」
「うん。」
「じゃあ、なんで文字化けが……。」
「うーん……。……使用条件が整ってないとかかな?」
「そうだね……。それくらいしか思いつかないかな〜……。」
「まあ、この話は後でいいや。とりあえず、父様に報告に行こっか。」
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




