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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第一章
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訓練

── どれくらいの時間が経っただろうか。

僕は刀を振るいつつ、そんなことを考えていた。


紋章の正体がわかった後、僕はさっそく裏庭に足を運んでいた。すると彼女が


「こちらを使ってください。」


と一本の木刀を差し出してくる。それを受け取った僕は、本に書いてあったことを意識しながら木刀を振り始めた。


「初めはゆっくりでもいいので、まっすぐ振り下ろすことを意識してください。」


と彼女は言っていたが、これがなかなか難しい。自分ではまっすぐのつもりでも、どうしても切っ先がぶれてしまう。


「体に一本の芯が入っているように背筋はぴんと伸ばして、刀を振るときは全身を使って振ってください。」


と彼女は言うが、結局この日は感覚を掴めずに終わった。


三日後。だんだんと刀がまっすぐ振り下ろせるようになってきた。感覚もつかめてきたし、そろそろいいのでは?と思い、彼女に聞いてみる。すると


「まだまだです。刀を今の大体5倍くらいの速度で、1mmのずれもなく振り下ろせるようになるまでは、この訓練を続けてもらいます。」


と言う。えぇ……。


それからしばらく経ったある日、


「そろそろよさそうですね。次の段階に進みましょう。」


と彼女が言う。やっと新しいことを知れる、僕がそう思っていると、彼女はどこからか二振りの木刀を持ってくる。


「私が教えられるのは二刀流の剣術となっています。なので、次はこれで二刀流に慣れてもらいます。まあ、貴方なら二刀流で戦えれば自然と一刀流も使えるようになると思うので、とりあえずやってみましょう!」


……実践に移れるのはまだまだ先になりそうだ。


その後木刀が2本になっても安定して振れるようになると、ようやく実践的な、真剣を用いた訓練が始まった。


……まあ、動かない藁人形をひたすら斬るだけなんだけどね。


それでもようやく本格的な訓練が始まり楽しくなった僕は、来る日も来る日も藁人形を斬り続けた。

それと並行して型──要するに刀を振るう際の技術も学び始めた。けど……。


「そうじゃありません!もっと速く、まっすぐ振り切ってください!身体の軸を意識して、全身で振るうんです!」


彼女、めちゃくちゃ厳しかった。普通、刀を握ってからまだ1ヶ月も経ってない人に、剣筋の数mmのずれや身体の数度のずれなんて指摘しないと思うの。そんなこと言われても、簡単にはいかないって……。

そんなことを考えつつ、僕は今日も地獄のしごきになんとかついていった。


おっと、訓練中に考え事は良くないな。僕は過去の回想を止め、再び無心で刀を振るい始めた。

風を切る音はほとんどしない。風を切る音は刃の僅かな傾きのせいで鳴ってしまう。だからこんな風にほとんど音がしないのが理想だ。


……うん。今日はこのくらいかな。虚空に刀をしまい、僕はいつも休憩に使うスペースに向かった。ここは縁側のようになっていて、大きな桜を眺めることが出来る。


──そういえば、結局彼女、名前を教えてくれなかったな。ぼうっと桜を眺めながら、僕はそんなことを考えていた。まあここには不思議と人もモンスターも来ないから、まあ名前が分からなくても困ることはないんだけど。


彼女に頼んで準備してもらっておいた桜餅を虚空から取り出し、頬張る。……うん、美味い。やっぱり彼女の作る桜餅が一番おいしいな。

そうして僕がまったりしていると、彼女が僕の横にやってくる。


「どうしたの?」

と僕が聞くと、彼女は

「実は……折り入ってあなたに頼みたいことがあるのです。」

と言う。

「頼まれごとはもちろん受けさせてもらうけど、僕は何をすれば良いのかな?」

「まずは、ついてきてください。」

そう言って彼女はあの大きな桜の方へ向かって歩いて行く。


彼女について歩いて行くと、やがて桜の木の下へたどり着く。そこには小さな祠のような物があった。

彼女が祠の戸を開ける。そこにはいくつも鞘に札の貼られた刀が、縄で縛られていた。


「この刀が、私の本体です。しかしこの通り私は封じられ、この場から離れることが出来ません。……〈刀聖〉ノア様、どうか私を、この地から解き放ってはいただけないでしょうか。」

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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