質問タイム
「えーっと……聞き間違いかな?それを手に入れた場所が、あのチェブリス王国王都ダンジョンの最下層近くって聞こえた気がしたんだけど……?」
「……合って、ます。……昔の仲間に、落とされたので。」
少し震える声でそう聞いてきたアーサーさんに、僕はこう返す。
「……アルバート、本当?」
「私たちも確証は持っていないですが、おそらくは。少なくともあの大穴の底まで落ちたことは事実のようですしね。」
「……ッスゥー……。……よし、この話は一旦流そう。ところで刀はどうしてるのかな?」
「……あ、それは……。」
僕は虚空から風流を取り出す。
「こんな感じで仕舞ってあります。」
あれ?また場の空気が固まった?
「い、今のは……まさか、時空間魔法かの……?」
するとマーリンさんがそんなことを聞いてくる。
「あ、そうです。」
するとマーリンさんは、その見た目からは想像もつかない速度でこちらに近づいてきて、こう聞いてくる。
「それは本当かの!?一体、どうやって習得したんじゃ?」
「……そう、ですね……。やってみたらできたとしか……。」
だって、ふと「これをいつでも収納できたら便利だよなぁ」って思ったら突然目の前に虚空が出現したんだもん。
僕がそのことを伝えると、
「確かノア、とか言ったかの……。もし時間があれば、一度儂の学校へ来てくれんかの?」
と聞いてくる。
「それは、生徒としてですか?」
「いや、臨時の教師としてじゃ。……見たところ、お主雷魔法も使えるじゃろ?それも、かなりの練度で。」
「まあ、一応は。でも、どうしてそんなことを?」
「実はのう……ここ最近、基本4属性以外の魔法を使える教師が減ってきてるんじゃよ。おかげで一部の生徒が学びを断念することを余儀なくされておっての……。儂としては若い芽を摘み取ることはしたくないんじゃが、いかんせん教えようがなくての……。」
「そう言う、ことなら……。ただ、期間によりますが。」
「本当かの!ならば……そうじゃの、3ヶ月後からというのはどうじゃ?無論、予定が合う時だけでよい。」
「……わかりました。予定が決まったら連絡させてもらいます。」
ラピズなら一度行ったことがあるから問題ない。それに、あの学校の教師のシステムは聞いたことがあるけど、かなり自由度が高いから、僕の活動にこれといった影響はないだろう。
「おっと、そろそろ時間だね。2人は僕が案内するから、他の皆は先に会場に行っててくれるかな。」
するとアーサーさんが、時計を見ながらそんなことを言う。その言葉に従い、この場には僕とトウカさん、そしてアーサーさんが残される。
「さてと……。1つ、確認させてもらいたいことがあるんだけどいいかな?」
すると、アーサーさんがそんなことを聞いてくる。
「?なんでしょうか?」
「君たちの業を確認させて欲しいんだ。」
「業……ですか?」
トウカさんはそういって首を傾げる。僕も聞いたことがない単語だ。
(ナビィ、分かる?)
【はい。業とは、簡単に言ってしまえば対象者の持つ罪を数値化したものです。恐らく彼の持つ剣が、業に関連した効果を持つものであると推測できます。】
なるほど、僕たちが悪人じゃないか調べたいって訳ね。
「確認といっても、普通に冒険者として生活していれば特に問題はないはずだよ。」
そう言いつつ彼は剣を抜く。
「この剣は、相手の業に応じて与えるダメージが変わる、特殊な剣なんだ。2人には、この剣の刃にそっと触って欲しいんだ。その結果を見て、判断する形になるかな。」
「よくわかりませんが……わかりました。」
トウカさんがそう言う横で、僕も頷く。そして2人同時に剣の刃に指を乗せる。
── とりあえず乗せたけど……。……何も起こらないな。
「言われた通りやりましたが……。……何かわかりましたか?」
トウカさんはそうアーサーさんに聞く。アーサーさんは、信じられないものを見たと言わんばかりの顔でこちらを見ていた。
「……失礼。驚いてちょっと返事が遅くなっちゃったね。2人とも、特に問題はなさそうだね。……改めて、歓迎するよ、トウカさん、ノア君。」
彼女の声を聞いたアーサーさんは、ハッとしたような顔をしたあとにそう言った。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




