「雪下の誓い」初依頼 下
「うわああぁぁぁああ!?」
そんなミリアの声も置き去りにするほどの速度で、僕たちはダンジョンの大穴を落下していた。
「ちょっとノア君!?これ本当に大丈夫なの!?てか何で普通に立った姿勢でいられるの!?」
「大丈夫大丈夫。慣れればこういうこともできるようになるって。」
「こんなのには慣れたくたいよ!」
「てか、こうやって話せてる時点である程度は問題ないじゃんか。」
いざ落ちてみれば会話ができるくらいには余裕があったミリアにそんなことを言いつつ、僕は階層を数えていた。
「……よし、そろそろだね。ミリア、少し動くよ。」
「え?ちょっと待ってそれは聞いてなあぁぁぁああ!?」
一応ミリアに声をかけてから、僕は第41階層の床に糸を引っ掛けて、振り子のように大きく移動して、第42階層の床に足をつく。
「よし、着いたよ。」
僕がそう言うと、
「確かに速いけど……。……こういうのはしばらく無しがいいかな……。」
と彼女は答える。
「え?何で?」
僕がそう聞くと、ミリアは僕の肩を掴み、言う。
「いい、ノア君?普通の探索者は、あんなことをするんじゃなくて、普通に1層1層降りていくの。あんなことやって何の問題もないのは、それこそSランクの前衛職の人とかだけだからね?」
「僕、もうすぐSランク認定されるんだけど……。」
「そうじゃなくて……!……とりあえず、誰かと一緒にこのダンジョンに潜るときは、このやり方は禁止で!」
「えぇ……。まあいいけど……。」
何でだろう?速く攻略できるに越したことはないと思うんだけど……。
「はい、この話はここでおしまい!それより、探索に行こ!」
ミリアはそう言って、ダンジョンの奥へと向かっていく。なんか話を逸らされた気がするけど……。まあいいか。
僕はそんなことを考えつつ、彼女の後について歩いていくのだった。
「── ところでノア君は雪晶花がどこにあるかって知ってるの?」
「いや、そういうのは各探索者ごとに秘匿されてると思うし、僕自身この辺を詳しく探索したことはないから正直知らないよ。だけど、今探してるから多分そのうち見つかると思うよ。」
「え?探してるって……どうやって?」
「あれ、気づいてなかったんだ。こう、魔力を薄ーく広げていって、何かに当たったり吸収されたりした反応でそこにあるものを何となく予測する感じのやり方だね。」
「んー……こんな感じ……かな?」
ミリアは手元にある程度の魔力を集め、広げていく。
「うーん、一応できてはいるんだけど……もっと薄くできる?」
「これ以上!?そんなの無理だよ!」
「えー?慣れれば普通に索敵のスキル使うよりもだいぶ消費MPを減らせるんだけどなぁ……。」
事実、普通に索敵のスキルで大体半径1kmくらいの範囲を調べるのに必要なMPが40くらいなんだけど、この方法だと大体4くらいのMP消費で探索できるようになるんだよね。
── ん?この反応は……?
僕はちょっと不思議な魔力の反応を感知する。
「ミリア、ちょっといいかな?」
「ん?どうしたのノア君?」
「こっちの方にちょっと不思議な反応があってね。行ってみてもいい?」
「んー……いいんじゃないかな。……あの落下で、かなり速く着いたことは確かだし。」
「ありがと。」
ミリアの許可も得た僕は、反応のあった地点へ向かう。
「ここ?」
「うん。」
「でもここ、壁しかないよ?」
僕たちがたどり着いたのは、とある壁の前だった。一見何の変哲もない、ただの壁。でも……。
僕は彼に向かい刀を振るう。
「やっぱり。」
「えっ!?隠し通路!?」
崩れた壁の奥から出てきたのは、隠し通路だった。
「行こう。」
「うん……!」
大抵こういった隠し通路の奥にはいいものがある。僕たちは期待に胸を弾ませつつ、通路の奥へと向かうのだった。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




