その後
第1章終幕です!
「── っていう感じのことが向こうであったんだよ。」
「噂には聞いてたけど、本当だったんだね……。それで、その後はどうだったの?」
今僕がいるのは、チェブリス王国王都の冒険者ギルドだ。そこで僕はミリアに、認定式の時に起きたことについて話していた。
「あの後は……えーっと、僕の場合だと街の修復のために必要な資材運びを手伝ったくらいかな?例の収納で一気に持ってった感じだね。」
それですぐにやることがなくなっちゃったから、こうして早めに戻って来れたわけだけど。
「へー。それで、なんで氾濫が起きたのかはわかったの?」
「一応魔導具を確認した限りだと、怪しい人が1人いたんだけど……。……その人、氾濫が起きる前にダンジョンの中で死んだっぽいんだよね。」
「モンスターにやられたの?」
「いや、現場に残ってた遺留品とかを見た感じ、自殺っぽいって言ってた。」
「その人は、前から何か不穏な噂とかはあったの?」
「いや……むしろ、周りの模範になるような人だったらしいよ。」
「へー……。……そうなると、誰かに操られてたのかな?」
「その可能性が一番高そうなんだよね。……まあ、このことは僕の関わることじゃないと思うし、あんまり詳しくは知らないんだけど。」
「確かにそうだよねー。まあ、何にせよノア君が無事でよかったよ。」
すると、不意にミリアがこんなことを言ってくる。
「それにしても、大活躍だったらしいじゃん、『白き新星』さん?」
「……その呼び方はやめてよ……。」
そう、何故かは分からないが、あの氾濫のあと、いつのまにか僕にそんな二つ名がついていたんだ。なんなら、トウカさんと合わせて『双星』とか呼ばれるようになっちゃったし……。……そんな目立つようなことした覚えはないんだけどなぁ……。正直、恥ずかしいからやめてほしい。
「まあそのことは置いておいて……。今日、なんでここに呼んだの?」
「ああ、それは……。」
僕がその理由を答えようとすると、僕のもとに一枚の手紙が届けられる。その手紙には、虎と藤を模った意匠の封蝋がされている。
「……うん、やっぱりか。理由は、これだよ。」
僕は手紙を開け、中にざっと目を通す。そしてトウカさんとの約束が確認できた僕は、そのことをミリアに伝える。
「認定式で知り合ったトウカさんっていう人に、僕の記憶を取り戻す手伝いをしてもらえることになってね。そのための日程が、今届いたんだ。」
「へー。でも、それと私になんの関係が?」
「こんなこと、公に広めるわけにはいかないじゃん?だから、最近見つかったダンジョンの攻略の助力の要請っていう形になったんだよ。『雪下の誓い』に対しての、ね。」
── そのダンジョン、どうやら攻略できる人に何かしらの条件があるらしくて、その点僕たちはちょうどよかったらしいしね。こっちが協力してもらう以上、このくらいのことは受けないと。
「なるほどね。それで、そのダンジョンってどこにあるの?それに、いつから?」
その問いに、僕は少し間を置いてから答える。
「そのダンジョンがあるのは、隣のクリスタ帝国の、シスト公爵領だよ。で、時期は大体1週間後からだね。」
その言葉に、彼女は大きく目を見開く。
「えっ、あの!?しかも1週間!?」
「まあ、荷物に関しては僕が持っていけばいいし、宿に関しては向こうが準備してくれるらしいから、僕たちは向こうに行くだけだよ。」
「だとしてもさぁ!いきなり他国に行くなんて思ってもなかったんだけど!」
「時期に関してはこっちも知らなかったからしょうがないじゃん。それに、どちらかというと観光に近い気持ちで行けばいいと思うよ。」
「ノア君はそうかもしれないけどさぁ……。」
何やら文句ありげな顔をするミリアだが、しょうがない。こっちだって何も知らされてなかったんだもん。……正直、1ヶ月後とかだと思ってたけど。
「まあ、最近あんなことがあったんだから、特に問題が起こるようなことはないでしょ。」
「……まぁ、なんとかするか……。……いいや!どうせいくなら目一杯楽しもう!」
ミリアはそう言い、準備を始めるのだった。
── 同時刻、深淵の迷宮 内部 ──
「── 駄目だ。こいつも弱い。」
迷宮内に、そんな声が響く。周囲には無造作に斬り殺されたモンスターの死体が堆く積み上げられており、その異常性が窺える。
「こんなんじゃ、あいつを乗っ取れない。もっと……もっと強く……。」
そういう影は、どこか儚くも感じさせるような雰囲気だ。黒い髪に、爛々と光る紅い瞳。その姿は、ノアと瓜二つだ。
「待ってろ……ノア……!」
その影はどこか遠くを見つめつつ、そう言った。
ついに第一章完結です!最後の影は、一体何者なのでしょうか……。
第二章は、主にノア君の過去について深掘りしていくつもりです。封印された記憶には、何が刻まれているのか……?そして、全てが明らかになった時の、ノア君の選択はいかに……?
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